『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』を読んで

2014年01月20日

 丹羽宇一郎さんのご著書『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』を拝読いたしました。

 丹羽さんは1939年、愛知県生まれ、62年名古屋大学法学部を卒業され、伊藤忠商事に入社されました。98年から社長を、04年からは会長を務められました。10年6月には菅内閣から任命され民間出身としては初めて中華人民共和国駐箚特命全権大使を務め、12年12月に退官されました。

 丹羽さんというと、中国大使をされていたときのゴタゴタだけが印象に残っています。

 この本は大企業の中間管理職向けにリーダー論を説いたもので、その先には企業内での出世や成功というものが見え隠れします。自分の豪快さを自慢しているように読める部分もあって、丹羽さんが大企業に属していた人なんだ、ということが分かります。

 私は丹羽さんが大使に任命されたとき、かなり期待をしていました。商売をやっていた人なら国交においても良好な関係をつくってくれるのではないか、という思いでした。

 しかし、その後の仕事ぶりや、この本を読んでみるにつれ、商売上の利害関係のある人が厳しい緊張関係にある国において国益を担う大切な役目を受けたことは正しかったのかどうか、疑問を感じています。

 本書には中国のことも少し触れられていますが、本題はビジネスにおけるリーダー論です。気になった部分をご紹介します。

 丹羽さんは日本経済が人を大切にしていないことを問題視しています。

 しかし、繰り返しになりますが、人は会社にとって最も重要な資産です。彼らの雇用、生活をいかに安定させるか。企業はまずこれを考えなくてはならないのです。もちろん部課長クラスだって、そういう認識でいなければなりません。今の日本の企業は、この視点が決定的に欠けてしまっている。どこかおかしいと私は思っています。
 また、雇用の安定といっても、毎年給料をを上げることを意味しているのではありません。給料の多寡より、職の安定のほうがはるかに重要です。

   『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 p19より引用  


 この本の題名にもなっている、リーダーの心構えについては次のように述べています。

 リーダーたるもの、私心を捨てて努力あるのみです。皆が笑っているときには「ちょっと待てよ」と思わなくてはなりません。皆が泣いているときには、平常心で穏やかな顔でなくてはなりません。仕事がうまくいかなくて周りが気落ちしているときこそ、リーダーは明るく振る舞わなくてはならないのです。「俺は、君たちがいるから大丈夫だと思っている」と励ましの言葉を掛けてやる。これは本当を言うと、苦しいことです。自分だってしょんぼりしているのです。誰よりも泣きたい気持ちでいるのです。そこをぐっと抑えて、率先垂範で逆境に耐え安心できる顔を見せなくてはなりません。リーダーの逆境に対する強さこそ、闇を照らす一筋の光でしょう。

   『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 p197より引用


 リーダーが明るいことは大前提ですね。仕事ができるということ以前に、人間としてしっかりしていて信頼に足る人物でなくてはなりません。私はまだまだですが、そういう人を師として仰ぎたいです。
 
 個人の乗用車はカローラに乗っていたとか、接待でも一万円以上のワインは断ったとか、自分の清貧さをアピールをされている部分もあります。これだけの地位に上り詰めた方の態度としては、それはそれは立派なことですが、私が丹羽さんに期待していたことはそういうことではありませんでした。

 ご興味のある方はご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 丹羽宇一郎 (朝日新書)
 


  

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『言える化』を読んで

2014年01月16日

 遠藤功さんのご著書『言える化』を拝読いたしました。

 遠藤さんは早稲田大学商学部卒業後、ボストンカレッジでMBAを取得、三菱電機、米系戦略コンサルティング会社を経て、現在早稲田大学ビジネススクール教授および欧州系の戦略コンサルティング会社、ローランドベルガ―の会長を務めておられます。

 この本は「ガリガリ君」で有名な赤城乳業を取材し、その躍進の秘密を紹介してくれるものです。

 赤城乳業の2012年の売上高は353億円、6年連続増収を達成し、10年で売り上げをほぼ倍増させたそうです。

 競合であるロッテ、江崎グリコ、森永乳業、明治などと比べると規模や総合力の面でなかなか太刀打ちできません。

 小さくても強い。小さいからこそ強い。「弱小」ではなく、「強小」を目指す。これが赤城乳業が目指す会社像だ。
 社長の井上秀樹さんはこう強調する。
 「私たちは単に大きな会社を目指してきたわけではない。規模は小さくても強い会社、いわば『強小カンパニー』を目指してやってきた」

            『言える化』 p22より引用


 題名になっている「言える化」は、赤城乳業の社風を表している言葉です。

 赤城乳業という会社の特徴は、年齢や肩書に関係なく、社員が自由闊達にものが「言える」ことである。風通しがよく、オープンでフランク、フラットな関係をとても大切にしている。 
 それを社長の井上は「言える化」と呼んでいる。「言える化」は井上が生み出した独自の言葉であり、彼の信念でもある。

           『言える化』 p138より引用


 私は、自分の会社においてはこの点がまだまだ弱いと感じています。

 だからこの本の題名を見て、何かヒントがあればと思い、すぐに購入しました。

 「言える化」は個の尊重がなければ実現できない。一人ひとりの可能性を信じ、それぞれの考え方や意見をリスペクトする気持ちがなければ、「言える化」という土壌を育むことはできない。
 経験や知識に富む人は、とかく若い人たちの意見を排除し、耳を傾けるという努力を怠りがちである。その意味では、赤城乳業の役員や役職者たちは”大人”だとも言える。
 相手の意見に耳を傾ける「聞ける化」があってこそ、「言える化」は成立する。

             『言える化』 p140-141より引用

 
 「言える化」を実現させるには、一人ひとりの意識を変えていかねばならないと思います。
 
 とりわけ上の立場の者、声の大きい者の考え方を変える必要があります。

 時間はかかりますが、早急に取り組んでいきたいことです。
 
 ご興味がある方はご一読くださいませ。

  


 参考文献:『言える化』 遠藤功 (潮出版社)
 

 遠藤さんのご著書は以前もご紹介しました。いずれの本も情報的な内容が中心なので、もう少し踏み込んだ解説があると面白くなると思うのですが・・・・・・

 参考ブログ:『新幹線お掃除の天使たち』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1090509.html
  

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『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』を読んで

2014年01月14日

 大城太さんの『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』を拝読いたしました。

 大城さんは複数の会社経営を行うかたわら、社団法人理事長やベンチャー企業への投資などもされているそうです。外資系保険会社、歯科用医療機器メーカーを経て独立する際に、大物華僑に師事したそうで、その教えがこの本の元になっています。

 大城さん自身や師事した大物華僑の経歴やプロフィールについての詳細ははっきりとは紹介されていません。また、華僑の教えがどのように成果に結びついたかについても具体的には明示されていないので、創作的に感じてしまう面もあります。教訓的な話は、それなりの方が話すから教訓になるからだと思います。

 それでもいくつか興味深い考え方もあったので、ご紹介します。

 いまの日本ではお願い営業は嫌われますが、華僑の考えはまったく違うものです。

 ビジネスは継続が前提ですので、たとえ利益が大きくても1回きりのやりとりにはあまり意味がありません。顧客とのキャッチボールを長く続けることが大切です。
 商品を売る場合も同じで、完全無欠な商品を売るよりも、あえて不完全な商品をお願いして買ってもらい、アフターフォローの機会を得るほうが賢いのです。
  
        『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 p56より引用


 お願い営業によってクレームが出たとしても、きちんと対応することによって、接触する機会を作っていくということです。中国製のものに問題が多いのはこれとは関係はないと思いますが・・・・・・

 日本の企業においては価値観を共有することに力を入れています。華僑はやや違うようです。
 
 価値観が同じ集団の欠点は、二の矢を持たないことです。皆それぞれ違う価値観を持つ集団であれば、トップのありがたい金言を鵜呑みにすることはありませんし、誰かが間違えてもすぐに二の矢、三の矢を放つことができます。
 ですから私は、片目をつぶってちょうどよいくらいの人材、価値観の違う人材を歓迎します。「社長とは違うやり方でやってみたい」と言われたら、「とりあえずやってみろ」と背中を押します。

       『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 p84-85より引用


 これは大切なことだと感じました。中小企業の場合、どの会社でもその社長らしい集団が出来てしまいますから、やや危険なことでもあります。あえて違う人材を入れることです。
 
 華僑のコミュニケーションに欠かせないものは食事会です。華僑は嫌いな人をあえて食事会に呼ぶそうです。

 呼ばざるを得ないから呼ぶのではなく、わざわざ自分から嫌いな人に声をかけるのです。
 嫌いな人を呼ぶために、その他大勢を呼ぶと言っても過言ではありません。大勢の中に紛れさせれば「嫌いな人度」が薄まりますからね。

        『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 p139より引用 
 
 
 なぜ嫌いな人を呼ぶのでしょうか。

 嫌いな人を遠ざけると、考え方も情報も偏る。偏りは判断ミスになる。だから嫌いな人ほどつき合う価値がある。
 嫌い=価値観が違うということは、自分にない考え方や、自分のもとへは集まってこない情報の宝庫であるとも言えます。
          
        『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 p140より引用


 これもおもしろいですね。

 私は華僑の考え方に興味があって読んでみました。

 軽く読める本です。ご興味のある方はご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』 大城太 (日本実業出版社)
 
 


  

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『最強「ご当地定番」のつくり方』を読んで

2013年12月06日

 勝山良美さんのご著書『最強「ご当地定番」のつくり方』を拝読いたしました。

 勝山さんは1951年北海道美唄市生まれで、すすきののレストラン「YOSHIMI本店」を中心に、札幌、仙台、東京、千葉、名古屋、福岡に、レストランやスープカリー専門店など13店舗を運営する北海道を代表する料理人兼経営者だそうです。2006年より観光土産品の開発に着手し、「カリカリまだある?」「Oh!焼きとうきび」など、ここ5年で開発・販売した自社ブランドやプロデュース商品は11ジャンル、25アイテムにのぼります。

 観光地のお土産といえば、これだ!といえる昔からの定番商品がある一方で、魅力のない普通の商品も多いと感じます。

 勝山さんの開発された「カリカリまだある?」「Oh!焼きとうきび」「コレット」「じゃがJ」などは、一般的には知らない人のほうが多いのではないかと思いますが、新千歳空港では目立つ位置に陳列されていますし、大変よく売れているそうです。

 私も札幌に出張に行った際に「白い恋人」や「マルセイバターサンド」以外のものを探していて、知らないで購入していました。
 
 いくつかの種類は食べてみましたが、今までにない感じのお菓子で、また食べたくなったり、人に教えたくなったりしました。

 お土産のお菓子とは人にプレゼントするものですが、勝山さんは次のように述べています。

 しかし、一過性に終わらず売れ続けているお土産菓子は、「自分が食べたい」という「自己消費型の商品」であると私は見ている。
 私は、まずは地元・北海道の人が「自分たちが食べたいから買う商品」を目指した。地元の人がそれを食べた結果、他県にいる親戚や知人・友人に、自信をもってプレゼントしたくなる商品にしようと考えたのである。

