大切な仕事をする時間をスケジュールに入れる

2025年05月04日

 今年のGWはどこへ行ってもあまり人が出ていないように感じます。お休みが前半、後半ではっきりと分かれてしまったからでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第14章 CEOと取締役会」の「CEOの仕事の混乱ぶり」の節から引用します。

 CEOの一日の時間の使い方について発表された研究は、スウェーデンのスーネ・カールソン教授によるものだけである。教授のチームは数か月にわたってストップウォッチをもち、スウェーデンの企業人一二人のウィークデーにおける時間の使い方を調べ、会話、会議、訪問、電話などの時間を記録した。
 その結果、少なくとも社長室においては、一二人のうち一人として、邪魔されない時間を二〇分以上もてないことが明らかになった。集中できる機会は家にいるときだけだった。そして、長々とした電話と切迫した問題の板挟みとなって、重要な問題を即決させられずにすんでいた者は、毎朝一時間半家で仕事をしている一人だけだった。

                  『現代の経営(上)』 p228より引用


 私は中小企業の社長ですが、ここに書かれている状況と同じで、社員たちが出勤してきて、仕事が始まると、いろいろな用事が入ってきたり、電話が来たりして、やりたいことになかなか集中できないです。

 一番集中できる時間は、社員たちが出勤する前の誰もいない時間帯です。この時間は、定型的な仕事も早く進みますが、定型的な仕事に費やしてしまうのはもったいないので、難しい仕事や考える仕事をすることにしています。メールの返信や定型的な書類作成、手続きなどは、昼間のがやがやした時間帯でもできるからです。

 そして、二番目に集中できる時間帯、パートナーさんたちが退勤して、人が少なくなってきた夕方頃に続きをします。

 この節は次のような文章でまとめられています。

 CEOはいかなる活動をなすべきか。いかなる活動を委譲できるか。誰に委譲できるか。そして何よりもいかなる活動が重要か。そのためには、いかなる危機のもとにあろうともどれだけの時間を用意しておくべきかを検討する必要がある。
 言い換えるならば、場当たり的な者は、いかに頭脳明晰にして俊敏であろうとも、CEOの仕事は行えない。CEOの仕事は、計画しなければならない。計画に基づいて実行しなければならない。

      『現代の経営(上)』 p230より引用 


 この部分、原書を見てみましょう。 

 What activities must the chief executive do himself? What activities can he leave to others—and to whom? Above all: what activities come first? How much time must be set aside for them, no matter what “crisis” pressures there are?
 
 The intuitive manager, in other words, cannot do the chief executive’s job, no matter how brilliant, how quick, how perceptive he is. The job has to be planned. And the work has to be performed according to plan. 


 大切な仕事はあらかじめ計画に入れなくてはなりませんね。イベントや予定のスケジュールではなく、大切な仕事をする時間をスケジュール表に入れるということです。

 いつもご利用ありがとうございます。

 今月もどうぞよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
  

 Hitoshi Yonezu at 13:36  | ドラッカー

顧客の創造か、社内での出世か

2025年05月04日

 過ごしやすい季節となりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、P.F.ドラッカーの著作を読んでいます。

 ドラッカーの『マネジメント(上)』第6章の「企業とは何か」p73より引用します。

 企業とは何かを知るには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である。

              『マネジメント(上)』 p73より引用


 「企業の目的は外にある」とはどういう意味でしょう?もしも企業の目的が企業の内部にあるのなら、自社だけが儲かればいい、という考え方になってしまいます。

 社員にしてみれば、内部が大事だと考えれば、お客さまよりも企業の内部にいる上司や社長を喜ばせるような行動をとるようになるでしょう。

 昔昔のことですが、次のような事例に遭遇したことがあります。

 Aさんは、自分の意向に沿わない者(Bさん)がいました。AさんはBさんを悪者に仕立てて、Bさんのことを上司に報告することによって、自分の手柄とするとともに、気にいらないBさんを排除しようとしました。

 この場合、Aさんが正しい倫理観をもち、お客さまを大切にしている人ならば、このようなことはしないのですが、Aさんはお客さまよりも会社や上司を大切にしていました。

 AさんはBさんを教育できないし、納得するような話し合いの場を持つこともできなかったので、上司を使って自分の理想とする状態を作りたかったのです。

 誰かを悪者に仕立てるのは比較的簡単です。「手続き」を使えばいいのです。報告などの手続きをよく教えないで、不合格にしたり、必要な連絡を分かりずらく共有したりするなど、いろいろな方法があります。

 Bさんには落ち度や能力不足がありました。その根底にはAさんとBさんの関係がこじれていて、コミュニケーションがとれていないことにありました。私は、AさんはBさんともっとコミュニケーションをとって、教育すべきだと思っていました。嫌いな人と距離をとっていると、距離はどんどん広がっていきます。

 Aさんは自分の保身と出世のために、仕事のなかに虚構を作り上げてそれを大きくしました。虚構をつくるという無駄な仕事を増やすことで会社に損害を与え、お客さまのことを忘れ、さらにBさんに害を与えたことになります。

 こういうことは外から見ているとなかなかわからないので、気を付けなくてはなりません。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

  


 参考文献:
 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)

  "Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
  

 Hitoshi Yonezu at 13:35  | ドラッカー

マネジメントの人事と社長の人間性

2025年04月08日

 上田城の桜は五分咲きです。今週末には見ごろとなるでしょう。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第14章 CEOと取締役会」の「ボトルネックはボトルのトップにある」の節の二回目です。

