『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』を読んで

2014年01月20日

 丹羽宇一郎さんのご著書『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』を拝読いたしました。

 丹羽さんは1939年、愛知県生まれ、62年名古屋大学法学部を卒業され、伊藤忠商事に入社されました。98年から社長を、04年からは会長を務められました。10年6月には菅内閣から任命され民間出身としては初めて中華人民共和国駐箚特命全権大使を務め、12年12月に退官されました。

 丹羽さんというと、中国大使をされていたときのゴタゴタだけが印象に残っています。

 この本は大企業の中間管理職向けにリーダー論を説いたもので、その先には企業内での出世や成功というものが見え隠れします。自分の豪快さを自慢しているように読める部分もあって、丹羽さんが大企業に属していた人なんだ、ということが分かります。

 私は丹羽さんが大使に任命されたとき、かなり期待をしていました。商売をやっていた人なら国交においても良好な関係をつくってくれるのではないか、という思いでした。

 しかし、その後の仕事ぶりや、この本を読んでみるにつれ、商売上の利害関係のある人が厳しい緊張関係にある国において国益を担う大切な役目を受けたことは正しかったのかどうか、疑問を感じています。

 本書には中国のことも少し触れられていますが、本題はビジネスにおけるリーダー論です。気になった部分をご紹介します。

 丹羽さんは日本経済が人を大切にしていないことを問題視しています。

 しかし、繰り返しになりますが、人は会社にとって最も重要な資産です。彼らの雇用、生活をいかに安定させるか。企業はまずこれを考えなくてはならないのです。もちろん部課長クラスだって、そういう認識でいなければなりません。今の日本の企業は、この視点が決定的に欠けてしまっている。どこかおかしいと私は思っています。
 また、雇用の安定といっても、毎年給料をを上げることを意味しているのではありません。給料の多寡より、職の安定のほうがはるかに重要です。

   『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 p19より引用  


 この本の題名にもなっている、リーダーの心構えについては次のように述べています。

 リーダーたるもの、私心を捨てて努力あるのみです。皆が笑っているときには「ちょっと待てよ」と思わなくてはなりません。皆が泣いているときには、平常心で穏やかな顔でなくてはなりません。仕事がうまくいかなくて周りが気落ちしているときこそ、リーダーは明るく振る舞わなくてはならないのです。「俺は、君たちがいるから大丈夫だと思っている」と励ましの言葉を掛けてやる。これは本当を言うと、苦しいことです。自分だってしょんぼりしているのです。誰よりも泣きたい気持ちでいるのです。そこをぐっと抑えて、率先垂範で逆境に耐え安心できる顔を見せなくてはなりません。リーダーの逆境に対する強さこそ、闇を照らす一筋の光でしょう。

   『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 p197より引用


 リーダーが明るいことは大前提ですね。仕事ができるということ以前に、人間としてしっかりしていて信頼に足る人物でなくてはなりません。私はまだまだですが、そういう人を師として仰ぎたいです。
 
 個人の乗用車はカローラに乗っていたとか、接待でも一万円以上のワインは断ったとか、自分の清貧さをアピールをされている部分もあります。これだけの地位に上り詰めた方の態度としては、それはそれは立派なことですが、私が丹羽さんに期待していたことはそういうことではありませんでした。

 ご興味のある方はご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』 丹羽宇一郎 (朝日新書)
 


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