     『最強「ご当地定番」のつくり方』 p47より引用
  
 
 確かに、自分でおいしいと思うから人にプレゼントするのですよね。「これおいしから食べてみて」と言わる方がもらう方としても楽しみですし、うれしいです。

 「コレット」というトウモロコシのチョコレートは開発までに2年もの機関がかかったそうです。その結果生産コストも増えたそうです。

 だからといって、安易に価格をあげることはしない。
 なぜなら、「原価+利益=価格」という計算で値決めをした商品は、たとえ一時的に爆発的に売れたとしても、決して売れ続けることはないからだ。
 「自分が客だったら、いくらなら買うか?」とお客様目線で決めた価格に収まるように、原料業者と折衝したり、製造工程を工夫したり、原料の比率に手を加えるなど、やれることをすべてやる。もちろん、このとき絶対にクオリティを落としてはいけない。
 YOSHIMIのお土産菓子は、すべてそのようにして価格を決めてきた。

     『最強「ご当地定番」のつくり方』 p101-102から引用


 マークアップで価格を決めるのではなく、お客さまがいくらなら買うかと考える・・・・・・この視点はドラッカー的です。

 お土産菓子というと地味な感じですが、この本を読んでみて、いくらでも改革ができるのではないか、と思いました。

 他の成熟産業、衰退産業についても同様に思います。

 みなさまもどうぞご参考になさってください。

  


 参考文献:『最強「ご当地定番」のつくり方』 勝山良美 (日本実業出版社)
 

  

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『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』を読んで

2013年12月05日

 石島洋一さんのご著書『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』を拝読いたしました。

 石島さんは1948年神奈川県秦野市生まれ、一橋大学経済学部卒業後、民間企業、東京都商工指導所、会計事務所勤務を経て、会計士事務所を設立されました。現在、石島公認会計士事務所所長としてご活躍されています。

 ヤマト運輸の社員や関係者に直接取材し、そのエピソードを中心として、ヤマト運輸という会社やそこで働く人の考え方を紹介してくれる本です。

 著者とヤマトホールディングスの瀬戸薫会長が高校時代の親友の関係にあるそうで、著者のヤマトに対する思い入れが強く、賛辞の多いやや偏った本になってしまっているような気がしました。

 この本を読む前に、ヤマト運輸の中興の祖、小倉昌男さんの『小倉昌男の経営学』を読んだ方がいいと思います。

 参考ブログ:第10回ビジネス読書会
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e858251.html

 クール宅急便の開発の際、冷蔵便は可能でも冷凍便は難しい、と考えられていたそうです。

 担当者はデータを取りそろえ「今は、冷凍品の流通需要など少ないから、宅急便で冷凍を扱うのは無理」と、小倉さんに報告しました。(p195)

 そのときの小倉さんの答えは次のようなものだったそうです。

 「このデータの見方は二通りある。需要がないから流通していないのか、需要があるのに流通させる仕組みがないのか。私は後者だと思う。君たちは見方が違うだろう。今は冷凍したものを配送する仕組みがないから流通しないだけだ。その仕組みを作れば大きな需要が生まれるはずだ」

        『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』 p195より引用
   


 セールスドライバーの人事制度改革について報告書を提出した小倉さんは次のような答えを返したそうです。

 「君、こんなのは大学を出た人の人事評価制度だ。全然ダメだ。君はフルーツポンチがなぜおいしいか知っているか。あれは、バナナ、ミカン、リンゴ、サクランボなどがシロップの中に浮いている。バナナは甘いからおいしい。リンゴは酸味があるからおいしい、ミカンはみずみずしさがあるからおいしいのだ。甘いという発想だけで評価してはいけない」

      『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』 p197-198より引用

 

 ヤマトは2019年に100周年を迎えるそうです。このときまでにグループの事業数を100まで伸ばそうという計画が進んでいるそうです。(p203)

 この本で解説されていますが、ヤマトは運輸業だけに限らず、運輸に付随したさまざまな業務を受けています。

 ヤマトの精神が分かる本です。みなさまもどうぞご参考になさってください。 

  


 参考文献:『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』 石島洋一 (PHPビジネス新書)
 

  

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『日本一を目指す物流会社のすごい勉強会』を読んで

2013年11月21日

 ハマキョウレックスの代表取締役会長、大須賀正孝さんと同社社員勉強会によるご著書『日本一を目指す物流会社のすごい勉強会』を拝読いたしました。

 ハマキョウレックスは、物流センターを運営する事業で、16年連続増収増益、営業利益率10%超の超優良企業です。2003年に東証1部に上場しています。

 大須賀さんは1941年生まれ、中学卒業で働き始め、職を転々とした後、1971年浜松協同運送(現・ハマキョウレックス)を設立されました。1993年に大手スーパーの物流センター業務を受注し、毎日収支をもれなく把握する「日々収支」、パートさんが交替で班長を務める「日替わり班長制度」、物量に応じてパートさんの人員を調整する「アコーディオン方式」などユニークな手法で収益力を強化されています。

 この本はハマキョウレックスで行われている社員勉強会の方法を現実に行われた記録も紹介しながら具体的に教えてくれるものです。

 社員勉強会は、全国にある物流センターや営業所、本社管理部門、グループ会社などから、それぞれ1~2名が参加して、本社のある浜松のホテルで一泊二日の泊まり込みで開催されているそうです。年に10回ほど開催され、一回の参加者は50人以上だそうです。
 ロの字型にテーブルを並べ、全員の顔が見えるような形にします。そこで各人の目標、抱えている問題、その対策、会社に対する要望などを本音でみんなの前で話してもらい、社長や会長からアドバイスをしてもらうのだそうです。

 大須賀さんが社員に対して意識してもらっているのは次の三つです。

 ・全員参加
 ・日々収支
 ・コミュニケーショ

 全員参加で同じ目標に向かって進む。その達成方法の答えを見つけるために、日々収支を確認する。そして、みんなに納得してもらえるようにコミュニケーションをしていく。

         『日本一を目指す物流会社のすごい勉強会』 p7より引用


 この三つのキーワードについては、この本の中で詳しく解説されています。

 日々収支のための日計表は現場でつくるのだそうです。

 だから収支日計表は、センターの実情に合った形式で、自主的に作ってもらう。
 もし形式を決めて強制すると、収支日計表を作ることが目的になってしまう。そうすると形だけ整えるようになる。それじゃ本末転倒だ。収支日計表を作ることは手段に過ぎない。形だけ実行しても意味はない。だからマニュアルも作らない。決して強制はしない。

          『日本一を目指す物流会社のすごい勉強会』 p38より引用


 これだけの規模の企業なのに形式が統一されていないというのは意外でした。現場の人たちが自分たちでつくるなら、収支構造を本当に理解をしていないとできないでしょう。現場の人にとっては大変ですが、確実に力がつきます。

 物流の現場を知らないので、具体的な部分ではよく分からないところもありましたが、丁寧に教育をしていく体制は素晴らしいと思いました。

 みなさまもご参考になさってください。

  


 参考文献:『日本一を目指す物流会社のすごい勉強会』 大須賀正孝&同社社員勉強会 (日経BPマーケティング)
 
  

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『ど真剣に生きる』を読んで

2013年11月20日

 稲盛和夫さんのご著書『ど真剣に生きる』を拝読いたしました。

 この本は、NHK教育テレビにて2006年6月に放送された「NHK知るを楽しむ 人生の歩き方~稲盛和夫 ど真剣に生きる」をもとに再構成した本です。各章は番組のテキストを、章末のインタビュー採録は番組でのインタビューをまとめたものだそうです。

 稲盛さんは、私にとっては人生の支えです。

 お会いしたことはありませんし、盛和塾にも入っておりませんが、困ったときにはいつも稲盛さんの本を読み返してきました。

 相談する人がいなかった30代のころは、稲盛さんの本が頼りでした。大きな問題があったとき、心細いとき、私には稲盛さんの本を読むしかなかったです。(いまでは相談する人が身近にたくさんいます。)

 この本でも、いつもながらの力強い稲盛節を読むことができます。

 図らずも、多くの部下を率い、集団の運命を預かる身になってからは、リーダーは根気強く仕事や人生の意義を語り、それを全員で共有することが大切だと気づきました。また、そのためには、仲間に説き続けなければならないこと、またそうすることで、心が一つに結ばれた最も強い集団になるということを知りました。

                 『ど真剣に生きる』 p78より引用


 昨今はやりの「会社は誰のものか」という問いを受ければ、私は躊躇なく「全従業員の物心両面の幸福のためにある」と答えるでしょう。そして、「お客様、取引業者さん、地域の方々をはじめ、企業をとりまくすべての人々のために存在している」と続けるに違いありません。
 
                 『ど真剣に生きる』 p107より引用


 才能とは、集団を幸福へ導くために天がリーダーに与えてくれた資質だと考えるべきです。あなたでなければならない必然性はなく、他の人でもいいはずなのです。ならば、才能を授かった者は、それを世のため人のために使うべきであって、自分のためだけに使ってはならないはずです。
 集団のリーダーになろうという人は、自分を大事にしてはいけないのです。自分を脇に置いて、集団のことを最優先で考えられるような人でなければ、決して経営者にはなってはいけないのです。

                 『ど真剣に生きる』 p109より引用


 どのご著書を拝読しても、同じような話が出てくるのですが、何度でも読んでしまいます。
 
 「またこの話だな・・・」と思いながらも、真剣に読んでいる自分がいます。

 稲盛さんには本当に感謝しています。(御礼としてせめてJALに乗ります。)

 みなさまもどうぞご参考になさってください。

  




 参考文献:『ど真剣に生きる』 稲盛和夫 (NHK出版生活人新書)
 

  

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『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』を読んで

2013年11月19日

 小山昇さんのご著書『絶対に会社を潰さない社長の時間術』を拝読いたしました。

 小山さんは1948年山梨県生まれ、国内で初めて日本経営品質賞を二度受賞(2000年、2010年)した株式会社武蔵野の経営者として大変有名な方です。その経験をもとに、現在500社以上の会員企業の指導を手がけ、年間240回の講演、セミナーを行っているそうです。

 この本は、小山さんの行動をもとに社長がとるべき時間の使い方を伝授してくれるものですが、いやー、小山さんの行動は徹底していますね!すごいです。

 株式会社武蔵野の「経営サポート事業部」の人気メニューに「小山昇のカバン持ち」(一日30万円)というのがあって、高いお金を払ってまで小山さんについて回るわけですが、1年3カ月先まで予約でいっぱいなのだそうです。(p37)
 小山さんの行動を知りたいという熱心な経営者がたくさんおられるのです。

 この本で特に私が感銘を受けたことは、社長にとっては素早い決断が生命線である(p44)ということです。悩んでいるのは時間の無駄だそうです。

 悩んでも悩まなくても、結論は変わらないことが多いです。それなら一日で決断したほうがいい。なかには一日どころか一瞬で決めてしまっても、何の問題もない案件も多いです。
 
         『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』 p44より引用


 早く決断するコツは二つあるそうです。
 
 一つは「損をしてもいい」と腹をくくること、もう一つは「間違ってもいい」と肩の力を抜くことだそうです。(p44-45)

 そうやって、ある意味、吹っ切っていくことも必要ですね。

 早く決断することは、早く失敗することです。

 早くに失敗しておけば、それだけ経験として豊かになる。つまり早い時点での失敗は、時間の先取りです。人間はなぜ失敗するのか、それは成長するためです。

         『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』 p46より引用


 小山さんは「素早く行動に移せるか」という観点で部下を見ているそうです。

 私の感覚としても、行動が早い人はとても助かります。逆に遅い人は、ぐずぐずして何もできないまま、人に仕事をとられてしまいます。
 私も行動の早い部下に感謝し、もっと見てあげよう、と思いました。