 ドラッカーは、小さな事業を大企業に育て会長に退いた経営者の話を聞いて、CEOの仕事と責任をリストにまとめました。

 CEOは事業を検討する。全体の目標を設定する。目標を達成するために必要な意思決定を行う。そして、それらの目標と意思決定の内容を組織全体に理解させる。経営管理者に対し、事業を全体として見るよう教え、全体の目標から自分たちの目標を導き出すことを助ける。彼らの仕事ぶりと成果を、それらの目標に照らして評価する。さらに、必要に応じて事業の目標を点検し、修正していく。

 CEOはマネジメントの上層の人事について決定を行う。また、下位のマネジメントにいたるまで、経営管理者の育成が行われるようにする。組織の構造について基本的な決定を行う。経営管理者に対し何を考えるべきかを考えさせ、その意味を理解させる。製品別の事業部門と機能別の部門との関係を調整する。部門間の対立を仲裁し、個人的な不和を防止し修復する。
 
 航海中の船長のように、緊急時には自ら指揮を執る。

                  『現代の経営(上)』 p224より引用


 マネジメントについて大切なことが列挙されていますが、経営者の人格や人間性の話題はでてきません。

 引用した文章のうち、二つ目の段落は、人事について示されています。

 マネジメントの上層の人事を決定し、下位のマネジメントに至るまで経営管理者の育成を行うこと。
 組織の構造について基本的な決定を行うこと。
 経営管理者に対し何を考えるべきかを考えさせ、その意味を理解させること。
 
 この部分を原書で読んでみましょう。

 The chief executive makes the decisions on senior management personnel. He also makes sure that future managers are being developed all down the line.

 He makes the basic decisions on company organization. It is his job to know what questions to ask of his managers and to make sure they understand what the questions mean. He co-ordinates the product businesses within the company and the various functional managers. He arbitrates conflicts within the group and either prevents or settles personality clashes. Like the captain of a ship, he takes personal command in an emergency.


 これらの人事に関わる仕事は、トップマネジメント(社長)の人格や人間性と大きく関わっていると思います。

 例えば、昨今ニュースをにぎわしているコンプライアンスの問題は、トップマネジメントが許しているか、見逃しているから発生すると考えるからです。
 
 冒頭の引退した経営者は次のように述べたそうです。

 When he finished, saying: “The best thing I ever did for the company was to pick this man as my successor,”


 「私の最大の貢献は、この人を社長に選んだことだ」

 いつもご利用ありがとうございます。

 今月もどうぞよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
  

 Hitoshi Yonezu at 10:08  | ドラッカー

ボトルネックはボトルのトップにある

2025年03月05日

 春というのに大雪の寒い日が続きます。ただいま、高崎付近を新幹線で走行中ですが、10センチくらい雪が積もっています。
 みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第14章 CEOと取締役会」の「ボトルネックはボトルのトップにある」の節です。

 この節の冒頭部分の文章をご紹介します。
 
 「ボトルネックはボトルのトップにある」という。いかなる組織といえども、そのトップマネジメントを超えて優れたものとはなりえない。トップを超えて大きな構想をもつことも、卓越した仕事ぶりを示すこともできない。企業は、先代のトップの構想と遺産によって、しばらく生き続けることはできる。しかしそれは後払いで生きているにすぎず、支払いの期日は思っているよりも早く来る。
               
                 『現代の経営(上)』 p223より引用


 この部分を原文で紹介します。

 “THE bottleneck is at the head of the bottle,” goes an old saw, No business is likely to be better than its top management, have broader vision than its top people, or perform better than they do. A business—especially a large one—may coast for a little time on the vision and performance of an earlier top management. But this only defers payment—and usually for a much shorter period than is commonly believed.


 ボトルネックとは、業務、システム、交通などで、全体の流れや性能を制限したり阻害したりする要因を指します。瓶の首が細くなっていることをなぞらえた言葉です。

 トップマネジメントが、会社の流れや成長を止めてしまう原因になっているということです。

 企業はそのトップの器以上に大きくなることはない、と言いますが、このボトルネックの話も同じことを言っています。

  No business is likely to be better than its top management, have broader vision than its top people, or perform better than they do.

 会社はトップマネジメント以上によくならないのですから、トップマネジメントの器が大きくなれば、会社も成長できるということです。

 会社の不具合は、トップマネジメントの責任であり、部下のせいにすることは出来ないのです。

 耳の痛い言葉です。

 では、トップマネジメントの器が大きくなるとは、具体的にはどういうことでしょうか?

 稲盛和夫さんなら、徳を積む、心を高める、人格を高める、ということをおっしゃるでしょう。

 ドラッカーには似た概念として「真摯さ」という言葉があります。

 この節の後から「CEOの仕事と責任」が説明されますが、そこには真摯さの問題ではなく、具体的にすべき行動が示されています。

 しかし、その内容は人格を高めることと間接的につながっている部分がある、と思います。

 続きは来月ご紹介します。
 
 いつもご利用ありがとうございます。

 今月もどうぞよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
  

 Hitoshi Yonezu at 09:32  | ドラッカー

リーダーシップとは何か?

2025年02月03日

 寒中お見舞い申し上げます。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「リーダーシップとは何か」の節です。

 ドラッカーは、普通の人に普通ではない力を発揮させることを組織の目的の一つとしてきました。普通の人をすごい人に変える、というような話はありません。この節でようやく、リーダーシップとは何か?という問いかけが出てきました。
 
 以下の文章は、この節より抽出したものです。
 
 リーダーシップに代わるものはない。しかしリーダーシップは、創造できるものではない。昇進によって生み出すことのできるものではない。教えたり学び取ったりすることのできるものではない。

 マネジメントにできることは、リーダーの資質を発現しやすくするか、発現しにくくするか、いずれかの環境をつくることだけである。しかもリーダーの資質を備える者はあまりに稀であり、かついつ現れるかを知りえない。

 リーダーシップとは姿勢でもある。しかるに、(雇用契約がマネジメントに対し、人の個性を変える権限まで与えているかは別として) 人の姿勢ほど曖昧で変えにくいものはない。したがって、卓越した組織の文化をもたらすための方法としてリーダーシップに依存することは、何もせず、何ももたらさないことを意味する。

 リーダーシップとは、人を惹きつける資質ではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。リーダーシップとは、仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものは営業マンシップにすぎない。

 リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである。リーダーシップの素地として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認するという組織の文化に優るものはない。
               
                 『現代の経営(上)』 p221-222より引用


 最後の段落を原書で紹介します。

 Leadership is the lifting of a man’s vision to higher sights, the raising of a man’s performance to a higher standard, the building of a man’s personality beyond its normal limitations. Nothing better prepares the ground for such leadership than a spirit of management that confirms in the day-to-day practices of the organization strict principles of conduct and responsibility, high standards of performance, and respect for the individual and his work.


