『マンションを今すぐ買いなさい』を読んで

2014年01月15日

 沖有人さんのご著書『このチャンスを逃すと10年待ち!マンションを今すぐ買いなさい』を拝読しました。

 沖さんは1988年慶應義塾大学経済学部を卒業され、コンサルティング会社、不動産マーケティング会社を経て、1998年アトラクターズ・ラボ株式会社を設立、代表取締役に就任されました。同社は住宅分野におけるデータベースを分析し法人向けにコンサルティングをされているそうです。

 以前『マイホームは買うな!』という本をご紹介しました。

 『マイホームは買うな!』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1396485.html

 「買うな」とか「買いなさい」とか、いったいどっちなんでしょうね・・・・・・
 
 不動産については極端な題名の本が多いですね。私は不動産は保有しておりませが、市場の動向を知るのが好きで興味本位で読んでいます。学ぶのは楽しいです。

 不動産のいろいろな本を読みましたが、共通していることが一つあります。
 どんな方法で不動産を買うにしても、キャピタルゲインとインカムゲインの合計を最大にできるような買い方をアドバイスしている、ということです。

 それを達成するためにさまざまな手段があり、人によって、競売物件だったり、新築マンションだったり、中古ワンルームマンションだったりするのです。

 あとは読者の判断です。たくさんの本を読んだほうが全体像がつかめていいと思います。

 この本のおすすめは、ひと言でいってしまえば、自宅用に値下がりのしにくい都心の新築マンションを買いなさい、ということです。

 沖さんによれば、日本で資産形成をするなら、不動産が一番いいそうです。

 確かに株式や投資信託でもいいかもしれませんが、株式や投資信託を買うのに銀行がお金を貸してくれるわけでありません。普通のサラリーマンが何千万というお金を借りられるのはマイホームしかありません。しかも住宅ローンは金利が低く、税制上の優遇もあります。

           『マンションを今すぐ買いなさい』 p47より引用
      

 新築マンションは中古マンションに比べて割高だと考えますが、これから都心のマンションを購入する場合はそうでもないようです。

 なお、同じマンションが新築から中古になると、東京23区では平均5%安くなると言いました。それなら、新築で売り出された時に買うのではなく1年くらいして中古になってから買えばいいのではないかと思われるでしょう。しかし、中古マンションを買うときには通常、仲介会社に対して成約価格の3%を仲介手数料として支払います。したがって、新築時から5%安くなっていても仲介手数料の分を考えれば2%しか安くならないのでそれほど大差ないといえます。これから資産インフレが進むと値下がりは5%よりもっと小さくなり、そうであれば東京都心部で新築マンションを買ってもいいのではないかという考えが成り立つわけです。

            『マンションを今すぐ買いなさい』 p111より引用


 資産インフレが進んでいくことを想定して、少し値段が高くても良いマンションを買った方がいい、というのがこの本の基本的な考え方です。

 具体的なマンション名が紹介されていますし、東京の地図もはさまれていて分かりやすいです。

 マンション購入をご検討されている方やご興味のある方はどうぞごご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『このチャンスを逃すと10年待ち!マンションを今すぐ買いなさい』
 
  

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『マイホームは買うな!』を読んで

2013年11月28日

 藤山勇司さんのご著書『マイホームは買うな!』を拝読いたしました。

 藤山さんは1963年、広島県生まれ、大学卒業後、商社に入社、飼料畜産部を経て建設不動産部に移動、そこで競売の知識を蓄積し、サラリーマン兼業で大家さん業をスタートさせたそうです。2003年、専業大家さんになり、現在は10棟94室を所有され、元祖サラリーマン大家さんとしてテレビなどのメディアでも活躍されているそうです。

 この本は安易に住宅ローンを組んで、新築住宅を建てることに警鐘を鳴らすものです。

 一つの話題がほぼ1ページに収まる短いコラムになっているので読みやすいですが、一つ一つの話はけっこう怖いことが書いてあります。

 マイホームを購入する際の重要な判断基準は住宅ローンが終了するまでの資産価値だそうです。

 それは立地が大きく関係してきます。

 郊外のロードサイド店は1998年に成立した大店立地法(大規模小売店舗立地法)の成立によるものです。大店立地法は500㎡以下に認められていた店舗の制限面積を撤廃しました。結果、国道沿いに大型店舗の出店ラッシュ!その煽りを受けたのは駅前の商店街、真新しい店舗に客を取られ、シャッターを閉める店舗が続出しました。
 そして現在、出店から十数年が経過しどうなったか。ロードサイド店の多くは勢いをなくしています。新たにアウトレットモールに集約して、新たな戦いに臨んでいるものの、力強さは感じません。そもそも、人の流れとは山や川や海などの地形から影響を受けるもの。人工的に作り上げた流れは常に呼び込む努力をし続けなければなりません。
 日本人は新し物好き。当初は訪れても、古臭くなるとそっぽを向きます。一方、駅前はそもそも人の集まりやすい場所。時間の経過とともに、勝負は明らかです。