 小山さんは社員との時間も大切にされています。

 お父さんの仕事の状態によって、その子供たちの将来は大きく変わるでしょう。

 つまりそれはお父さんの仕事の中に、家族の人生があるからです。
 ということは、仕事とプライベートを完全に切り離すことなどできないということにほかならない。
 会社の人とも、私的なところをある程度、共有しないと、会社はうまくいきません。職場の人間関係が、まったく事務的な冷たい関係でいるのは間違いなのです。

         『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』 p184より引用


 働いている人同士のコミュニケーションがない企業はうまくいかなくなる、と小山さんはいいます。

 社内の人たちが人間と人間として付き合っているのかどうかは、会社をよくしていくための元になります。私の周りにもいろいろな人生がありますが、会社はそれぞれの人生の一端を担う責任があります。
 縁あってここに集まった人同士が温かい目で見つめ合える場をつくらなくてはいけないと思います。

 小山さんの時間術、行動術があまりにすごいので、初めて読む方はびっくりされるでしょうね。

 どうぞご参考になさってください。

  


 参考ブログ:『社長!儲けたいなら数字はココを見なくっちゃ!』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e874032.html

 参考文献:『絶対に会社を潰さない社長の時間術』 小山昇 (プレジデント社)
 

  

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『運命のバーカウンター』を読んで

2013年11月15日

 高橋仁さんのご著書『運命のバーカウンター』を拝読いたしました。

 高橋さんは脱毛サロン「ミュゼプラチナム」で有名なジンコーポレーションの代表取締役を務めておられます。高橋さんのご著書は以前このブログでご紹介したことがあります。

 参考ブログ:「1800円の脱毛サロン?」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e955735.html

 『運命のバーカウンター』の帯には「覚悟を決めた経営者は無敵である。」の太字のコピーとともに、白川道さんや小山薫道さんの推薦文が記されています。
 
 若い経営者がメンターの指導の下、成功に向かっていく姿を描く小説です。経営についての解説的なものは一切ないまま物語は進んでいきますが、その過程に含意があります。

 アマゾンの書評を見ると、★1つから★5つまで広がっています。評価がはっきり分かれる本ですね。

 ストーリー自体は面白かったのですいすい読めてしまいますが、何が出てくるのだろうか?と期待しながら先を進めていくと、結局何に出てこなくて終わる感じです。
 
 私にとっては、自分の経営に重ねて読んでいて、自分の弱さや至らなさを反省する部分がいくつか発見できました。ストーリーから読み取る本ですから、あくまで自分がどう読むか、どうとるか、ということです。

 私が気付きを得た部分をご紹介します。

 「経営者なら過去を失くすことだ」 (p056)

 「経営者にあるのは、今この瞬間と未来だけってことだ。どれだけ過去に成功したって、そんなものは関係ない。それより今どうしているか、これから先どうするか。それしかない。だから俺は、常に仕事をしている」(p056)

 「(前略)ただ、ビジネスとしてやるなら、”好きの壁”を越えろってことだ。好きで始めたことは自分の満足したところで終わってしまう。好きなことに裏切られるのは怖いから冒険もできない。常に波も来ない自己満足の湾の中をグルグル回っているだけの遊覧船だ」(p122)

 「(前略)だからこそ、経営者なら同じ味のように思えても中身は進化させないとダメだ。今の状態を維持しようと思ったら、確実に将来はない。進化させているからこそ”変わらない”と客は評価してくれるってことだ」(p132)

 「会社を経営するって大変ですね、とか言われるだろ。私にはとても無理とか。そうじゃないんだよ。この喜びっていうのは分単位、秒単位で思うわけだ。この一分一秒たりとも無駄にできない。こうして銀座で飲んでても明日になれば会社がないっていう可能性だってある。そこを楽しめるかだ」(p155-156)

 「みんな全力出し過ぎだ。遊びがなさ過ぎる。そんな経営者は周りを不安にさせるだけだ。義男が部下だったら、そんな経営者はどうだ?」
 「心配ですね。いろんな意味で」
 「だろ?余裕も遊びもなく生きている人間には、他の人間は集まってこない。疲れるし不安になる。底が見える経営者ほどつまらんものはない」(p185)


 中小企業の経営者や創業者の方が読むとよいと思います。ただ、好みにあうかどうかです。

 期待しないで読んでみてください。私にはおもしろかったです。

  


 
 参考文献:『運命のバーカウンター』 高橋仁 (幻冬舎)
 

  

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『仕事の王道』を読んで

2013年11月13日

 小宮一慶さんのご著書『仕事の王道』を拝読いたしました。

 小宮さんのご著書は何冊も読んでいますし、お話も定期的に聞きしていますが、毎回何かを気づかされます。

 売り上げや利益は、結果としての数字ですから、よい仕事をした結果として生まれてくるものです。初めから稼ごうと考えるのは順序が逆というものです。

 小利口になって、うまく世渡りしていけばやって行ける、というのは勘違いです。正しい考え方を学んで、一生懸命やることで、仕事は楽しくできるし、たくさん稼げるのです。

               『仕事の王道』 p54より引用


 正しい考え方をどうやって学べばいいのでしょうか?

 正しい考え方を身につけるためには、よい本を何度も読んで、自分のものにしないといけません。
 例えば、先に述べたように、私は、松下幸之助さんの『道をひらく』を、東京の自宅にいるときは寝る前に必ず読みます。ほかの良書でもかまわないので、同じ本を何度も読む習慣をいろいろな人にすすめているのですが、多くの人はやりません。

               『仕事の王道』 p54より引用


 小宮さんが良く読んでこられたものとして次の書籍も紹介されています。

 『論語』 (岩波文庫)
 『論語の克学』 安岡正篤 (プレジデント社)
 『論語と算盤』 渋沢栄一 (大和出版)
 『菜根譚』 (岩波文庫)
 P.F.ドラッカーの著書

 
 私はいままではとにかくいろいろな本をできる限りたくさん、早く読んできました。同じ本を繰り返し繰り返し読むということは苦手でした。冗長な感じがしてしまったからです。

 ところが、分かったようなつもりになっているだけで、実際には分かっていないことがあります。

 人に説明しようとしても説明ができないときに、はっと気づきます。

 それで本当に読んだと言えるのか?という自分への疑問です。

 これからは精読という読み方もしていきたいと思います。

 みなさまはどんな読書をされているでしょうか?

  


 
 参考文献:『仕事の王道』 小宮一慶 (日本経済新聞出版社)
 

  

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『ディズニーの魔法のおそうじ』を読んで

2013年10月31日

 我孫子薫さんの『ディズニーの魔法のおそうじ』を拝読いたしました。

 安孫子さんは1951年山形県生まれ、1982年株式会社オリエンタルランドに入社し、東京ディズニーリゾートのカストーディアル(清掃部門)部長、リゾート運営部長、キッザニア東京の副総支配人などを歴任し、現在は株式会社チャックスファミリーの代表を務められています。

 この本は第35回ビジネス読書会(11月26日)の課題図書です。会員のEさんが選んでくださいました。Eさんは商社系のお仕事をされている方なので意外な選書でした。

 題名からして、いま流行りの片付けのことや精神論などが書いてあるのかな~と思っていましたが、私の創造とは全く違うもので、ビジネスパーソン向けのしっかりした内容の本でした。

 自己啓発的な話などを考えていた私は大間違いでした。

 ディズニーは、決しておそうじにこだわっているわけではなく、カストーディアルの本当の目的は、清掃そのものではないのです。そうじのためのそうじなのではなく、ましてや従業員の精神修養、より厳しい言葉を使えば自己満足のためではありません。

 ディズニーのおそうじはゲストの安全のために行われます。そして究極の目的は、ゲストへのおもてなし、ハピネス(幸福)の提供なのです。そのために清掃をし続ける。それは、ディズニーの理念に基づいて行われていることなのです。

        『ディズニーの魔法のおそうじ』 p6より引用


 お客さまの幸福のために、厳しい姿勢で掃除をされているのです。

 ディズニーランドでは、コストから先に考えることはしません。

 例えば、レストランが売上げ5万円のディナーを提供する際に、5万円以上のコストをかけるわけにはいきません。赤字になってしまうからです。そこで経営者はひとまず、1万5000円とか、せいぜい2万円の食材原価で、できるだけ顧客が満足できるような内容に近づけようと考えるはずです。一方、ディズニーは、そもそも顧客の満足を、コストから逆算して組み立てるような考え方はしません。なぜなら、ディズニーが提供するものとはハピネス、すなわち幸福であり、感動だからです。

        『ディズニーの魔法のおそうじ』 p26より引用


 会社の売上げや利益と目的とするのではなく、お客さまや社会に対して価値を創造することを企業の意義とする考え方です。
 
 参考ブログ:『二十一世紀残る経営、消える経営』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334110.html
 
 ディズニーの清潔さの基準は「そこで赤ちゃんがハイハイできるか」だそうです。(p3)

 「汚くても繁盛している店がある」、あるいは「ちょっとくらい汚い店のほうがなんだか本物っぽい」などという言い方がされることがあります。確かにそういう店があることは事実です。
 しかし、それはほとんどが個人商店だと思われます。厳しい言い方をすれば、そのままでは決してメジャーにはなれない存在です。口コミと人間関係、長年のおつきあいのなかでお客さまをつかみ、安定したビジネスを続けることは一つの面白みですが、おそらく一見さんは敷居をまたがないと思います。大きな広がりは得られないのです。

        『ディズニーの魔法のおそうじ』 p209より引用


 私も飲食店を営んでいますが、清潔さに妥協はない、と考えます。

 ディズニーランドの現場で長年にわたり清潔さを保ってきた著者が非常にまじめに書いた本です。掃除を精神論とからめるのはアマチュアの世界のことだ、と思いました。

 みなさまもどうぞご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『ディズニーの魔法のおそうじ』 我孫子薫 (小学館101新書)
 
  

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『社員が会社のために動きたくなる51のこと』を読んで

2013年10月30日

 吉田和彦さんのご著書『社員が会社のために動きたくなる51のこと』を拝読いたしました。

 吉田さんは埼玉県生まれ、日本大学生産工学部卒業後、大手文具メーカーに入社し、画材開発室で新製品開発を担当され、出願した特許は約20件に上るそうです。1992年に恒信印刷株式会社に入社、現在同社及びコーシン出版の代表取締役社長を務めておられます。
 
 吉田さんのご著書『"ヒトがいない、カネがない、仕事がない" 社長、ネットがありますよ!』は以前このブログでご紹介したことがあります。

 参考ブログ:社長のブログ
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e303738.html

 今回ご紹介する本は、吉田さんの経験から、小さな会社で自ら考え、動き、成果をあげる社員の作り方を伝授してくれるものです。

 書いてある内容はおおむね私が日頃から心がけていることでした。 

 吉田さんは、社員に仕事を任せ、社長がいなくても問題のない状態をつくることを進めています。

 例えば、社内でトラブルがあったとします。
 トラブルを解決するために社員が話し合っているとき、社長がすぐに口を挟んではいけません。
 存在を消し、社員が解決策を報告してくるのを待ちます。
 最初から口出ししてしまうと、社員が自分で考えなくなり、社長がいないと何も解決できなくなるからです。
  