 引用した文章を丁寧に読んでいくと、次のようなことではないかと思います。

 まず、リーダーシップは、創造することは出来ず、昇進させて生まれるものではなく、学べば身につくものでもない、ということです。
 
 マネジメント(経営者層)にできることは、リーダーの資質を発現しやすくするような環境をつくることです。

 リーダーシップは姿勢でもありますが、人の姿勢を変えるのは大変難しく、人の姿勢の変化を待つのは何もしないのと同じことです。

 リーダーシップは、人を引き付ける魅力ではなく、人気取りでもありません。(ドラッカーはカリスマも否定しています。)

 リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものです。

 リーダーシップの資質を備える人を発現させるために、組織として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認することです。
 
 まとめますと、組織内にリーダーシップを発現させて、通常を超える成果を上げられるようにしたいのですが、簡単にできるものはないということです。(リーダーシップは育てることができない。)

 ただ、リーダーシップを発現させるために、組織としてできることは、以下のことを日常で確認していくことです。
 
 ①行動と責任についての厳格な原則 (組織の目標、自分の目標、発言に忠実に行動する。責任を果たす。)

 ②高い成果の基準 (自ら高い目標を掲げる。前向きでないと高い基準はつくることができない。)
 
 ③人と仕事に対する敬意 (お客さま、同僚、社会に敬意を持つ。コンプライアンスを重視する。誠実である。二面性がない。)
 
 行動しない、成果を上げないのに、批評や文句ばかりをあげつらう人、現状に甘んじている人、他人に敬意を示さない人、他人に厳しく自分に甘い人、・・・などを許す組織風土では、リーダーシップは発現しないということになりましょうか。

 いつもご利用ありがとうございます。

 今月もどうぞよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
  

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

上司には真摯さが必要

2025年01月01日

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年は大変お世話になりました。誠にありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「マネジメントの適性」の節です。

 この節では、マネジメントの適性が「真摯さ」であることについて詳しく書かれています。

 いかなる仕組みをつくろうとも、マネジメントへの昇格人事で日頃いっていることを反映させなければ、優れた組織の文化をつくることはできない。本気であることを示す決定打は、人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。なぜならば、リーダーシップが発揮されるのは、人格においてだからである。多くの人の模範となり、まねされるのも人格においてだからである。
 真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、あとで身につけることはできない。真摯さはごまかしがきかない。一緒に働けば、特に部下にはその者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法などほとんどのことは許す。しかし真摯さの欠如だけは許さない。そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない。
 真摯さは定義が難しい。しかし、マネジメントの仕事につくことを不適格にするような真摯さの欠如は、定義が難しいということはない。

               
                    『現代の経営(上)』 p218より引用 


 マネジメントの仕事については、定義が難しくないという「真摯さの欠如」について、ドラッカーが提示した事例を以下にまとめます。


 ①人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならない。人のできることは何も見ず、できないことはすべて正確に知っているという者は組織の文化を損なう。

 ②「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者を昇進させてはならない。仕事の要求よりも人を問題にすることは堕落である。

 ③真摯さよりも頭脳を重視する者を昇進させてはならない。そのような者は未熟だからである。

 ④有能な部下を恐れる者を昇進させてはならない。そのような者は弱いからである。

 ⑤自らの仕事に高い基準を定めない者も昇進させてはならない。仕事やマネジメントの能力に対する侮りの風潮を招くからである。

      『現代の経営(上)』 p219より抜粋して引用 番号を入れました

 
 ①何でもできる、すべての分野において強みをもっている、という人はなかなかいません。誰にも強み、弱みはあります。人の弱みに焦点を合わせる者は、人の良いところをほめることができないと思います。弱みや間違いを指摘することは誰でも出来ますが、よいところを見つけて評価するのはなかなか難しいことです。

 ②誰が正しいか、に関心をもつということは、えこひいきか、ごますりをすることだと思います。会社の外部におられるお客さまのことを忘れて、会社の内部のほうが大切だと考え、内部の対策に走っているわけです。

 ①と②について、嫌いな人の弱みを強調して排除し、正しいことを言う人よりも自分の好みの人を選んで周りを固める人は、結局、わがままで自己中心的な人だと思います。この人が何に価値に置いているかを見極めたほうがいいですね。(お金、愛人、召使い、地位、・・・)上司がこういう人だったら、すぐに逃げるべきです。

 ③頭の良さのようなものが大切な部分はありますが、それもよりも真摯さが大切であります。人をまとめたり、全員に実行させたりするのは頭脳だけではできないからです。

 ④自分を超えようとする部下を恐れるのは、自分に力がないからです。周りの者は心の中で「早く代わって」と思っているかもしれません。

 ⑤高い基準を持とうとしない者は、今のままでいい思っていて、何もしない人です。会社員にはありがちですが、自分の地位を保ち、自分のいる期間だけは成績を保ちたいということでしょう。

 この説の最終部分には次のようにまとめられています。
 
 知識がなく、仕事もたいしたことがなく、判断力や能力が不足していても、害をもたらさないことはある。しかし真摯さに欠ける者は、いかに知識があり、才気があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させる。企業にとって最も価値ある資産たる人材を台無しにする。組織の文化を破壊する。業績を低下させる。
 (中略)
 したがって、特にトップマネジメントへの昇進においては真摯さを重視すべきである。要するに、部下となる者すべての模範となりうる人格をもつ者だけを昇格させるべきである。

              『現代の経営(上)』 p219-220より引用


 上記の最後の一文を原書で読んでみます。

 In appointing people to top positions, integrity cannot be overemphasized. In fact, no one should be appointed unless management is willing to have his character serve as the model for all his subordinates.