          『マイホームは買うな!』 p80より引用


 藤山さんは今後コンパクトシティが増えていくことを見据え、駅前の復活を予想しておられるようですね。

 読者への具体的な提案としては、賃貸不動産物件を取得し、給与以外の所得を得るということを進めておられます。

 それも、新しいものを購入するのではなく、地方の木造戸建て住宅の競売物件を狙うのだそうです。

 競売物件はさまざまな問題を含んでいそうですが、その対処法なども紹介されています。

 詳しくはこの本を読んでみてください。
 
 私は不動産のことについては素人なのですが、この本を読んで少し事情が分かりました。実際にご自分で大家さん業をされている方の生々しい声です。

 どうぞご参考になさってください。

   


 参考文献:『マイホームは買うな』 藤山勇司 (ぱる出版)
 

  

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『日本の不動産は黄金期に突入する!』を読んで

2013年11月14日

 大谷洋司さんのご著書『日本の不動産は黄金期に突入する!』を拝読いたしました。

 大谷さんは1987年法政大学卒業後、コスモ証券、HSBC証券、シュローダー証券、クレディ・スイス証券勤務を経て、2010年、ドイツ証券に入社、マネージング・ディレクター兼、不動産(含むJ-REIT)・住宅・建設担当の株式アナリストとして活躍されています。

 この本は、アベノミクスの超金融緩和政策に後押しされた日本の不動産市場が大復活していくという著者の持論を展開したものです。

 最も印象に残ったことは、北陸新幹線が金沢まで延伸される効果についてです。(p113-p115を参照)

 そのヒントは日本の都市人口ベスト15の変遷にありました。

 明治9年(1876年)の都市人口のベスト15を北から並べると次のようになります。

 函館、仙台、東京、横浜、富山、金沢、名古屋、京都、大阪、和歌山、神戸、徳島、広島、熊本、鹿児島

 以上の15都市のうち、今でもベスト15に残っているのは次の8都市です。

 仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島

 ランク外になってしまった7都市に代わって政令指定都市になったのは次の12都市です。
 
 札幌、さいたま、千葉、相模原、川崎、新潟、静岡、浜松、堺、岡山、北九州、福岡

 政令指定都市は札幌を除いてすべて新幹線でつながっています。新潟市が日本海側で唯一政令指定都市になったのも、上越新幹線が整備されて大勢の人で賑わい人口が増えたため、というわけです。
 大谷さんは、この理由と、日本海側のメタンハイドレードの産出可能性から、将来、富山市、金沢市が再び人口トップ15に入る可能性がある、と述べています。(p121)

 なんだか夢のある話ですね。北陸新幹線の沿線に住むものとしては興味深いです。新幹線の効果がそんなにあるのなら、わが町も発展する可能性があるというものです。

 この話を友人にしたてみたら、海上交通の盛んだったころと、いまとでは状況が違うのではないか?と指摘されました。

 Wikipediaで調べてみましたら、明治9年前後の日本の総人口は3400万人程度で、金沢市は10万人台、富山市は4万人台だったようです。(上田市はたったの6000人台です。)いまとは比べようのないくらい人がいなかったのです。その程度の水準から戦前戦後期などを経ての人口増加はあり得たわけですが、現在の水準から爆発的に人口が増加するのは難しいかも・・・・・・ですね。

 具体的な不動産の投資についても述べられています。
 自宅マンションを購入する際には次のことをチェックしたほうがよいそうです。

 それは、購入しようとしているマンションが「二重床・二重天井」になっているかどうかである。そうでない物件は、見送ったほうが良いということだ。二重床・二重天井になっていない物件は、その他の項目においても性能が劣っている可能性が高いからだ。もう1つ挙げると、サッシの性能である。最低でも「ペアガラス」を使ったサッシは必須だ。