         『社員が会社のために動きたくなる51のこと』 p61より引用


 社長はすべてを指示しないことです。
 そうすれば、社員は会社のために責任感を持ち、工夫してくれます。
 「指示は概要だけ」を心がけ、社員を動かしていきましょう。
  
         『社員が会社のために動きたくなる51のこと』 p78より引用


 私は心配性なので、不明な点があるとどうしても自分で直接確認してみたい衝動にかられます。自分が動いて何とかしようとしてしまいます。

 ただ、企業という組織で考えた場合、それだけが解決策ではありません。

 最近もある先生から「何か問題が起こったときには、社員に解決させないと社員が伸びない」と注意されました。

 確かに、自分に自信がついてきたのは、いままで経営上のいろいろな問題を自分で解決してきたからでした。

 この問題をその社員に解決させるのは難しそうだな・・・・・・と思ってしまうことがあります。解決の道筋は大変だろう、とその苦労を申し訳なく感じていることもあります。辛いことは自分が被ればいいという純粋な気持ちです。

 ある程度の経験をもつ社員ならばまずはやらせてみることが大切なのだと思います。

 私は他の会社の社長がどんな経営をされているのか興味がありますので、自分の経営と比較しながら読んでいます。

 みなさまもご参考になさってください。

  


 参考文献:『社員が会社のために動きたくなる51のこと』 吉田和彦 (あさ出版)
  
  

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成長はあくまで結果である

2013年10月25日

 南場智子さんの『不格好経営 チームDeNAの挑戦』より引用いたします。
 
 自分の「成長」への意識はしかし、ほどほどのほうがよいと考える。学生が自分の成長を重要なポイントとして就職先を選ぶことはうなずけるが、入社してからも「成長」オタクのように成長、成長と言う人は少し変だ。成長はあくまで結果である。給料をとりながらプロとして職場についた以上、自分の成長に意識を集中するのではなく、仕事と向き合ってほしい。それが社会人の責任だ。


             『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p216より引用


 最近は大学、専門学校、通信教育など社会人が学べる手段がいくらでもあるので、社会人になっても学び続ける若者は多いようです。
 
 学ぶことは素晴らしいことですが、学ぶことに没入してしまって、行き先を見失ってしまうこともあるようです。

 趣味として学ぶならばよいのですが、ビジネスパーソンが仕事のために学ぶならば、学ぶことを目的にしてしまっては本末転倒です。

 南場さんが述べているように、仕事を通じて結果として自分が成長できた、というのが道筋でしょう。

 学びがあったこと、成長出来たことで止まるのではなく、人のためになること、役に立つことをするためにそれらを大いに利用したいのです。

 企業というのは社会に対して成果をあげながら、所属する個人も結果的に成長できるという意味で、社会にとっても個人にとっても有効なすばらしい機関です。

 自分だけの成長にこだわるよりも、社会のため、周りのために何ができるか?と成果を意識することが、よりよい学びにつながると思います。 

  


 参考文献:『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 南場智子 (日本経済新聞出版社)
 

 
  

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知識を経済価値に転換する

2013年10月17日

 國貞克則さんの『究極のドラッカー』より引用いたします。

 ドラッカーは、事業とは市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスであると言います。つまり、買わないという選択肢もある顧客が、喜んで購入してくれるような商品やサービスを提供するのが事業です。そして、それを可能にするのが企業で働く人たちの知識であり知恵なのです。ドラッカーは、企業は必ずしもより大きくなる必要はないが、常に優れたものに成長する必要があると言います。知識と知恵を使ってより優れた商品やサービスを提供し続けることが企業の使命なのです。

         『究極のドラッカー』 p61より引用


 昨日はドラッカーの目標管理について書きました。

 参考ブログ:目標管理とは
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1368079.html

 自ら目標を設定し、その達成に責任をもつのが知識社会における目標管理ということでした。

 そのような行動をとることができれば、それはもう立派な知識労働者です。

 國定さんが指摘されるように、企業においては知識と知恵を使って、お客さまが欲しいと言われる商品やサービスを提供し続けることが求められています。

 その根底には、その企業に所属する知識労働者の行動があります。

 現代の企業は知識労働者の集合体であるべきなのです。

  


 参考ブログ:知識労働者が生み出すもの
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1158514.html

 参考文献:『究極のドラッカー』 國貞克則 (角川oneテーマ21)
 
  

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『また、あの人と働きたい』を読んで 

2013年10月15日

 黒岩功さんのご著書『また、あの人と働きたい 辞めた社員が戻ってくる!人気レストランの奇跡の人材育成術』を拝読いたしました。

 黒岩さんは1967年鹿児島県生まれ、19歳で調理師免許を取得し、21歳で全国司厨士協会の調理師派遣メンバーとしてスイスに渡られたそうです。ヨーロッパの三ツ星レストラン「タイユヴァン」他で3年間フランス料理を学び、帰国後、いくつかの有名料理店でスーシェフ、料理長を務めたのち、2000年大阪にフレンチレストラン「ル・クロ」をオープン、現在は3店のフレンチレストランを経営するかたわら、食育の講演会なども行っておられるそうです。

 題名のとおり、黒岩さんのご経験からいかにお店の組織をつくり育んでいくかを教えてくれる本です。

 当社も人材や組織の面で問題を抱えているので、ヒントを見つけるつもりで読みました。

 「ル・クロ」1号店では、オープンさせてから今までの12年間で求人広告を出したのは、たったの2回だけだそうです。

 常に人材不足に悩まされている飲食業界としては考えられないことです。

 なぜ人材採用に困らないのか、その理由はいくつか考えられます。
 そもそも、よい人材がお店を辞めずに残ってくれるということ、また一度辞めても戻ってくれる社員がいること。そしてもう一つ、社員がいい辞め方をしている、というのがあると思います。
 スタッフたちは、人が辞める様子を実によく見ているものです。だからこそ、彼らにいい辞め方とはこういうことだとわかってもらえます。また、いい辞め方ができるよう、僕らも最大限の努力をしたいと思っています。

          『また、あの人と働きたい』 p123より引用
  
 
 いい辞め方とは、三カ月前、半年前から準備して、仲間や組織に敬意を払って、迷惑をかけないように辞めていく方法です。逆に悪い辞め方とは法律の条文に従っているからと相談もなく突然出て行ってしまうものです。

 いずれの場合も、辞めていく人だけに問題があるのではなく、上司または組織に責任があると考えるべきです。
 
 辞める話を相談されたら、上司としては組織の運営のことで頭がいっぱいになってしまいますが、黒岩さんは家族のつもりで率直に答えます。

 上司としてではなく家族として話すというのは、「会社を守るため」ではなく、「その子の人生を守るため」に意見を言う、という意味です。

          『また、あの人と働きたい』 p126より引用 


 これは本当に大切なことです。人が辞めてしまう組織には、こういう人間対人間のコミュニケーションが欠けていることを感じます。

 「ル・クロ」には「フリーフェンス」という考え方があるそうです。

 「ル・クロ」は「フリーフェンス」という言葉を掲げています。というのも、とくにトップ陣に対して「部署の壁は絶対につくるな」と言い聞かせてあるのです。僕はトップ陣たるもの、自分が担当する部署という狭い範囲の責任のみではなくお店全体、つまり経営に対して責任を持ってほしいのです。

         『また、あの人と働きたい』 p150より引用 


 料理が遅れている状況をみてキッチンの仕事の悪さだけを責めるのではなく、そのとき自分の部署ではどういう貢献ができるのかを考えるのが「フリーフェンス」です。

 お客さまにとってはお店の内部事情はまったく興味のないことです。お客さまにご満足していただくには、お店全体で一丸となって全力で対応することが絶対に欠かせません。

 自分には至らないところが多いということを感じます。

 飲食店を経営されている方はぜひご参考になさってください。

  


 参考文献:『また、あの人と働きたい 辞めた社員が戻ってくる!人気レストランの奇跡の人材育成術』 
                   黒岩功 (Nanaブックス)
 

  

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『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』を読んで

2013年10月04日

 金子智朗さんのご著書『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』を拝読いたしました。

 金子さんは東京大学工学部卒業後、東京大学大学院工学系修士課程を修了され、日本航空、プライスウォーターハウスクーパース等を経て、独立されました。現在はブライトワイズコンサルティング合同会社の代表社員として、経営コンサルティング、企業研修、講演、執筆活動で活躍されています。

 この本は10月29に開催されるビジネス読書会の課題図書です。5月17日に銀行主催の勉強会で金子さんのご講演をお聞きし、大変興味をもちました。そのときに一緒に参加した友人がたまたまこの本を選んでくれました。
 
 私にとってのこの本の中の最高の一文は次の部分です。

 しかし、誰もが知る合理的な分析手法に従って考えている限り、行き着く答えは似通ったものになる。教科書の公式にただ数字を当てはめて計算しているなら、なおさらだ。「投資すべき」という結論も、「投資すべきでない」という結論も、だいたい皆同じになってしまう。
 これでは他人と違うことなどできない。皆、よかれと思って行っている合理的判断が差別化を阻害しているのである。

   『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 p19より引用

 
 ある投資案件を検討しているときにこの文章を読んで、自分はまさにこれだなあ、と思ってしまいました。
 投資収益率をどんなに計算しても優等生的な答えしか出てこないわけで、投資の判断は計算とは違う次元だと感じるのです。

 では金子さんの「合理性を超える」とはどういうことなのでしょうか。

 合理的な分析結果を鵜呑みにするのでなければ、無視するのでもない。それを踏まえた上で、あらためて自分の頭と、そして心で最終判断を下すのである。合理性を無視するのではなく、合理性を超えるのだ。

    『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 p20より引用


 「心で判断を下す」という言葉が出てきましたが、そうでもしない限り、人と違う判断はできないのだろうと思います。

 内部統制については次のように述べておられます。

 内部統制は、日本においては2009年3月期から制度化された。それから一躍脚光を浴びるようになったが、実は内部統制という概念自体は古い。制度化されたということの意味は監査対象になったということだ。
 監査対象になったことで、内部統制が形式的なものになってしまった面がある。
        
     『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 p104より引用


 形式的になった内部統制がもたらす弊害は次のようなものです。

 そこでは、「面白いから」「ワクワクするから」という理由は理由にはならない。
 それが理由にならないなら、面白いこともワクワクすることもできない。その結果、当たり障りのないことばかりやるようになる。仕事は面白くなくなり、会社そのものもつまらない会社になってしまう。
 これは内部統制の弊害というよりも、内部統制が監査対象になったことによる弊害だ。

    『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 p105より引用

 
 さらに厳しく続きます。

 幸い、2011年4月から内部統制報告制度は相当簡素化された。ついでに望むらくは、内部統制は監査対象から外したらどうだろうか。監査対象になっている限り、会社は形式的な証拠集めに付き合わなければならない。そんなことに多くの時間を取られるのはおよそ生産的とはいえない。

   『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 p259より引用


 金子さんの指摘は示唆に富んだものです。

 みなさまもぜひご一読くださいませ。

  


 参考文献:『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』 金子智朗 (クロスメディア・パブリッシング)
 
  

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『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書』を読んで

2013年10月03日

 鳥内浩一さんのご著書『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書』を拝読いたしました。

 鳥内さんは1976年富山県高岡市生まれ、東京大学工学部並びに大学院卒業後、複数のコンサルティングファームで活躍され、2005年からはラーニング・エッジ株式会社に経営陣として参画されました。2011年に独立、株式会社リアルインサイトを設立されました。自らの経営者としての体験とクライアントへの指導を通じて、コラボを成功に導くための独自のフレームワークを体系化し、それを使って多くの企業の経営改革で成果をあげておられます。
 