 トップを任命するには真摯さが強調される過ぎることはないのです。そして、すべての部下たちの模範になるような人格の人をトップに任命すべきなのです。

 ドラッカーの「真摯さ」は、やはり人格に関わるものであると考えてよいでしょう。

 仕事は、日々、月々、年々、いろいろな経験をしながら、少しずつでも人格を上げていくところだと思っています。

 新年を迎えて、あらためて日々反省をしながら生きていきたいと思っています。 

 いつもご利用ありがとうございます。

 新年がみなさまにとりまして、ますます幸せな年となりますことを心より祈念しております。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
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 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

経営憲章

2024年12月08日

 今年もいよいよ押しつまり、みなさまにおかれましては、お忙しくお過ごしのことと存じます。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「マネジメントの理念」の節からご紹介します。

 コンチネンタル製缶の制度が最もよくできている。同社では経営管理者が、自分や自分の仕事に影響のある重大な決定については、社長や取締役会長に直接訴えることができる。もちろん実際に社長や会長という、いわば最高裁にまで話が行くことはほとんどない。すべてではないにしても、ほとんどの訴えは、はるか下の最初の事情聴取の段階で片づく。 しかし、トップマネジメントに訴える権利があるということは、マネジメント全体に対し強い影響を与えている。決定を行う経営管理者は慎重に検討せざるをえない。 重大な決定をされる部下のほうも、偏見やばかげた判断の犠牲にならずにすむようになっていると感じている。

 だが、それらの防止策よりも、マネジメントが正しい組織の文化を確保しようとしていることを示す行動をとるほうが、はるかに重要である。そのための簡単な方法は、すべての経営管理者に対し、次のようなメッセージを伝えるような行動をとることである。

 「組織の文化は組織全体の問題である。自らが率いる部門において、優れた組織の文化をつくるために何をしているかを考えてほしい。また、自らが属している上位の部門において優れた組織の文化を生むために、上位の部門全体のマネジメントが何ができるかを教えてほしい」

  このように、一人ひとりの経営管理者とその上司の行動について、常時点検させることが効果をもたらす。組織の文化を向上させるうえで大きな役割を果たす。トップマネジメントが口先でなく本気であることを知らせる。組織の文化への意欲を生み出す。

               『現代の経営(上)』 p217-218より引用

 
 メッセージ(太字)の部分、原書では次のように書かれています。

 “The spirit of this organization is the business of every one of us. Find out what you are doing to build the right spirit in the unit you head and tell us, in higher management, what we can do to build the right spirit in the unit of which you are a part.”

 ちなみにこの節の名称は、日本語では「マネジメントの理念」となっていますが、原書では"The Management Charter"(経営憲章)です。企業がどのような経営を行うのかを明らかにする文書の意味です。

 経営理念をはじめとして、大切なことは、いくら伝えても、伝えすぎたということはありませんし、むしろ、何度繰り返しても、なかなか伝わりません。

 経営理念を実行するためにどんなことをしていますか?また、そのために上位の者は何をしたらよいですか?という質問を常に問いかけておく必要があるわけです。

 言わないでいると、経営理念と全く違うことが平然と行われてしまうことがあります。

 もっともっと言っていかないと、伝わらないです。私ももっとがんばります。

 いつもご利用ありがとうございます。

 みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。新年がみなさまにとりまして、ますます幸せな年となりますことを心より祈念いたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

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 Hitoshi Yonezu at 13:47  | ドラッカー

忠誠心を買うことはできない

2024年11月18日

 思い出す限り、もっとも暖かった秋が終わり、ようやく冬が近づいてきたと感じています。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「報奨と動機づけとしての報酬」の節からご紹介します。

 報奨は仕事の目標と直接結びつける必要があり、短期的な利益と結びつけるのは、マネジャーに対する方向付けとしてよろしくない、というのがドラッカーの考えです。

 能力を十分生かせなくなったために会社を移りたがっている役員がいる。何度も転職の誘いがあったが、いつも最後には、あと五年いれば功労金の付加分が増えるという理由で断ってきた。その人はいまもその会社にいる。相変わらず悩み、いらだち、苦い思いをしている。そしてマネジメント全体に不協和音と不満の空気をもたらしている。
 
 忠誠心を買うことはできない。忠誠心は獲得すべきものである。金の力で引き留めようとすれば、引き留められた者が誘惑に対する自らの弱さを会社のせいにするだけである。

               『現代の経営(上)』 p211より引用

 
 一般的に、給料が高ければ、それだけでも退職を防いだり、先延ばしさせたりすることは出来ます。

 しかし、高い給料は、その従業員の会社に対する忠誠心を高めることや、会社をもっとよくしよう、成果を上げようという気持ちにさせることにはつながらないのです。

 このことをドラッカーは「忠誠心を買うことはできない」と言っています。

 コンプライアンスを重視することは絶対ですので、賃金規定などを作成すると、ルールによって昇給が決まります。

 中小企業であっても、社長の自由な意思で報酬を決めることはできずらくなります。

 状況によっては、仕事をしないマネジャーが高い地位にしがみついて、部下の昇進を抑えようとし、力のある部下が能力を充分に発揮できなくなります。

 週ごとに刻々と状況が変わっていく動きの激しいいま、社長の裁量や決断を自由に迅速に行う必要性を感じます。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

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 Hitoshi Yonezu at 09:56  | ドラッカー

しなかったことには興味がない。何をしたのか?