           『日本の不動産は黄金期に突入する!』 p207より引用


 日本の不動産市場の将来について、大胆な構図が描かれていて、楽しく読めました。

 みなさまもどうぞご参考になさってください。  

  


 参考文献:『日本の不動産は黄金期に突入する!』 大谷洋司 (かんき出版)
 

  

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『新興アジアでお金持ち』を読んで

2013年05月28日

 岡村聡さんのご著書『中国・インドの次に来る大チャンス 新興アジアでお金持ち』を拝読いたしました。

 岡村さんは1979年大阪生まれ、東京大学を卒業後、東京大学大学院を修了、マッキンゼーアンドカンパニーを経て、国内大手プライベート・エクイティファンド、アドバンテッジパートナーズに勤務されました。2010年に奥様と二人で資産運用のアドバイスを行うS&S investmentsを立ち上げ、セミナー、コラム執筆、コンサルティング、資産運用アドバイスなどを行っているそうです。

 この本はアジアの中でも、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナムの六カ国に絞って、株式投資、不動産投資、移住、仕事などについて初歩的な解説してくれるものです。

 岡村さん自身も東南アジアの活気に触発され、初めてシンガポールを訪れてから2年で現地法人を設立したのだそうです。

 紹介されている六カ国をGDP規模の大きい順に並べますと、次のようになります。(1ドル=90円の換算だそうです。)
 
 インドネシア 77兆円
 タイ 32兆円
 マレーシア 26兆円
 シンガポール 24兆円
 フィリピン 20兆円
 ベトナム 11兆円

       『新興アジアでお金持ち』 p19より引用


 このページには日本のGDPが530兆円として紹介されていますが、日本と比較するとアジア各国はまだまだこれからという感じがしますね。

 最近はアジアへお子さんを留学させる過程も増えているのだそうです。

 シンガポールのインターナショナル・スクールの学費は月15万~20万円と、東京都内のインターナショナル・スクールよりも安いレベルで、日本には拠点を持たない欧米の有名スクールの分校もシンガポールにたくさんあります。幼少期から英語はもちろん、中国語のカリキュラムが充実していることも魅力です。
 こうした優れた教育環境に魅かれて、母子だけで留学するケースが増えてきています。私の周りでも、お父さんだけ日本にいて教育費を稼ぎ、お母さんとお子さんがシンガポールで暮らす家族も増えてきています。

        『新興アジアでお金持ち』 p169より引用


 信州から東京へ母子留学された方は存じておりますが、いまや日本からアジアへの母子留学の時代なんですね!これは知りませんでした。教育にお金をかけられる人はますますお金をかけるようになっているのですね。

 また、気になったことは、アジアの人材が成長しているために、日本人駐在員の必要性が問われはじめているということです。

 一方、今後は日本人駐在員の必要性が薄れていくのではないかと多くの人が指摘していたことは気になりました。5~10年後には、家族の生活費の補助も含めると現地の人材の10倍以上もコストがかかる日本人駐在員を配置することは、管理職を除けばなくなっているだろうと見ている人もいました。

         『新興アジアお金持ち』 p193より引用


 ここから数年で日本とアジアの関係もますます深まるだろうと思います。アジアの状況を知っておくことは必須事項です。

 この本はアジアの視察の案内から始まっていて、初歩的な内容です。アジアに足を踏み入れたことのない人はご参考になさってください。

  


 参考文献:『中国・インドの次に来る大チャンス 新興アジアでお金持ち』
               岡村聡 (講談社)
 
  

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『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』を読んで

2013年04月10日

 橘玲さんのご著書『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』を拝読いたしました。

 橘玲さんは経済小説や投資術などたくさんの本を書かれているベストセラー作家です。

 我が国は、アベノミクスと呼ばれる新しい経済・金融政策の発表によって、株高と円安が進行しています。ただ、その後の長期的な経済の行方についてはさまざまな考え方があります。

 橘さんは将来について三つの可能性を示しています。

 ①楽観シナリオ アベノミクスが成功して高度経済成長がふたたび始まる
 ②金融緩和は意味がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
 ③国債価格の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る


 もしも③のシナリオに進んでしまった場合には次のような段階を踏んでいくだろうといいます。

 第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
 第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
 最終ステージ (国家破産)日本政府が国債のデフォルトを宣告し、IMFの管理下に入る