 9月5日に松本市において21世紀ニュービジネス協議会の企画で行われた「信州ビジネスコラボセミナー」で、鳥内さんのご講演をお聞きする機会がありました。事前にお話をお聞きしていたので、この本は大変読みやすかったです。

 「コラボ」とはその名の通り、コラボレーション(共同、協力)のことです。他を巻き込んで事業を成功させていくことです。

 コラボを行うことでどんなことができるのでしょうか。

 コラボで、何も持っていない人でもビジネスを成功させられます。
 コラボで、超スピードで強力なブランドを確立できます。
 コラボで、落ち込んだ業績をV字回復できます。
 コラボで、強力な販路が見つかります。
 コラボで、ヒット商品を「狙って」出せます。
 コラボで、海外進出にも成功します。
 コラボで、イノベーションを起こせます。
 コラボで、新たな市場を創れます。
 コラボで、業界地図を塗り替えることができます。
 お客さまとのコラボで、会社が変わります。
    
 『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書「はじめに」より引用 
  

 コラボを意識し実行すればいろいろなことを成功に導けるのですね。この本はコラボの手法が体系的に整理されています。

 自分では意識せずに行っていた事業や方策が実はコラボの一種だったのだ、ということに気がつきました。世の中のあらゆる事業にコラボの方法が利用されていることが分かります。

 たとえ自分がゼロからのスタートで何も資源を持っていなくてもコラボは可能だそうです。

 一つは経営資源というのは、必ずしも「今日ある資源」である必要はなく、「将来提供できる資源」であってもよいということです。もう一つは、あなたがその資源を持っていなくても、ほかの第三者が持っていれば、そこを絡めればよいということです。つまり、複数の相手とコラボを組むのもあり、ということです。

 『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書』p54-55より引用


 この本を読む限り、ほとんどの企業は何らかの形でコラボを行っていると思います。自分の事業についてよく考えて整理してみると、もっと強めて成果に結びつけられそうなコラボが発見できるかもしれません。

 どうぞご参考になさってください。

  


 参考文献:『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書』 鳥内浩一 (かんき出版)
 
  

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『50時間の部長塾』を読んで

2013年09月30日

 水島温夫さんのご著書『50時間の部長塾』を拝読いたしました。

 水島さんは東京都のご出身で、慶應義塾大学とスタンフォード大学で修士号を取得されました。石川島播磨重工業、三菱総合研究所の勤務を経て、現在はフィフティ・アワーズの代表取締役としてコンサルティング活動に従事されています。

 4月19日に八十二銀行の扇会セミナーで水島さんのご講演をお聞きし、興味をもちましたので読んでみました。
 「部長塾」というのは出版社のすすめによる書名だそうで、内容は社長向けでもある、とおっしゃっていたのを覚えています。実際のところ、この本の内容は部長という立場とは関係がないように思います。
 もし水島さんのお話をお聞きしなかったとしたら、私は「部長」というタイトルの本は読まなかったでしょうから、題名のつけ方はとても大切だと思います。

 この本は、題名から想像する内容とは違っていて、大きなマクロの話が中心です。グローバル経営における日本の経営の強み弱みを解説するものです。中小企業というよりは主に大企業向けの内容なのですが、世界の経営における日本の経営の立ち位置を知るという意味ではおおきなヒントになりました。

 誤解を恐れずに、私の視点からこの本の要諦をまとめてしまえば、日本の企業は擦り合わせ型で、欧米の企業は組み合わせ型だということです。

 日本企業は絶えず進化・変化のスピードで勝負してきました。朝令暮改は当たり前、組織替えも意味があるなしに関係なく頻繁に行います。土台が固まることなく、常に不安定なわけです。個人のプロ化は人材の標準化と同じことだと説明しましたが、その標準化は安定した固まった土台があってできあがるものです。ある程度状況が固まってこそ標準化による効率アップの効果が出ます。日本企業のように、進化・変化のスピードで勝負することが前提で、いつも土台が固まらない状況下ではいかなる標準化もメリットがなく、進むわけはないのです。

       『50時間の部長塾』 p251より引用


 組み合わせ型のマネジメントにおいては、標準化が不可欠になります。ISOや内部統制などさまざまな規格が欧米に由来していることを考えると、納得がいきます。
 
 組み合わせ型マネジメントの海外企業には優秀な個人プロが必須です。しかし、進化・変化のスピードで勝負する日本企業には専門性に凝り固まった個人プロは必要ありません。進化・変化を起こすことによって儲けを創出することのできる集団としてのプロが必要です。こう言い切ってしまうことに不安もあるでしょう。個人プロとしての専門知識のない社員ばかりが集まっても船は前に進まないという心配です。しかし、重要なのは深い専門知識より、儲けることに執着する集団です。

      『50時間の部長塾』 p252より引用 


 つまり日本の企業においては一つを極めた専門家よりも、複数の専門分野を持つ人材が求められるというわけです。

 大きな話ですので、ある程度の知識をもって全体を読まないと、理解ができないかもしれません。しかし非常に論理的な内容です。私は事前にご講演を聞いていたこともあり、大変よく理解できましたし、自分の会社に生かせる気づきもありました。

 いまは日本の企業も欧米化が進んでいますが、ただ欧米の真似をするだけでは、日本のよさを発揮することはできず、欧米化の波に飲み込まれるばかりです。この本の示唆することは大変興味深いです。

 どうぞご参考になさってください。

  


 さきほど、操作ミスで昨日まとめたブログを消してしまいました。難しい内容を一生懸命まとめたのに・・・・・・

 あー、がっかりです・・・・・・

 今朝は底からのスタートですので、右肩上がりになるしかないですね。

 きっと。

 参考文献:『50時間の部長塾 グローバル時代閉塞突破の経営』 
                       水島温夫 (生産性出版)
 

  

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『JAL再生 高収益企業への転換』を読んで

2013年09月26日

 引頭麻実さんの編著書『JAL再生 高収益企業への転換』を拝読いたしました。

 引頭さんは一橋大学法学部卒業後、1985年大和證券へ女性総合職第一期生として入社されました。証券アナリスト、ストラテジスト、投資銀行業務に従事され、2009年大和総研の執行役員に就任しました。現在は大和総研執行役員、コンサルティング本部副本部長を務めておられます。

 この本は経営破綻後わずか2年8カ月で東京証券取引所に再上場を果たしたJAL(日本航空)再生の経緯をまとめたものです。JALが再生計画を上回るスピードで急激に再生したことはよく知られていますが、その裏側にどのような苦労があったのかはあまり知られていないのではないでしょうか。この本を読めばJAL再生の経緯を詳しく知ることができます。

 再生をした要因にはいろいろなものがありますが、私はこの本を読んでみて、会長として乗り込んだ稲盛和夫さんのフィロソフィの浸透とアメーバ経営の導入が最も大きな貢献をしたのではないか、と感じました。

 稲盛さんはフィロソフィを大切にしますが、なぜ企業には哲学や倫理が必要なのでしょうか。

 それらは社員のとっての「拠りどころ」だからです。

 ”拠りどころ”とは、換言すれば、価値観であり行動規範である。価値観や行動規範が社員間で共有される最大のメリットは、全社員が同じベクトルを持つことによって、会社の隅々まで社員ひとりひとりの力を最大限に発揮してもらうことができるということ、社員が安心して伸び伸びと仕事に打ち込めるとういことにほかならない。
                   
             『JAL再生 高収益企業への転換』 p58より引用


 稲盛さんはJALの組織改革に取り組まれました。掲載されている稲盛さんのインタビューから引用します。

 就任当初、JALで私が感じた違和感は、本社の経営企画というところがどうも中枢で、ここであらゆる企画がなされ、さまざまな指示が出てくるということでした。経営企画にいた人たちが、過去にいた人たちも含めて全組織にいるわけです。
 その人たちは、エリート集団を形成していて、非常に頭がよい。よい学校を出て、JALのなかでもエリートコースを歩んできた人たちでした。非常に丁寧な言葉遣いではあるが、まさに慇懃無礼というか、内心はそうではないということが、顔にも態度にも全部出ているわけです。そして、どちらかというと冷たい。理論ばかり、理屈ばかりです。そんなことで、3万人からの従業員を任せるわけにはいかない、そう感じました。

             『JAL再生 高収益企業への転換』 p146より引用


 このようなエリートの集団に稲盛さんは基礎的な人間教育をされました。

 人間としての倫理観をベースにして、あなたは行動したり、発言したりしているのですかと。していないじゃないですか。ただ理屈ばっかりで人を引っ張っていこうとしても、人は動くわけはありません。そんなことを懇々と話すなかで、ひとりふたりと相槌を打ちはじめました。「なるほど、そうやな」と。

             『JAL再生 高収益企業への転換』 p147より引用


 サービスに対する考え方も大きく変わりました。サービスとは瑕疵さえなければよいのか?という問題です。

 座席のリクライニングを倒す方法が分からなくて、飛行中ずっと座席を直立させたまま過ごした、というお客さまからのクレームがありました。

 かつてのJALなら、説明書に明示されているのに使用方法を理解しなかったお客さまのほうが悪い、という論理がまかり通っていただろうといいます。

 「(前略)しかし、本当にそうなのでしょうか。リクライニングが正常に使えず、直立のまま、ニューヨークから戻っていらしたとすれば、お客さまが300ドルの価値を享受できなかったのは、厳然たる事実ではないでしょうか。お客さまとしても、納得できないのは当然でしょう。
 では、何が悪かったのでしょうか。それは、客室乗務員が『おかしい』と思わなかったということです。リクライニングでリラックスするために、わざわざ300ドルを支払ったのに、ずっと直立で搭乗されている。このことに対して『おかしい』と気づくべきなのです。ちょっとお声をおかけすれば、『これ動かないけれど』と言っていただけたはずです。そこまで徹底しないと、本当のサービスとは言えないのです」

          『JAL再生 高収益企業への転換』 p164より引用

 

 稲盛会長の指導の下、JALは素晴らしい企業に生まれ変わったのだと思います。

 基本的なことを正し、徹底されたという、非常に分かりやすい改革でした。

 みなさまもどうぞご参考になさってください。     

  


 参考文献:『JAL再生 高収益企業への転換』 引頭麻実 (日本経済新聞出版社)
 

  

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『会社の目的は利益じゃない』を読んで

2013年09月18日

 横田英毅さんのご著書『会社の目的は利益じゃない』を拝読いたしました。

 横田さんは1943年生まれ、日本大学理工学部卒業後、カリフォルニアシティカレッジに留学されました。宇治電化学工業、四国車体工業での勤務を経て、1980年トヨタビスタ高知(現ネッツトヨタ南国)発足と同時に副社長に就任されました。1987年に同社代表取締役社長に就任し、2010年からは同社相談役を務められています。1917年より続く西山グループ(総資本600億円)の資本家の一員として、グループ各社の代表取締役も務められています。

 横田さんの経営の考え方は、まさに本書の題名の通りです。
 以前ご紹介しました大久保寛司さんの『二十一世紀残る経営、消える経営』の考え方によく似ています。いずれも経営品質の活動をされているからだと思います。
 
 『二十一世紀残る経営、消える経営』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334110.html

 大変おこがましいですが、当社も売り上げや利益を、目的にも目標にもしておりません。目標はお客様の求める状態をつくることです。
 
 今月開催したお取引先さま説明会において、私は「当社は売上げや利益は目標にしておりません」と説明をいたしました。

 その場では意見や質問は出なかったのですが、一部のお取引先さまが喫煙所で「売上げなんていいんだってさ。じゃーどうすればいいんだよ?」と私のことを揶揄していた・・・・・・と別のお取引先さまが後で教えてくれました(笑)