2024年10月07日

 ようやく夏の暑さが終わり、秋の涼しさを感じることができるようになりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「評価の必要性」の節からご紹介します。

 ドラッカーは、強みを生かすことについて、よく言及します。

 要点をつく話がイギリスにある。二〇代前半で首相となり、僭主ナポレオンに抵抗する唯一の国を率いて、国民に勇気と決意とリーダーシップを示した小ピットは、私生活でも高潔な人だった。腐敗した時代にあって、あくまでも公正だった。道徳の乱れた時代にあって、誠実な夫であり父だった。その彼が若くして世を去り天国の門をくぐろうとしたとき、聖ペテロが「政治家であるお前がなぜ天国に入れると思うのか」と聞いた。
 小ピットは、賄賂も受けず、愛人ももたなかったと答えた。しかし聖ペテロは、「しなかったことには興味がない。何をしたのか」と再び聞いたという話である。

 できないことはすることができない。しないことについて何かを達成することはできない。人は強みを生かして初めて、何かをすることができる。何かをすることによって、何かを達成できる。したがって人の評価は、その人ができることを引き出すものでなければならない。その人の強みを知り理解して初めて、「彼の強みを生かしてさらに進歩させるには、いかなる弱みを克服させなければならないか」を考えることができる。したがって人の評価は、その人ができることを引き出すものでなければならない。その人の強みを知り理解して初めて、「彼の強みを生かしてさらに進歩させるには、いかなる弱みを克服させなければならないか」を考えることができる。
  弱みそのものは、通常誰の目にも明らかである。しかし弱みにはいかなる意味もない。重要なことは、さらによりよく行い、さらにより多くを知り、さらに成長していきたいという欲求である。それらの欲求が、より優れた、より強い、より成果をあげる人間をつくりあげる。

               『現代の経営(上)』 p208より引用

 
 ・・・しなかったことには興味がない。何をしたのか?・・・

 この文章は、原著では次のように表現されています。

 “We aren’t a bit interested in what you didn’t do; what did you do?”

 「何をなしとげたのか???」 

 そのように聞かれても、すらすらと話すことはできる人は少ないでしょう。厳しく鋭い質問ですね。

 そして、次の言葉です。

 ・・・できないことはすることができない。しないことについて何かを達成することはできない。人は強みを生かして初めて、何かをすることができる。何かをすることによって、何かを達成できる。・・・

 この文章は原著では以下のように表現されています。

 One cannot do anything with what one cannot do. One cannot achieve anything with what one does not do. One can only build on strength. One can only achieve by doing.

 特に、後半の二つの文章が核心を突いています。

 「強みの上においてのみ、何かをなすことができる!行動することによってのみ、達成できる!」

 社会の役に立ちたい、成果を上げたい、というのなら、自分の強みに集中することです。マネジメントは、その強みを評価してあげることです。

 そして、強みをもって、行動量を増やすことです。

 成果が上がらないのは、成果が上がるまでの行動をしていないからです。

 日常生活に飽きないで、慣れないで、とにかく強みに基づいて、行動、行動、また、行動です。

 社員の行動をみると、私の基準からしたら気に食わないことは多々ありますが、それがその人の強みに関係することならば、大目にみて、言下に否定はしないようにしています。もちろん、コンプライアンスを軽視するようなことはすべて否定します。
 気に食わないことを受け入れることは、私にはストレスになりますが、長期的には本人の成長のためではなる、と思います。

 逆に、責任逃れをする人や、言われたことしかやらない人は、自分の弱みをかばう行動をしている人だと思います。会社において、このような人たちの強みを引き出していくのは、時間がかかります。
 若いうちにこのような姿勢で固まっている人も多いですが、若いので、とりあえずはどこでも採用してもらえます。こういう人たちは「作業はしているのだから、自分が悪いのではなく、悪いのは会社だ」と勘違いする状態が続くことになります。

 やはり、人生も仕事も人間性がもっとも大切だ、と私は思っています。

 すべての人の強みが生かされて、成果に結びつくことを祈って。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。


 追伸
 ドラッカーは、ウィーン生まれで、母国語が英語ではないので、英語がとても分かりやすいのですよね。興味のある部分を英語で読むのもよいですよ。


 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 稲盛和夫さんのいろいろな書籍を繰り返し読んで、勇気を頂いております。

 『経営12カ条』 稲盛和夫著 (日本経済新聞出版)
 http://www.amazon.co.jp/dp/B0BCP29Z13/ref=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 14:38  | ドラッカー

無難であることの危険

2024年09月01日

 台風がなかなか去ってくれない今日この頃ですが、信州では合間に秋晴れも顔をだします。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「無難であることの危険」の節をご紹介します。

 「この会社なら、金にもならないがクビにもならない」といわれることほど企業とその文化を損なうものはない。そのようなセリフは無難さの強調である。それは組織の中に官僚を生み出し、起業家精神を阻害する。リスクを避けさせるだけでなく、新しいことに尻ごみさせる。そのようなことでは、優れた組織の文化を生むことはできない。優れた組織の文化を生むものは優れた仕事である。
 無難さの強調では安定ももたらされない。経営管理者が必要とする安定とは、優れた仕事を行っているという自覚と、その仕事ぶりが認められているという認識に基づくものでなければならない。したがって、第一に必要とされるものは、仕事についての高い基準である。
 経営管理者を奮起させることはできない。自らが自らを奮起させなければならない。実に、目標管理が必要とされ、仕事の要求に基づくマネジメントが必要とされるのは、経営管理者自らが仕事の基準を設定しなければならないからである。