 この本は、このような状態になってしまった場合に、どうすれば資産を守ることができるかを具体的に教えてくれる本です。

 もしも、上記の第2ステージに入ってしまった場合には、国債ベアファンド、外貨預金、物価連動国債ファンドの三つの金融商品で財政破綻に備えよ、というのが一つの結論です。

 その他、株価の急で大きな変動に対しての対策なども紹介されています。(当然ですが、経済には強い継続性(粘性)がありますから、いまから半年後にデフォルトするなどという急なことはないそうです。)

 どの方法にもリスクがあり、メリットもデメリットもあります。少し勉強をしないと実際の投資は難しいかもしれませんね。

 私は昔金融機関に勤めていたことがあり、こういう本は興味深く読んでいます。

 最近のキプロスの預金封鎖のニュースを聞くと、EUにおいて予想されていたことが実際に起こってしまって、ドラッカー的にいうと「すでにおこった未来」だったのだ、という感をぬぐえません。

 我が国の先行きについてはよい方向に向かうことに期待を寄せています。 

  


 参考文献:『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』 橘玲 (ダイヤモンド社)
 

 参考ブログ:『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e877932.html
  

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『損しない投資信託』を読んで

2013年01月24日

 中桐啓貴さんの『損しない投資信託』を拝読いたしました。

 中桐さんは1973年兵庫県生まれ、97年甲南大学卒業後、山一證券、メリルリンチ日本証券を経て、ブランダイズ大学でMBAを取得、2006年にガイアを設立し、ファイナンシャルプランナーとしてご活躍されています。

 この本は、金融機関の言いなりにならないで自分で投資信託を見極める方法を教えてくれるものです。

 冒頭で紹介されている驚きのエピソードです。
 瀬戸内海の小豆島は人口31,000人の島ですが、この島だけでグロソブ(グローバルソブリンファンド)の投資総額が100億円を超えたことがあったのだそうです。島民の30人に一人が購入し、一人あたりの平均投資金額は1000万円にもなるそうです。ある金融機関が力をいれて販売したためだそうですが、リーマンショック後は基準価格の下落に困っている方がおられるそうです。

 もう一つ驚いたことは、銀行で販売される投資信託の純資産残高が証券会社のそれと肩を並べているということです。2011年の販売金額ベースでは、ETFを除くと、証券会社の21.4兆円に対し、銀行は22.3兆円と上回っています。

 長い間、預金金利が低下していたため、銀行にお金を預けている人が新たな投資先を求めて、投資信託に向かっていることが分かります。

 特に毎月分配型という毎月分配金をもらえる投資信託が伸びているそうです。小豆島のグロソブもそのタイプです。
 この投資信託には利益を出していないのに分配しているものや利益以上の分配をしている者があり、気をつけなくてはなりません。一般的な分配金とは違い「特別分配金」と呼ばれるものです。紛らわしいということで2012年6月からは「元本払戻金」と名前が変わりました。

 これは元本を払い戻しているのと同じですので、タコが自分の足を食べてしまっているようなものです。目先はおいしい話に見えても、長期投資には向いていません。

 中桐さんによれば、このような仕組みを理解せずに、大金を投資信託に預けてしまっている人が多いそうです。

 投資信託の見直しという概念がよいのかどうかについてはやや疑問がありますが、ここにはいくつかの見直し事例やおすすめの「お宝ファンド」10本が紹介されています。

 わからない投資はすべきではない、というのが原則です。
 
 投資信託にご興味のある方はぜひご一読ください。
 
  


 参考文献:『損しない投資信託』 中桐啓貴 (朝日新書)
 

  

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『むしろ暴落しそうな金融商品を買え!』を読んで

2012年12月21日

 吉本佳生さんのご著書『むしろ暴落しそうな金融商品を買え!』を拝読いたしました。

 吉本さんは1963年三重県生まれ、エコノミスト、著述家、関西大学会計専門職大学院特任教授で、ご専門は金融経済論、生活経済学、国際金融論です。『スタバではグランデを買え!』(ダイヤモンド社)他、たくさんのご著書があります。

 長期投資、分散投資は安全であるというのが一般的な常識ですが、この本ではこの常識を真っ向から否定し、新しい投資の考え方を伝授してくれます。
 
 この本で紹介されている投資の新常識の一部をご紹介します。

 日本人にとって長期の外貨投資は大損の危険性が高い

 新興国への投資の全額損失の危険が付きまとうワケ

 分散投資をするなら「株+債券」がいちばん有効

 社債は買うべきではなく、債券を買うなら国債しかない

 メガバンクが日本国債を保有し続ける理由

 なぜ「いずれ値上がりする」と思う資産への投資が危険なのか

   『むしろ暴落しそうな金融商品を買え!』の帯より引用


 興味をそそられるタイトルがいっぱいですね。なぜ?と思いましたが本文を読んでみるとだいぶ納得できました。

 2011年の東日本大震災の後、急激な円高になりました。みなさまはなぜだと思いますか?