 社員やお客さまにとっての価値を高めていくことを企業の目的にすることは、一般的にはほとんど納得されていないのです。

 ネッツトヨタ南国の目的とは次のようなものです。
  
 わが社の大切な目的は「全社員を勝利者にする」ことです。「勝利者」の頭に「人生の」という言葉をつけたほうがわかりやすいかもしれません。
 「勝利者」を「成功者」と言い換えてもいいのですが、いろいろ解釈できる「勝利者」という表現のほうが、社員にとって考える余地ができていいだろうと思っています。

 勝利者といっても「全社員」とつけていることからおわかりいただけるように、敗者の上に成り立つ勝利ではありません。要するに、「相対的に勝ち負けになるような価値で競わない」という意味です。では、絶対基準はどこにあるかというと、それは一人ひとりの可能性です。
 一人ひとりがもっている可能性を、人生で最大限に発揮できる―。それができた人こそ、勝利者です。

           『会社の目的は利益じゃない』 p16より引用 


 京セラとJALの経営理念には「全社員の物心両面の幸福を追求」という文言が入っていますが、同じことですね。

 では、横田さんは今後どんな会社にされたいのでしょうか。

 その際に必ずといっていいほど聞かれる質問が、「将来はどんな会社にしたいですか?」というものです。
 私の答えは、「問題を発見し解決だけをしていればよく、問題対処をいっさいしなくていい会社にしたい」というものです。
 解決すべき問題は、常に川上にあります。その問題を解決していないから、川下で問題が表面化します。
 原理原則に照らして本質を見極め、表面化する前の川上にある問題解決に常に取り組むようにすれば、川下で表面化した問題をどうにかしようとする問題対処をしないですむわけです。
 問題の根本を解決する姿が常態化している会社にしたい―これが私の願いです。

            『会社の目的は利益じゃない』 p218より引用


 横田さんの考えははっきりしていますし、それを実現しているネッツトヨタ南国はすごい会社だと思います。

 みなさまもぜひご一読くださいませ。

  


 参考文献:『会社の目的は利益じゃない』 横田英毅 (あさ出版)
 
  

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会社のためか、自分のためか

2013年09月17日

 原田泳幸さんのご著書『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』より引用いたします。

 1~2年でどんどん会社を変わる人はたくさんいます。やはり最低5年、できたら10年は一カ所でやらないと仕事はできないでしょう。特に、部長以上のクラスになると、1つの仕事で5年やることが必要ですよ。
 私が非常に冷徹に人材を切るというのは、その人物がビジネス・アジェンダ(会社のため)で行動しているか、パーソナル・アジェンダで行動しているかという判断によります。それがパーソナル・アジェンダだった時は、絶対にそこでけじめをつけます。やはり、自分個人よりもビジネスを考えて行動しなければいけません。ビジネスを犠牲にして自分のために行動したら許しません。

  『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』p108より引用 


 最近は一般社員だけなく、ある程度の髙い立場にいる人も1~2年で会社を変わることがあるようです。

 若い社員であれば、働き方や人生について私の考え方を改めて説明して納得してもらうことができますが、管理職になるような立場の方は年令も高いので頭が固くなってしまっていて、いくら話をしても考え方は変わりません。

 いったん別の会社に転職した社員が、やはりこちらの方がよかったというので、せっかく戻ってきたのに、些細なことを原因に、また転職してしまうというケースもあります。

 ほとんどの場合、待遇が原因ではなく、会社のやり方についていけない、もっと楽な仕事をしたい、という理由です。

 その証拠に、そういう人が転職したあと、自分の場所を確保して力を発揮し、生き生きと仕事をしているという話は聞いたことがありません。

 仕事が楽で給料も高くて休みも多い、という仕事はありっこないですし、あったとしても特別な能力が必要な仕事です。

 なのに、どうしても隣の芝が青く見えてしまうのです。高所にたって物事を見ることができていません。

 原田さんが指摘しているようにパーソナル・アジェンダで行動しているからではないでしょうか。そのときの自分にとって都合のよいように信念がぶれています。
 
 仕事は人生においては部分に過ぎないかもしれませんが、大きな割合を占めるものですし、適当に流してよいものではないことは確かです。

 私は転職を否定するものではありませんが、うちの社員たちには、いずれの会社にいったとしても会社においては会社のために行動し、自分は会社を通じて社会に価値を生み出すのだ、という信念をもって働いてほしい、と思います。

  


 参考文献:『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』 原田泳幸 (日本経済新聞出版社)
 
  

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仕事はできても人格的に・・・・・・

2013年09月09日

 いま話題のテレビドラマ『半沢直樹』では、自分の利益になることばかりを考える強烈な上司が出ているそうですね。

 参考ブログ:半沢直樹『オレたちバブル入行組』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1321128.html
 
 小倉昌男さんの『小倉昌男の人生と経営』より引用いたします。
 
 仕事はそれなりにできていても、人格的に問題がある場合は、昇進が見送られることもある。たとえば、上司にはペコペコするくせに部下には横柄だったり、自分一人で点数を稼ごうとしたり、責任逃れをしたり、会社の経費や誰かのおごりでタダ酒を飲みたがっていたりする人などに、重要なポストは与えられない。

          『小倉昌男の人生と経営』 p141より引用


 実際にありうることなんでしょうね・・・・・・

 ただ、こういう人は続かないのも事実です。

 他人には分からないようにうまく行動しているつもりでも、隠しおおせるものではありません。長い期間を経ると、性格や仕事の方法などほとんどのことは分かってしまいます。

 P.F.ドラッカーはリーダーについて次のように述べています。

 リーダーをリーダーたらしめるものは肩書ではない。範となることによってである。そして最高の範となることが、ミッションへの貢献を通じて自らを大きな存在にし、自らを尊敬できる存在にすることである。

           『非営利組織の経営』 p211より引用


 管理者でとどまるのか、経営者となるのか、大きな壁があると思います。

 自らを範とできないのであれば、管理者までがせいぜいです。

 範となるということは「がちがちにかたくてまじめ」ということではなくて、豪快な人でも小心者でも神経質な人でも、人格的に尊敬されているかどうかだと思います。

 尊敬されなければ、最終的には人が離れてしまうか、あるいは本人が自滅してしまうか、どちらかになってしまうでしょう。

 マネジメントはスマートでドライなイメージですが、それだけでよいのなら、机の上で勉強さえすればよいということになります。

 「事実(現場)は小説より奇なり」です。

 最終的には人間性が求められる、と思います。 
 
  


 参考文献:
 『小倉昌男の人生と経営』 小倉昌男 (PHP研究所)
 

 『非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 
  

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まずは採算度外視

2013年09月06日

 京セラ創業者の稲盛和夫さんのご著書『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』より引用いたします。

 私は「オーバースペックでもいい、手の切れるようなものを努力を惜しまずつくるということが、まずは開発者にとって必要なことだ」と常々言ってきた。
 まずは、採算を一切度外視して、最高の品質の製品を一個でもいいからつくり上げる。その後、コストを考慮に入れ、どのように量産するかということを検討していく。このような手法をとるべきだと思うのである。
 製品にはつくった人の心が表れる。粗雑な人がつくったものは粗雑なものに、繊細な人がつくったものは繊細なものになる。

            『ゼロからの挑戦』 p66より引用


 開発者は、完璧ですばらしく、手の切れるような製品をつくるべきだ、という文脈のあとに出てくる文章です。

 技術力を発揮してすばらしい製品をつくるためには、まずは採算を考えるべきではない、ということを教えてくだっているものです。

 私はもう一つの読み方をしてみました。

 それは、お客さまからの要求、ニーズには、まずは採算を考えないで、商品、サービスを提供してみる、ということです。

 原材料を選び、製造過程での手間を計算してものをつくるのが、一般的なプロダクトアウトの考え方です。しかし、その方法では、お客さまの求めているものとは違ったものが出来てしまうことがあります。

 そういう順序ではなくて、まずはお客様の求めるものを採算や手間を考えずに作ってみて、お客さまに喜んで頂く、そしてその後からその過程を検討するという方法をとってみるのです。

 ヤマト運輸の小倉昌男さんが「サービスが先、利益は後」とおっしゃったことと同義です。別の言葉でいえば「先感動、後効率」です。

 このように、少し変えるという程度ではなく、考え方の枠組み自体をがらりと変えてしまわなければ、新しい価値は生まれてこないのではないか、と思います。 

  


 参考文献:『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』 稲盛和夫 (PHPビジネス新書)
 

  

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『不格好経営 チームDeNAの挑戦』を読んで

2013年08月28日

 南場智子さんの『不格好経営 チームDeNAの挑戦』を拝読いたしました。
 
 南場さんは新潟市生まれで、津田塾大学卒業後、1986年マッキンゼーアンドカンパニーに入社されました。1990年、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得され、1996年パートナー(役員)に就任、1999年同社を退社して、DeNAを設立、代表取締役に就任されました。
 DeNAは2005年に東証マザーズに上場し、2007年には東証一部に指定替えされています。2011年には病気療養中の夫の看病に力を注ぐため、代表取締役CEOを退任され、現在、代表権のない取締役を務めておられます。

 南場さんは創業当初から有名な経営者でしたので、マスコミの記事などでなんとなく存じておりました。お写真で見る優しそうなお顔の雰囲気と違わず、文章にもユーモアがあります。この本を読んで創業者としての考え方や同社の成り立ちなどがよく分かりました。

 マッキンゼーのご出身だけあって、戦略を策定して、決まったらその実現に全力で取り組んでいくという仕事の進め方です。変化に対応するのが精いっぱいの私の経営とはだいぶ違うと感じました。

 南場さんは「社長の一番大事な仕事は意思決定」と述べています。社長時代、意思決定のための会議に時間の多くを使っていたそうです。

 この意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないということが極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。
 継続討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に一週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。そして、待ち構えていた現場がまた動けなくなり、ほかのさまざまな作業に影響を及ぼしてしまう。こうしたことが、動きの速いこの業界では致命的になることも多い。だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。

             『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p198より引用


 これは私も気を付けていることです。案件がペンディングになったまま1カ月も放置されて自然消滅するようなことがあれば、社員からも信頼を失うことでしょう。

 社員との接点から得られる情報については次のように述べています。

 ここで気をつけるべきは、自分が接している情報が断片的であるという自覚を失わないこと。どうしても直接見聞きしたことに大きく影響を受けるのが人情なので、十分すぎるほど気をつけなければならない。
 
            『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p199より引用


 これはよくあることですね。声の大きい者、社長に直接話を上げてくる者の意見が耳に入りやすいのですが、たいていの場合、自分サイドのことしか主張していません。

 DeNAの競争力の源泉は「人材の質」だと明言されています。

 人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずに、ステージに乗って輝き、④だから辞めない、という要素を果たすことが必要だ。

           『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p200より引用


 このために、採用は「ものすごいド根性」で行っているとのことです。
 南場さんは年間30回の新卒向け会社説明会をすべて自分で行ってきて、社長退任後の現在も取り組み続けているそうです。

 DeNAはなんといっても経営戦略なんですね。
 マッキンゼーのコンサルタント3人での創業ですから、スタート地点が髙いわけで、ここまで来たのは必然かも・・・・・・という感があります。
 苦労話さえもあまり苦労されたように感じられず、すっきり解決した話として読めてしまいます。