               『現代の経営(上)』 p203より引用

 
 この混乱の時代、無難な会社などあるのでしょうか。
 
 そのような会社があるのなら、そこに安住していたい、と考える人もいるかもしれません。

 しかし、経営管理者(マネジャー)は、無難な状態に喜んでいるわけにはいかないのです。
 
 経営管理者(マネジャー)は、仕事の基準を自ら決めて、自分を自分で鼓舞する立場なのです。

 自ら決めた高い基準に向かって、あらゆる手段を使って(法的、倫理的に正しい方法で)、実行するのです。

 PDCAのうち、特にD(DO)ができないと、物事は進みません。

 計画やチェックばかりしているのは評論家ですね。

 続いて以下の文章が出てきます。

 また、常に二流の仕事ぶりしかできない者を異動させよということは、容赦なく解雇せよということではない。誠実につとめてきた者に対しては、企業の側に道義的な責務がある。 しかもマネジメント自体が、意思決定をなすべき機関の常として、間違いを免れることができない。間違って昇進させ、その後昇進させるべきでなかったことがその仕事ぶりから明らかになった者を解雇することはできない。満足な仕事ができないのは、その者だけの罪ではないかもしれない。あるいは、時間の経過とともに、仕事に必要な能力がその者の能力を超えてしまったのかもしれない。

               『現代の経営(上)』 p204より引用


 会社には、入退社がありますので、時間の経過とともに組織の構成は変わっていきます。

 あるときまでは活躍していたのに、だんだんと成果が上がらなく人が出てきます。

 その人を補完していた人がいなくなったり、仕事の幅が広がったために対応できなくなったり、いろいろなケースがあります。

 しかし、いずれにしても、その人の力では対応しきれなくなる瞬間がやってきます。

 昇進させてしばらく経ってから、この人の力ではこの仕事は難しかった、と分かることもあります。

 一流のプレイヤーで成績をあげたから、ということで、昇進していくのですが、経営管理者(マネジャー)になったら、仕事の要点は変わるのです。
 現場の仕事を部下に委任しながら、経営管理(マネジメント)を学び、経営管理に時間を割いていかないと、マネジャーとしての成果は上がらなくなっていくでしょう。

 そして、そのようになったマネジャーは「自分がやればできるが、部下たちはできない」と現場の悪口ばかりを言うようになります。
 
 経営管理を学ぶ機会は十分にあるのですが、緊急なことではないので、後回しにしてしまう人が多いです。

 私は松下幸之助や稲盛和夫の書籍を部下にプレゼントしたこともあります。どれだけの人が真剣に読んできたでしょうか。

 現場が好きな人は、経営管理の仕事を軽視する傾向にあります。現場の仕事と経営の仕事は別物です。

 もちろん、それまでの成果や仕事ぶりに感謝をして、その人のできる範囲で働いてもらいますが、経営管理(マネジメント)の段階には上がれないということになります。

 こうなってしまうのは、本人の責任でもありますが、会社の責任も大きいわけです。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 稲盛和夫さんのいろいろな書籍を繰り返し読んで、勇気を頂いております。

 『経営12カ条』 稲盛和夫著 (日本経済新聞出版)
 http://www.amazon.co.jp/dp/B0BCP29Z13/ref=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

5つの行動規範

2024年08月01日

 暑中お見舞い申し上げます。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。

 今回は「第13章 組織の文化」の「五つの行動規範」の節をご紹介します。

 優れた組織の文化が存在するならば、投入した労力の総和を超えるものが生み出される。力の創造がなされる。これは機械的な手段では実現できないことである。機械的な手段では、理論的にもせいぜい力を保存するだけである。力を創造することはできない。投入したものを超える価値を生み出すことは、人が関わる領域においてのみ可能である。
  したがって、優れた文化を実現するために必要とされるものは行動規範である。強みの重視であり、真摯さの重視である。正義の観念と行動基準の高さである。

               『現代の経営(上)』 p201より引用


 優れた組織では投入した労力の総和を超えるものが生み出されるのです。

 1+1<2ということです。

 1+1=2であるならば、一人一人がそれぞれに仕事をしていることと同じで、組織で仕事をする意味がありません。

 このように、組織の優れた文化を実現するものが行動規範です。

 ドラッカーは5つの行動規範を挙げています。

 正しい組織の文化を確立するには、行動規範として次の五つが求められる。

(1)優れた仕事を求めること。劣った仕事や平凡な仕事を認めないこと。
(2)仕事それ自体が働きがいのあるものであること。昇進のための階段ではないこと。
(3)昇進は合理的かつ公正であること。
(4)個人に関わる重要な決定については、それを行う者の権限を明記した基準が存在すること。上訴の道があること。
(5)人事においては、真摯さを絶対の条件とすること。かつそれはすでに身につけているベきものであって、後日身につければよいというものではないことを明確にすること。

               『現代の経営(上)』 p203より引用


 ドラッカーでは「真摯さ:integrity」という言葉がよく出てくるのですが、この(5)にも登場しています。「真摯さ」は、後からとってつけることができない素質だということです。

 この部分の原文を載せておきます。
 
 1. There must be high performance requirements; no condoning of poor or mediocre performance; and rewards must be based on performance.
 2. Each management job must be a rewarding job in itself rather than just a step in the promotion ladder.
 3. There must be a rational and just promotion system.
 4. Management needs a “charter” spelling out clearly who has the power to make life-and-death decisions affecting a manager; and there should be some way for a manager to appeal to a higher court.
 5. In its appointments management must demonstrate that it realizes that integrity is the one absolute requirement of a manager, the one quality that he has to bring with him and cannot be expected to acquire later on.