 吉本さんの解説は次のようなものです。
 欧米のヘッジファンドなどは金利が安い円でお金を借りて、その資金を米ドルなどに交換して世界の資産市場で運用しています。(円キャリートレードと呼ばれるものです。)
 日本の対外純資産残高は世界一、アメリカの対外純負債は世界一ですから、日本は世界一の貸し手、アメリカは世界一の借り手ということになります。
 経済に影響を及ぼすようなショックが起こると、資産運用を中断して一時的に貸し手の日本にお金が戻りますので、たいていは急激な円高・ドル安が起こるというわけです。

 では、これからはどんな資産運用を行えばいいのでしょうか。

 吉本さんは資産運用で絶対に押さえておくべき条件はたった二つだといいます。
 
 それは、その資産の流動性が高いことと、毎日のように価格がチェックできること、の二つだそうです。

 なんだか拍子抜けするようなことですが、理由は本書を読んでみてください。
 
 そして、これからの資産運用に必要な資質は、①投資相手に惚れ込まず、いつでもすぐに切り捨てられるクールさと、②危なそうな資産にも躊躇せずに投資できる勇気、③毎日りのように情報をチェックするための情報力です。

        『むしろ暴落しそうな金融商品を買え!』p198より引用

 
 コラムで紹介されている堅実な資産運用方法は「変動金利型の個人向け国債と、ネット専業銀行の預金」(p180)ですが、「おわりに」にはオプション取引(ストラングルの売り、買い)をすすめる話も出てきます。

 賛否両論ありましょうが、おもしろい考え方です。金融や投資にご興味ある方はご一読くださいませ。
 
  


 参考文献:『むしろ暴落しそうな金融商品を買え!』 吉本佳生 (幻冬舎新書)
 

  

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『東南アジア月5万円 らくらく小金持ち生活』を読んで

2012年11月21日

 山崎初一さんのご著書『東南アジア月5万円 らくらく小金持ち生活』を拝読いたしました。
 
 山崎さんは1968年生まれ、大学卒業後、流通系企業に就職しました。入社した会社の経営が傾いたのをきっかけにSEとなり、転職をしながらキャリアアップをしてきたそうです。
 2006年に不動産投資によるアーリーリタイヤを決意、2007年に千葉県に4戸のアパートを購入、2008年には宮城県に6戸のアパートを購入して、ベトナムのホーチミン市に移住しました。
 現在はベトナム、タイ、インドネシア、カンボジア、ミャンマーなどを転々と移動し、気楽に暮らしているのだそうです。

 山崎さんは三か月に一度は日本に帰国されるそうですが、日本での滞在は南千住の安宿かネットカフェで過ごし、タイやベトナムなどの海外では一泊5、6ドルの宿に泊まるそうです。この生活だから月に最低3万円あればやっていけるのです。

 こんな生活をされている方がおられるのか・・・・・・まずは驚きました。

 日本で稼いで、物価の安い海外で暮らす、為替の原理をうまく使って生活されておられるのです。LCCの登場により、国際移動の費用が安くなったことも大きいと思います。

 山崎さんは、複数の通貨圏を行き交う必要があるなら、最低限理解しておくべき原理原則があるといいます。そのポイントとは次のようなものです。

 最低限の金融リテラシー、つまり物価、金利、為替の関係を理解していること。
 その国の産業構造を理解し、さらに、その産業構造と通貨との関係性を知っていること。
 通貨の相対的な力関係や、通貨の国際的な信頼性を承知していること。

         『東南アジア月5万円 らくらく小金持ち生活』より引用


 異なる通貨圏は微妙なバランスの上に成り立っています。経済成長や政変によっては今の状況が大きく変わることがありうるわけです。山崎さんのような生活をしたければ、金融や産業の知識は常に敏感でなければならないでしょう。