 社会に対しての当該事業の問題点について対応策は示されていますが、事業としての社会への影響については言及されていません。社会的な価値というよりも事業の組み立てなのですね。

 昨日のブログで紹介した『二十一世紀残る経営、消える経営』のような顧客価値を追求していく経営とは違うと思います。 

 みなさまもどうぞご一読くださいませ。

  


 参考文献:『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 南場智子 (日本経済新聞出版社)
 

 参考ブログ:
 『二十一世紀残る経営、消える経営』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334110.html

 第32回ビジネス読書会
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334746.html
  

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『二十一世紀残る経営、消える経営』を読んで

2013年08月26日

 大久保寛司さんのご著書『二十一世紀残る経営、消える経営』を拝読いたしました。

 明日行われる第32回ビジネス読書会の課題図書です。選書担当のSさんは、当初二冊の候補を持ってきてくださったのですが「自分をつくった本だ」というふれこみに魅かれ、この本に決めました。読む前から期待は上々です。

 大久保さんは1949年生まれ、横浜市立大学商学部卒業後、1973年日本IBMへ入社、1998年にはCS部長に就任され、IBMを顧客指向体質に変えられたそうです。2000年に退職し、現在は人と経営研究所所長を務めておられます。

 この本は2001年10月10日に初版が発行されており、私の手元にあるのは、この読書会のために購入した新品で、2006年10月15日発行の18刷です。最近の増刷はないようですが、在庫切れにもなっておらず、長く売れ続けている本なのですね。

 大久保さんはIBMの研究所の新入社員向けの研修で次のように述べたそうです。

 「技術があり、設備があり、優秀な人材を有して、素晴らしい商品、サービスを生み出すことができたとしても、無人の孤島でビジネスを行うことはできません。実は企業というものはお客さまの存在があって、はじめて成り立つのです。二十一世紀に企業を存続させていけるかどうかは、お客様に支持され続けることができるかどうか、この一点にかかっています」

           『二十一世紀残る経営、消える経営』 p41より引用


 続きます。

 では、どうしたら支持を受けることができるのか。それは「顧客や市場に対して価値を生み出すこと」だと私は思います。企業の存在意義とは、価値を提供することなのです。

           『二十一世紀残る経営、消える経営』 p41より引用


 では、企業の生み出す価値とはなんでしょうか。
 
 結論から申し上げれば、それは相手にとっての「満足」です。すべてのビジネスの価値は、最終的には受け手に満足を与えられたかどうか、相手が満足したかどうかで決まるのです。顧客の側に立って考えてみれば理解しやすいでしょう。

           『二十一世紀残る経営、消える経営』 p42より引用

 
 大久保さんの述べる顧客満足とは、手段ではないのです。

 お客様の満足を追求することは、目的、すなわち経営そのものなのです。「経営を顧客の視点から見直す」「企業の存在理由は顧客に満足を提供すること」―こうした観点から見るならば、その意味するところは自ずと明らかでしょう。

           『二十一世紀残る経営、消える経営』 p43より引用 
 

 引用が長くなってしまい、恐縮です。
 
 この本にはドラッカーについては一言も出てきませんが、私はドラッカーを感じました。

 初版が発行された2001年といえば、インターネットバブルがはじけ、IT不況と呼ばれたころです。顧客満足を経営の目的にするということはなかなか理解されずらかったのではないかと思います。そのころに出版され、いまだに読まれ続けているところに、この本の本質があります。

 顧客満足という言葉に古さを感じる方がおられると思いますが、12年前の本ですから、基本の考え方や方向性を読んでほしいと思います。
 
 大久保さんの静かで謙虚な文章に逆に並々ならぬ決意を感じます。

 どうぞみなさまもご一読くださいませ。

  


 参考文献:『二十一世紀残る経営、消える経営』 大久保寛司 (中央公論新社)
 
 明日の読書会で参加者のみなさまはどんな読み方をされているでしょうか?忌憚のない意見を期待しています。明朝6時30分にお会いしましょう!(遅刻しないようにします^^)
  

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『リーダーの教科書』を読んで

2013年08月23日

 新将命さんのご著書『リーダーの教科書』を拝読いたしました。

 この本は2008年11月27日に第1刷が発行されています。手元にありますのは2008年12月13日第3刷です。アマゾンで2008年12月20日に発注したという記録がありますから、購入してから約5年間も放っておいたことになります。いまでは中古本でしか手に入らないようです。

 私は本を買いすぎる性癖があり、家には本が山のように積んでありますから、こういうことになってしまいます。人から勧められた本は後回しになる傾向があります。申し訳ないことをしました。

 新さんは1936年東京生まれで、早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソンエンドジョンソン、フィリップスなど外資系企業を渡り歩き、3社で社長職を、1社で副社長職を経験されました。

 かつて新さんの『経営の教科書』というご著書を紹介したことがあります。
 
 参考ブログ:『経営の教科書』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e777098.html

 この本はリーダーを目指す人、リーダーとして活躍している人に、新さんが外資系企業で培ったビジネスの考え方を伝授してくれるものです。

 部下に権限を委譲するときに大切なことは、中間報告を受けることだそうです。それも気まぐれで行うのではなく、何曜日の何時というように、報告する日時を決めておく必要があるそうです。

 さらに、次のような手をうっておくことです。
 
 ちなみに、これも必須事項だが、万が一の緊急事態、突発的なトラブルの場合は、真夜中の二時半でも起こしてくれ、と言っておく。そもそも成功の手柄は部下のもの。責任は上司のもの。これは上司たる者の、任せるときの鉄則である(実際にはできる人はすくない。だからこそ、できる人は大きな人望が得られる)。

          『リーダーの教科書』 p122より引用

 
 会議の方法については、次のような記述がありました。

 まずは目的を明確にし、出席者は誰かをはっきりさせ、始まりと終わりの時間をきちっと決めておく。これが会議の原則である。そして会議が終わったら、遅くても二四時間以内に、この会議における決定事項と、決定ののちのフォローアップアクションは何かということを参加者全員で共有する。誰が、何を、いつまでに行うか。これをやるだけで、会議の品質は圧倒的に改善される。会議のための会議は姿を消す。

           『リーダーの教科書』 p163より引用

 
 うちの会社でも、みんなが遠慮し合って、大切な事項の話し合いが回避されてしまったり、決定事項の記録や実行があいまいになっていることがあります。その結果、忙しいときに、現場で突然激しい議論が発生してしまいます。

 一つの話題がレッスンという形で二、三ページにまとめられているので、とても読みやすいです。

 どうぞ参考になさってください。 

  


 参考文献:『リーダーの教科書』 新将命 (ランダムハウス講談社)
 

  

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『経営の小さなヒント』を読んで

2013年08月08日

 浅野喜起さんのご著書『経営の小さなヒント』を拝読いたしました。

 この本は昭和62(1987)年2月に初版が発行されています。いまでは中古でしか手に入らないようです。ある先生が推薦されていたのを見て、中古品をとりせて読んでみました。

 著者の浅野さんは1917年中国生まれ、大阪商科大学を卒業後、日本興業銀行経営研究部長を経て、日本経営システムの社長を務められました。ウィキペディアによれば、2008年にお亡くなりになっているようです。

 浅野さんが経営コンサルタントとして見聞きされたさまざまな企業の社長の生きざまが紹介されています。

 今ではほとんど聞かれなくなった戦争体験や戦前戦後の話が出てきて、懐かしい感じがします。
 「懐かしい」といっても私は昭和42年生まれですから、戦争の体験はまったくありませんし、戦争を肯定する意味ではありません。
 子供のころ、私のおじいさん、おばあさんが苦しかった戦時中や戦前戦後の話をよくしてくれたので、そのことがよみがえってきて「懐かしい」ように感じたのです。
 今の子供たちは戦争の話を体験者から直接聞くことは難しくなっていますから、私の体験は貴重です。もしも戦時中のことを知りたければ、このような昔の本を読むしかないでしょう。
 何人かの経営者の人生が紹介されていますが、日本全薬工業創業者の福井貞一さんの人生は、それを語るだけで映画になるように思いました。

 古くても新しくても、原理は変わることはないのだと感じることができました。
 
 たいせつなのは外的条件ではない。ものではなくて心の条件である。これまでの企業に欠けていたのは社員の力を十分に生かしきるという姿勢、中高年層の心の条件への配慮である。表街道からはずれた中高年層の胸をぐさりと刺すのは、社内の人の冷たい目である。

       『経営の小さなヒント』 p44 より引用


 仕事ができないのは仕事の話であって、人間性とは別のことです。苦手な部分が多い人でも、なんとかできるところを探して、そこを伸ばしてあげるようにしなくてはいけない、と感じます。

 並はずれの交際費をつかい、せっせと運動をして甘い注文をとるということは、たとえ一時的に利益をもたらしても、企業体質に大きな禍根を残すおそれがある。「何事によらず、ぜいたくなくらしはいのちを縮める」

      『経営の小さなヒント』 p97 より引用
 

 私は会合があっても懇親会の費用はオフィシャルなものしか交際費にしませんし、自社の店舗を使う場合や二次会の費用は全部自費です。業種にもよっても違いがあるのでしょうが、交際費は社長の裁量によることになり、際限がなくなるので気をつけなくてはなりません。

 会社の規模拡大について浅野さんは次のように述べています。

 会社はそれぞれ社会的使命を持っているが、それはつきつめて考えればつぶれないということに尽きる。規模の大小、業種のいかんを問わず、会社の基本的な社会的使命はつぶれないということだといってよい。

 (中略)
 
 ところが、現実の会社はつねにつぶれる条件を拡大しながら発展している。会社が発展するということ、大きくなるということは、つぶれる条件を拡大していることに外ならない。

      『経営の小さなヒント』 p177 より引用


 勉強会や異業種交流会に出ると、威勢のいい経営者がおられて競い合っているような面も見られますが、比較する必要はないと思います。大切なことは規模ではありません。自分が自分に対していかに確からしさをもって経営するかです。

 永続するということ、つぶれないということのためには、量より質を、いたずらに規模の大を追うよりは、すぐれた社風の形成を第一義とすべきである。大切なのは経営の姿勢である。

       『経営の小さなヒント』 p178 より引用


 経営者のみなさまはご参考になさってください。 
       
  


 参考文献:『経営の小さなヒント』 浅野喜起 (日本経済新聞社)
 

  

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第31回ビジネス読書会

2013年07月25日

 今朝は第31回ビジネス読書会を開催しました。11名の方にご参加いただきました。 

 申し訳ございませんでした。本日、朝食に遅刻しました。

 課題図書は原マサヒコさんの『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』です。Sさんが選んでくださいました。

 以下のような感想が出されました。

 整理整頓が大切。
 多能工・・・言われたことだけをやるのではなく付随したことをやる。勉強会をやっていろいろなことを吸収することも多能工につながる。
 なぜ五回?トラブルを解決する。改革を継続していく。会社でも回して読ませたい本だ。
 
 分かりやすくていい本だった。
 5S・・・自分のデスクが乱雑になっている。
 巧遅より拙速
 多能工・・・いろいろなことができる人が必要、あまりにも専門化させると効率が悪くなる。守れて攻めれる選手をつくらねばならない。

 なぜ五回?品質の問題が出るといつもこれがでてくる。人を憎まず問題を詰めていく。
 ドラッカーの『経営者の条件』に、問題が起こったら特殊な問題として見るのではなく、原理原則に求めなくてはいけないという話が出てくる。
 ものを探している時間は仕事ではない。
 拙くても早い仕事が求められている。何かに対し起こす行動が必要である。
 多能工・・・つくるだけではなく実際に売るところまで首を突っ込んでいく。
 非常識な目標を設定する。