‘’The Practice of Management” Peter F. Drucker Harper Collins e-books


 「真摯さ」については、以下のように表現されています。5.の後半です。

 the one quality that he has to bring with him and cannot be expected to acquire later on

 翻訳通りですね。真摯さは、その人物がそもそも持っていなくてはならない素質で、後から獲得することを期待できない素質です。

 「真摯さ」とは何を意味するのか、ということについては、ドラッカリアンの間では、いつもいつも話題になります。

 この話題だけで、どれだけ飲んできたことでしょうか。

 私は、そもそも持っていなくてはならない、とドラッカーがはっきり書いているのですから、誠実さ、高潔さなど人格、人間性に関わる素質を指していると思っています。

 実行力のようなものは、社会人になってから学んで身に付けることができるからです。

 素晴らしい成績を上げる人であっても、自己中心的であったり、社会的な行動に問題があったりする一面があるならば、その人を選ぶべきではないということです。

 そのような人物は、しばらくは組織に貢献するかもしれませんが、それは表面的な現象であって、長期的には組織に大きなマイナスの影響を及ぼします。

 人格や人間性は子どもの頃からだんだんと形成されてくるもので、部長になってからとってつけることはできない、と思っています。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22


 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

 ちなみにどういう人を採用してはいけないか(EVILEな人)について、以下の書籍が参考になります。ご一読ください。

 『人を選ぶ技術』 小野壮彦 (フォレスト出版)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0BMK7JRR9/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

重要なことは、できないことではなく、できることである

2024年07月19日

 いよいよ梅雨明けですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの著書をご紹介しております。

 2021年8月まで『現代の経営(上)』について書いていましたが、当時、ある会合で定期的にドラッカーについて発表する機会があったことから、この約3年間、その内容に合わせるために『マネジメント』など他の分かりやすい著書に飛んでおりました。

 2021年8月のブログ 「第一線の遺伝子」
 https://highlyeffective.naganoblog.jp/e2595733.html#google_vignette

 今月から『現代の経営(上)』の続きに戻って、読んでいきます。私は『現代の経営』が最もドラッカーらしいマネジメントの著書だと思っています。私の興味のある部分を取り上げてご紹介しております。

 今回は「第13章 組織の文化」の「凡人を非凡にする」の節をご紹介します。

 二つの言葉が「組織の文化」を要約する。その一つは、アンドリュー・カーネギーの墓銘碑である。
 「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」
 もう一つは、身体障害者雇用キャンペーンのスローガンである。
 「重要なことは、できないことではなく、できることである」

               『現代の経営(上)』 p199より引用


 組織は、さまざまな個性を持つ人の集まりです。

 そして、一人一人の強みを生かして、弱みを消すのが組織の特徴であり、役割であります。


 ベヴァリッジ卿の言葉、「凡人をして非凡なことをなさしめる」ことが組織の目的である。
 (中略)
 組織の良否は、人の強みを引き出して能力の以上の力を発揮させ、並みの人に優れた仕事ができるようにすることができるかにかかっている。同時に、人の弱みを意味のないものにすることができるかにかかっている。

               『現代の経営(上)』 p199-200より引用


 コロナ禍を乗り越えて、ここからというときに、今度は人材不足の波がやってきました。いま人材の募集と定着については、本当に考え抜き、できることをすべて行っています。

 どんな人にも強みがあるわけですから、その人の強みを生かして、できる限り長く勤めてほしいと思っています。
 弱みを直そうとする姿勢はよいですが、そこに執着しては組織に所属している意味がないのです。上司は弱みを指摘することよりも、強みを生かしてあげることのほうが大切なのです。

 コンプライアンスを重視することや、誠実な姿勢で仕事に向かうこと、清潔であることなどは、働く人の根本条件として絶対に必要です。
 
 しかし、その他の価値観、こうでなくてならない、こうであるべき、というような考えは、そういうことを言うその人のたどってきた人生の経緯が混ざっているかもしれません。特定してすみませんが、昭和の考え方はもう捨てなくてはならないと思っています。

 私は、20代の頃は、カラオケで牛若丸三郎太(時任三郎)の「勇気のしるし~リゲインのテーマ」を歌って、大いに元気をだしていましたが、もはや歌えない曲となってしまいました。(歌詞を見てください。)

 経営者や上司の立場にあるものが過去や自分の優秀さを自慢するのは好ましいことではありません。いままで培ってきた人生や過去は、足元にそっとおいて、いまを生きていくということになると思います。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22


 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 10:17  | ドラッカー

何によって憶えられたいか?

2024年06月10日

 入梅間近となり、不安定な天気が続いております。みなさまお元気でお過ごしでしょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 今回は、ドラッカーの有名な問い「何によって憶えられたいか」をご紹介したいと思います。
 
 私が13歳のとき、宗教の先生が「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。すると、「答えられると思って聞いたわけではない。でも五〇になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」といった。
 長い年月が経って、私たちは六〇年ぶりの同窓会を開いた。ほとんどが健在だった。あまりに久しぶりのことだったため、初めのうちは会話もぎこちなかった。
 すると一人が、「フリーグラー牧師の問いのことを憶えているか」といった。みな憶えていた。ある者は四〇代になるまで意味がわからなかったが、その後、この問いのおかげで人生が変わったといった。二五くらいになってから考え始めたという者も何人かいた。
 二〇世紀最高の経済学者ジョセフ・シュンペーターは二五のとき、ヨーロッパ一の馬術家、ヨーロッパ一の美人の愛人、偉大なる経済学者として憶えられたい、といった。しかし、亡くなる直前の六〇の頃、同じ問いを再びされたときには、馬のことも女性のことも言わなかった。インフレの危機を最初に指摘した者として憶えられたいといった。事実、彼はそのように憶えられた。それこそ憶えられるに値することだった。
 今日でも私は、いつもこの問い「何によって憶えられたいか」を自らに問いかけている。これは自己刷新を促す問いである。自分自身を若干違う人間として、しかしなりうる人間としてみるよう仕向けてくれる問いである。