 東南アジアを自分の足で歩かれているだけあって、現場感からの金融知識が面白かったです。
 
 例えば、経済成長が進んでいることと通貨の安定は必ずしも一致しないということです。
 ミャンマーとカンボジアはドルがそのまま使えるのですが、ラオスではドルは中心ではないのだそうです。ラオスのキップという通貨は国際的はほとんど通用しない通貨なのに、です。
 山崎さんの考えは、経済の発展よりも通貨の発行元の安定性に依存するのではないか、というものです。ラオスは経済は弱小でも、革命以降は政治が安定しているようにみえるそうです。

 これからも山崎さんのような方が出てくるかもしれませんね。

 ご家族の話は出てきませんが、一人で移動されているのでしょうかね?私は独身ですから人のことは言えませんが。

 興味深い話ですよ。ご参考になさってくださいませ。

  


 参考文献:『東南アジア月5万円 らくらく小金持ち生活』 山崎初一 (ダイヤモンド社)
 

  

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『アンティーク・コインで資産を防衛せよ』を読んで

2012年11月02日

 平木啓一さんのご著書『金融乱世のサバイバル・バイブル アンティーク・コインで資産を防衛せよ』を拝読いたしました。

 平木さんは1942年愛知県生まれです。慶応義塾大学に在学中から世界のコインに興味をもち、研究を始めたそうです。その後、会社勤務や海外滞在などを経て、1986年から作家活動を続けておられ、柘植久慶のペンネームで270作以上の作品があるそうです。

 金の価格が上がったからでしょうか。インフレ懸念が払拭されないからでしょうか。コインに注目が集まっているようですね。私にとっては今年になってから二冊目のコインの本です。

 参考ブログ:『カネはアンティークコインにぶちこめ!』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1013488.html

 この本の題名には「資産を防衛せよ」との文言がありますね。まえがきでは次のようの述べられています。

 私はこれまで仕事を大きく変えたとき、その都度しばらくだが無収入状態に陥った。それが少なくとも三度-正確には二度半あった。そのとき持っていたコインを小出しに売り、じっくりと機会を待ったのだ。もし他の資産だとしたら、二進も三進もゆかなくなったに違いない。

            『アンティーク・コインで資産を防衛せよ』より引用


 ここだけ読んでしまうと、あたかも運用の話が書いてあるように思ってしまいますが、内容のほとんどは国別、個別のコインの歴史や価格の推移などの話です。

 コインがお好きでよく研究されているということが分かります。

 私はコインは一枚も持っていませんが、コインを収集されている方の楽しみは理解できました。

 コレクターの世界には、自分の専門とする分野の一枚について、三〇分その来歴を語って聴かせろ、という鉄則がある。これはそれほどまでに精通せねば一人前ではない、との意味を有している。
 そうなると自分がその国に興味を抱いた契機、あるいは入手した経緯だけだと、せいぜい半分までしか到達しない。
 そこでものを言ってくるのが、その歴史的背景だ。

          『アンティーク・コインで資産を防衛せよ』より引用

 
 一枚のコインをより大切にするには歴史の勉強も必要というわけです。
 
 集めたものを手元において眺めるのは楽しいのでしょうね。
 
 コインの写真も多数掲載されています。ご興味のある方はご参考になさってください。

  


 参考文献:『金融乱世のサバイバル・バイブル アンティーク・コインで資産を防衛せよ』
           平木敬一 (PHP研究所)
 

  

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『「海外投資」7つの方法』を読んで

2012年09月18日

 玉川陽介さんの『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』を拝読いたしました。

 玉川さんはコアプラス・アンド・アーキテクチャーズ株式会社の代表取締役です。自らの投資収益を主たる収入源としながら不動産業者として投資物件の紹介、銀行融資コンサルティングを行っているそうです。

 この本は、小口の投資家にもできて、プライベートバンクよりも有利な国際分散投資法を教えてくれるものです。

 私は投資するお金はないのですが、若いころ証券会社に勤めていたことがあったので、金融や投資の方法などの話には興味があります。勤めていた頃は見るのも嫌だったのに、いまは自分から進んで知りたいと思うから不思議です。興味があるものはすらすら読めます。
 