 カイゼンを実施している工場で見学をしたら、製品ができるまで27秒だった。
 自分が稼働しているときはいつか?と考えた。会社で無駄な時間を消費することもある。
 カイゼンに向けての徹底的なこだわりが必要だ。
 非常識な目標を設定する。大胆なことをやってみたい。
 この本のストーリーは最初に予想できたが、最後にはうるっと来てしまった。

 印象の残る本だった。ストーリーがあるのは記憶に残りやすい。会社に入った時に挨拶をしてくれる会社はいい会社。
 5Sが徹底していると、段ボールも入れさせ世内容になっている。
 海外で5Sを教えることができない。日本人独特の能力ではないかと思った。
 非常識な目標・・・・・・目標の立て方が難しい。発想を変えるにはいいと思った。

 会社でもカイゼンを取り入れている。奥が深いと感じている。
 5S、なぜ五回、視える化をやっている。工場が清潔でないとお客さまにつたわってしまう。
 会社の目標の第一は整理整頓である。探すことも無駄、移動する距離も無駄。
 タイでも5Sが徹底されている工場がある。文化を超えた共通意識ができる。
 なぜ五回?を詰めると、受けたほうは怒られていると思ってしまうことがある。
 この本は製造現場ではなくて営業にフォーカスしていて興味深い。
 
 またカイゼンの話か?と思った。
 自分も気が付かないところでカイゼンをしている。
 なぜ5回ではなく、お客さまから5回怒られたこともある。
 非常識な目標・・・・どうして人が採用できないのだろう。会社の条件が悪いと自分で思い込んでいるだけだった。視点を変えたら成果があがった。

 題名が分かりずらい。カイゼンを業界で知らない人はいないのではないか。
 動くのと働くのは違う。 
 カイゼンは誰のためにするのか?お客さまにとっていいことは何なのか、と考える。
 期待以上のものをだすこと。
 ワープロソフトの機能でも無駄なものがある。本当にお客さまが期待しているものは何かと考える。
 最終的には自分のためにもなるのではないか?分かり易く勉強になった。

 別の読書会で課題だった本。昔はぴんと来なかった。
 シンプルにまとまっている。
 5S・・・帰宅するときにデスクの上に何も残してはいけない。整理状況をチェックする部署がある。写真を撮って結果が張り出されてしまう。
 多能工・・・仕事ができる人は多能工である場合が多い。いまの自分はいろいろな実務をこなしている。誰かに何かがあってもサポートできるようにしていたい。多能工が増えるほど、一般社員でも見える仕組みをつくりたい。

 巧遅拙速・・・改めて言葉の意味を知った。相場のものは特にそうだ。今できることだったら、今やるという世界だった。
 安全については結局はトップの意識だ、と言われたことがある。
 どんなに教育を受けていても、その場のトップ(社長)が意識を持っていないと、カイゼンは進まない。一番は社長の意識である。会議に出てくるのは担当者であるが、最終的にはトップである。

 前職で「5S」「5なぜ」は言われ続けていた。仕事をする上での基本だと思った。
 5Sはやらされ感はあるが、意味するところを知ったら、もっとできるのではないか。
 しつけは仕組みを作ること。
 カイゼンへのこだわり。やり続けて身についてくる。意図するところを知ることで良さが分かる。


 この本は『もしドラ』のようにストーリー仕立てになっているので読みやすく、かつカイゼンについて分かりやすく説明されているので、みなさんの評価は高かったです。

 第32回ビジネス読書会は、8月27日火曜日午前6時30分より行います。課題図書は大久保寛司著『二十一世紀残る経営、消える経営』(中央公論新社)です。

 ご参加お待ちしております。

 ありがとうございます。
 
  


 参考文献:
 『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』
                                原マサヒコ (扶桑社)

 
 
 第32回ビジネス読書会 課題図書:
 『二十一世紀残る経営、消える経営』 大久保寛司 (中央公論新社)

 

 いままでの課題図書
 平成23年
 1月 『社長の教科書』 小宮一慶 (ダイヤモンド社)
 2月 『あたらしい戦略の教科書』 酒井穣 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 3月 『挫折力』 富山和彦 (PHPビジネス新書)
 4月 それぞれの好きな本の持ち寄り
 5月 『あなたがいなくても勝手に稼ぐチームの作り方』 岡田充弘 (明日香出版社)
 6月 『成長するものだけが生き残る』 上原春男 (サンマーク出版)
 7月 『「原因」と「結果」の法則』 ジェームズ・アレン (サンマーク出版)
      『君に成功を贈る』 中村天風 (日本経営合理化協会)の2冊
 8月 『成功は一日で捨て去れ』 柳井正 (新潮社)
 9月 『成功の法則92ヶ条』 三木谷浩史 (幻冬舎)
 10月 『小倉昌男 経営学』 小倉昌男 (日経BP社)
 11月 『はじめての課長の教科書』 酒井穣 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 12月 『道をひらく』 松下幸之助 (PHP研究所)
 平成24年
 1月 『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』 稲盛和夫 (日経BP社)
 2月 『経綸のとき 近代日本の財政を築いた逸材』 尾崎護 (文春文庫)
 3月 『希望のしくみ』 養老 孟司  アルボムッレ・スマナサーラ (宝島社)
 4月 『その他大勢から抜け出す仕事術』 堀場雅夫 (知的生き方文庫)
 5月 『夢を叶える夢を見た』 内館牧子 (幻冬舎文庫)
 6月 『働く君に贈る25の言葉』 佐々木常夫 (WAVE出版)
 7月 『置かれた場所で咲きなさい』 渡辺和子 (幻冬舎)
 8月 『成毛眞のマーケティング辻説法』 成毛眞 (日本経済新聞社)
 9月 『いのち輝くホスピタリティ』 望月智行 (文屋) 
 10月 『こうして会社を強くする』 稲盛和夫 (PHPビジネス新書)
 11月 『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』 柳川範之 (日本経済新聞出版社)
 12月 『こうして会社を強くする』(稲盛和夫著、PHPビジネス新書)
 平成25年
 1月 『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』
                田村耕太郎 (マガジンハウス)
 2月 『スモールイズビューティフル』 E・F・シューマッハー(著) (講談社学術文庫)
 3月 『2022―これから10年、活躍できる人の条件』 神田昌典 (PHPビジネス新書)
 4月 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』アービンジャー・インスティテュート(著) (大和書房)
 5月 『営業マンは断ることを覚えなさい』 石原明 (三笠書房 知的生き方文庫)
 6月 『年収が10倍になる!魔法の自己紹介』 松野恵介 (フォレスト出版)
 7月 『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』
               原マサヒコ (扶桑社)
 8月 『二十一世紀残る経営、消える経営』 大久保寛司 (中央公論新社)
 9月 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
               岩崎夏海 (ダイヤモンド社)
 10月 『合理性を越えた先にイノベーションは生まれる』
               金子智朗 (クロスメディア・パブリッシング)

  

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『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』を読んで

2013年07月19日

 原マサヒコさんのご著書『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』を拝読いたしました。
 
 原さんは1975年神奈川県生まれ、第19代総理大臣、原敬の子孫にあたる方だそうです。高校卒業後、自動車整備士資格を取得、トヨタ自動車に入社され、ディーラーメカニックとして5000台以上の自動車整備を経験されました。1999年、23歳でトヨタ技能オリンピックで優勝し、最年少記録を樹立されました。現在はグループ企業でマーケティング責任者として従事されているとのことです。

 余談ですが、原敬といえば平民宰相として有名ですね。小学校何年生の頃だったか忘れましたが、偉人伝の読書感想の宿題があり、友達が絶対書かないものを選ぼうと思って、図書館で原敬の本を探し出して読んだのを覚えています。そのときには平民宰相の意味は分かりましたが、政策はほとんど理解できていなかったです。

 この本は7月25日の第31回ビジネス読書会の課題図書です。会員のSさんが選んでくださいました。題名だけ見ると、個人の仕事の仕方やセルフマネージメントに関する本かな、と思ってしまいますが、内容はトヨタ式カイゼンを教えてくれるものです。(題名と内容があっていない気がするのは私だけでしょうか・・・・・・)

 『もしドラ』よろしくストーリー仕立てになっているので、すらすらと読めます。私はカイゼンについてはあまりよく知らなかったので、カイゼンについて知るよいきっかけになりました。

 この本で紹介されているカイゼンのポイントは次の七つです。(まだ読んでいない方にはネタばれになってしまいます。)
 
 ① 5S
 ② 巧遅より拙速
 ③ 多能工
 ④ 動くのではない、働くのだ
 ⑤ モグラたたきをしてはいけない
 ⑥ 視える化
 ⑦ 非常識な目標を設定する


 この中で私は②と⑦の考え方が好きです。

 「巧遅より拙速」とは、時間をかけて巧みなものを完成させるよりも、まずはすぐに動いてみるということです。すぐやるだけ、といいますが、すぐやってくれることはすごいことだと思います。

 非常識な目標を設定することは、ものの見方を大きく変えます。
 売上高を10%アップするという目標でしたら「いまのやり方のまま量を増やして徹底的にやります」ということになってしまいますが、売り上げを10倍にするという目標になると、根本的に考え方を変えなくてはならないのです。
 どう変えるかを考えているなかで、まったく違う視点やいままで見えなかった部分が見えてくるのだろうと思います。

 みなさまもどうぞご参考になさってください。

  


 参考文献:『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』
                   原マサヒコ著 (扶桑社)
 
  

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責任を任せる

2013年07月16日

 國貞克則さんの『究極のドラッカー』より引用いたします。

 「人材こそわれわれの最大の資産だ」と言う経営者は多いですが、それを本当に実践できている会社は少ないのが現実だとしてドラッカーは次のような事実を指摘します。実は人材は活用されておらず、人の可能性は埋もれたままで仕事に活かされていない。そしてそのことをほとんどのマネジャーが知っている。
 人材が活用されていない一つの理由はマネジャーが部下に責任を任せていないことです。マネジャーが部下に責任を任せることができない理由は、マネジャーが権力と権威を区別できておらず、部下に責任を任せると自分たちの権威が失われるとマネジャーが勘違いしているからだろうとドラッカーは言います。
 
            『究極のドラッカー』 p145-146より引用


 ここではマネジャーのことが書かれていますが、マネジャーに限らず社長でも同じことであると考えてよいでしょう。

 社長のほとんどの仕事は部下に任せることが可能だと思いますが「この仕事だけは自分がやらなくては!」という思いが、それを止めてしまいます。

 そこには「この仕事まで渡ししてしまったら自分の権威がなくなる」という思いも少しあるのではないかと考えます。


 マネジャーは権力をもっていません。ただ責任を負っているだけです。その責任を果たすという目的のために権威を必要とするのです。そして、マネジャーの権威は自らの責任を果たす、つまり成果をあげることによってのみ維持されるのだとドラッカーは言います。

            『究極のドラッカー』 p146より引用

 
 ここも社長に置き換えて考えると、社長は責任を負っているだけなので、社全体として外部に成果をあげることによってのみ、社長の権威も維持される、ということになります。

 社長はどうすべきか?と気負ってしまいますが、成果をあげることでしか認められることはない、と割り切るしかありません。 

   


 参考文献:『究極のドラッカー』 國貞克則 (角川oneテーマ21)
 
  

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