 プライベートバンクとは3億から10億円以上の純資産を持っている方向けの銀行です。口座開設には1億円以上の預け入れが求められるそうです。

 プライベートバンクの特徴とは主に次の四つだそうです。

 個別銘柄債券などPB以外では購入困難な商品を取り扱っている
 
 顧客が仕組債の条件を指定できるなどオーダーメイド商品を作ることが可能

 証券担保ローンの使い勝手が良い

 大企業の経営者向けに本業のビジネス支援を行っている

               『「海外投資」7つの方法』より引用


 この本ではPBよりも有利な投資法があるというのですから、すごいことです。

 ちなみに、玉川さんのポートフォリオは次のようなものだそうです。

 景気の悪い時期には、値動き(すなわちリスク)の比較的少ない日本の不動産と外貨建ての高利回り債券で安定的な配当を得ながら、将来的に景気が回復してインフレ傾向となった時には、債権は売却して不動産の値上がり益を得ることを目指すポートフォリオを作っています。

               『「海外投資」7つの方法』より引用


 玉川さんは、円、ドル、ユーロの三つの通貨に分散し、2.5倍のレバレッジをかけているそうです。

 具体的な銘柄や手続き方法なども解説されていて、親切な本だと思います。数万円からチャレンジできるものもあるようです。

 モナコ、マルタ島、フィリピンの居住権の有利性とそのとり方も紹介されていますよ。

 ご興味のある方はご一読ください。

  


 参考文献:『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』
          玉川陽介 (ぱる出版)
 
  

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『相場の波動はシンプルに読め!』を読んで

2012年07月18日

 菅下清廣さんのご著書『相場の波動はシンプルに読め!』を拝読いたしました。
 
 この本はチャート分析と算命学を元とした「サイクル理論」で、経済の未来予測の方法を教えてくれます。

 チャートも算命学も過去のことから将来を導き出す手法で、私にはよく分かりません。ただ今までの菅下さんのご著書を拝読する限り、不思議ですが予測が当たっている部分が結構あるのです。

 この本は2012年3月に発行されています。4カ月近くが経過してから読んだのですが、株式相場の大まかな流れやユーロ金融危機の方向性などはおおよそ外してはいないと思います。
 野田首相の増税法案についても党が分裂状態になって大混乱を起こすというところまでは当たっています。

 アメリカの大統領選については、オバマ大統領の再選を予測されています。

 これから何に投資をしたらいいのかという部分では、徹底的に逆張り戦略をとっておられて、ベンチャー企業、ヨーロッパの国債、欧米金融株、コモディティ市場、新興国の通貨などをあげておられます。

 「人のゆく裏に道あり花の山」という相場格言がありますが、菅下さんの紹介されているもののほとんどはリスクの高いものですから、よく考えてご判断ください。

 私は相場師ではありませんが、日本や世界の金融、経済の流れがどうなっていくのか、政治がどう変わるのかということについては大変興味があります。ビジネスや人生に活かすため、さまざまな識者の意見を学ぶようにしています。

 みなさまもご参考になさってください。  

  


 参考文献:『相場の波動はシンプルに読め!』 菅下清廣 (小学館)
 

 参考ブログ:
 『2011年の衝撃!』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e773281.html

 『新しい富の作り方』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e631873.html

 「日本人のホスピタリティー」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e901164.html

 「混沌とする世界」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e901851.html
  

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『カネはアンティークコインにぶちこめ!』を読んで

2012年05月17日

 加治将一さんのご著書『カネはアンティークコインにぶちこめ!』を拝読いたしました。

 加治さんは1948年札幌生まれ、米国でビジネスを手掛け、帰国後、執筆活動に入られたそうです。メンタル・セラピー小説『アルトリ峠』、坂本龍馬暗殺犯を特定した『龍馬の黒幕』、歴史ミステリー『幕末維新の暗号 上・下』など、ご著書はたくさんあります。

 この本は、投資の対象としてアンティーク・コインの購入をすすめる内容です。

 私は小学生の頃、切手や切符を収集しておりました。あの頃、切手とコインは同じお店で売られていました。

 私は高校生になり、大学生になり、切手には興味がなくなってしまいました。集めた切手はどこへいってしまったのでしょうかね・・・・・・
 
 この本を手にとったのは、コインの収集というのが懐かしい感じがして、興味がわいたからです。

 男性は金属できたものが好きなんですよね。でも、金地金や純粋な金貨ではおもしろみがありません。

 ゴールドは愛せないが、コインは愛せる。
 この違いはなにかというと、コインにはご主人様のためにずっと頑張ってきたという歴史がしみ付いているからではないでしょうか。 

           『カネはアンティークコインにぶちこめ!』より引用

 
 この気持ちはなんとなく分かる気がしました。

 アンティーク・コイン投資の長所は次の六つだそうです。

 ① コインの数は減り続けるので値が上がる
 ② 投資予算が自由自在
 ③ 価格が安定している
 ④ いつでもおカネに換えられる
 ⑤ 所有税などの維持費がゼロ
 ⑥ 重宝する形状
 ⑦ コイン収集は人間の本能

            『カネはアンティークコインにぶちこめ!』より引用


 本の帯には「コイン年金のススメ」とまで書いてありますが、コインが投資になるのかどうかは、私にはよく分かりません。みなさまどうか研究なさってご判断ください。
 
 この本にはいろいろなコインが写真入りで紹介されています。一枚で3000万円もするコインもあって、そういうのを見るのもおもしろいですよ。

  


 参考文献:『カネはアンティークコインにぶちこめ!』 加治将一 (東洋経済)
 
  

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『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』を読んで

2012年03月06日

 藤野英人さんのご著書『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』を拝読いたしました。

 藤野さんはレオス・キャピタルワークスの最高投資責任者で、同社が運用する「ひふみ投信」のファンドマネージャーを務めている方です。

 高いパフォーマンスをあげてきた大変有名なファンドマネージャーです。

 私は社会人の始まりが証券会社でしたので、お金もないのに投資や運用の本を読むのが好きです。最新の投資に対する考え方、ファンドマネージャーの動向などがとても気になります。

 この本では、藤野さんが考えるこれからの投資信託、伸びる企業の見極め方、これからの日本経済、世界経済などが分かりやすく解説されています。

 藤野さんは昨今はプロ投資家も個人投資家も多くがインデックス投信になびいており、いわば「インデックス投信バブル」の状況になっている、と述べています。

 投資信託はアクティブ運用か、インデックス運用か大きく二つにに分けることができます。

 私もこのブログでインデックス投信についてご紹介したことがあります。

 参考ブログ:
 『ほったらかし投資術』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e841542.html

 『起死回生のマネー術』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e844866.html

 インデックス投信は日経225などの株価指数に連動することを目標としているために一般的に低コストです。
 アクティブ投信は企業調査に時間をかけ、頻繁に銘柄の入れ替えも行うために、コストもかかりますし、ファンドマネージャーの手腕によって大きく成績が変わってきます。

 藤野さんは大半のアクティブ投信には何らかの問題があり、本来の役割が機能していないといい、二つの問題点をあげています。

 一つ目は多くのアクティブ投信、特に資金が多い巨大なものほどインデックス投信とほとんど変わらない運用になってしまっていること、二つ目は販売戦略の都合上、そのときの流行りのテーマで投信の新規設定が行われるため、株式を高値でつかんでしまう傾向があることです。

 インデックス投信にもいくつかの問題点があります。
 私が最も驚いたことは、インデックス投信に投資をすると、競争力を失った企業、誤った方向に進んでいる企業にも資金を注ぐことになり、結果的に社会的な損失につながってしまうという藤野さんの指摘です。

 市場全体に投資をするのですからそれはその通りですが、ここまで考えている一般投資家はいないのではないでしょうか。私もこの本を読んで、投資とはここまで考えなくてはいけないものなのか・・・・・・とハッとしました。

 藤野さんの投資法は価値(バリュー)株投資ではなく、成長(グロース)株を探す投資法ですから、一般投資家が成功するのは難しい世界です。
 
 そういう意味では、もしも一般投資家が成長株投資を志すのなら、信頼できる成長株型のアクティブ投信を購入するのも一つの手である、ともいえます。

 藤野さんはご自分の運用するひふみ投信をはじめ、いくつかの信頼できるアクティブ投信の銘柄を勧めておられます。

 日本は長引く不況だといいますが、この本を読むと、そんな中でもたくさんの成長企業が大活躍しているのだ、ということも分かります。
 
 ご興味のある方はどうぞご一読くださいませ。(投資はご自分の判断と責任でお願いします。)

  


 参考文献:『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』 
                 藤野英人 (ダイヤモンド社)
 

 参考ブログ:『すぐ動く人は知っている』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e460786.html
  

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