           P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p219-220より引用



 私がこの書籍を読んだのはもう10年以上前のことです。

 そして、年齢も50歳をとうに過ぎ、60歳が近くなっています。
 
 「何によって憶えられたいか?」という問いは、自分に何か秀でたものがあるのか、人と比較するための問いではないと思います。

 自分がやってきたことの中で、憶えていてほしいことがあるなら、それが人のためになったことでしょうし、自分の好きなことでもあるはずです。それが憶えられたいことです。

 私のことを考えると、これというのはあるのですが、これは憶えられたいが、まだ憶えられれてはいないなー、ということもあります。

 なりたい、なりうる人間になれていないのです。

 活動量を増やそう、という気持ちになりました。
 
 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

  参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22


 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 14:23  | ドラッカー

現代社会の二つのニーズの調和

2024年05月01日

 新茶の季節となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。

 今回は、終章「成果を上げる能力を習得せよ」の最後の部分を読んでみます。
  
 エグゼクティブの成果をあげる能力によってのみ、現代社会は二つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズを調和させることができる。したがってまさにエグゼクティブは成果をあげる能力を修得しなければならない。

          P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 終章 p227より引用


 組織と個人にそれぞれのニーズがあります。

 組織のニーズ :働く人に力を発揮してもらい、組織に貢献してほしい。

 個人のニーズ :自らの幸福のため、自己実現のために組織を使いたい。


 この二つのニーズを調和させるのは、エグゼクティブの成果をあげる能力です。

 働く人はエグゼクティブとして、その能力を発揮して組織に貢献するとともに、組織を道具として、自己実現を図ります。

 組織は、所属する個人に能力を発揮してもらって、成果を上げ、組織の目的を果たします。

 働く人も、組織も、矛盾なく、それぞれ大きなプラスの成果物を手にすることができるのです。

 これこそがマネジメントの正統性でもあります。

 働く人が成果をあげる能力を修練していないと、この構造は成り立ちません。

 ここに、成果をあげる能力をどうしても修得せねばならない理由があります。

 『経営者の条件』の終章は次の文章で締めくくられています。


 "Effectiveness must be learned." 


 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22


 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 16:14  | ドラッカー

組織の水準、習慣、気風

2024年04月02日

 ようやく信州も春らしくなってまいりました。
 
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、終章からご紹介します。
  
 組織は優秀な人がいるから成果をあげられるのではない。組織の水準や習慣や気風によって自己開発を動機づけるから、優秀な人たちをもつことになる。そして、そのような組織の水準や文化や気風は、一人ひとりの人が自ら成果をあげるエグゼクティブとなるべく、目的意識をもって体系的に、かつ焦点を絞って自己訓練に努めるからこそ生まれる。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』 p223より引用


 いまは大変な人手不足で、当社も大変困っておりますが、優秀な人材がほしい、というのは身勝手な話だと思っています。

 組織の水準、習慣、気風をつくることによって「自分を改革して成長していきたい」と考える自尊心の高い人材を組織内で育てることが先なのです。

 どんなに素晴らしい人材が入ってこようとも、暗い沈んだ雰囲気の組織では、がっかりして辞めていってしまうでしょう。

 私も、社内から次のトップを担う人材が出てほしい、と思います。

 そのために、社員たちには学ぶ材料や場を提供しています。

 知識、技能、経験などは仕事に欠くべからざるものですが、それらよりも、もっと大切なことは、仕事を通じて人格を上げていくことだ、という価値観を社内で共有しています。

 二面性のある人、利己的な人、うそをつく人、他人を蹴落とそうとする人などは、とりあえずは隠しおおせたとしても、どこかでつまづく、と思っています。少々鈍重でも、誠実にまじめに仕事をしている人は必ず浮き上がってくると信じています。

 私は、どんな困難が降りかかってこようと、決してあきらめない明るい前向きな態度で対応し、ついてきてくれている社員やパートナーに恩返しをしていきたいと思っています。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22


 "The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
 https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22

  

 Hitoshi Yonezu at 15:16  | ドラッカー

データと現場

2024年03月12日

 春になっても雪がちらつく信州です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)から「意思決定」について読んでみます。
  
 大統領が手に入れられる唯一の情報たる報告書なるものはまったく助けにならない。これに対し、あらゆる国の軍が、命令を出した将校が自ら出かけ、確かめなければならないことを知っている。少なくとも副官を派遣する。命令を受けた当の部下からの報告を当てにしない。信用しないということではない。コミュニケーションが当てにならないことを知っているだけである。

 大隊長自らが隊員食堂に出かけていって隊員用の食事を試食するのもこのためである。メニューを見て料理を運ばせることはできる。だがそうはしない。自ら隊員食堂に出かけ兵隊たちと同じ鍋からとる。

 コンピュータの到来とともに、このことはますます重要になる。決定を行う者が行動の現場から遠く隔てられるからである。自ら出かけ、自ら現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から遊離する。コンピュータが扱うことのできるものは抽象である。抽象化されたものが信頼できるのは、それが具体的な事実によって確認されたときだけである。それがなければ抽象は人を間違った方向へ導く。

 自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、唯一ではなくとも最善の方法である。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』 p188より引用


 ドラッカーの予想の通り、コンピュータはますます経営に入りこみ、いまでは経営に必要不可欠なものになっています。『経営者の条件』は1967年の著作ですが、当時のほとんどの人にとって、この文章の意味は理解できなかったのではないでしょうか。

 いま、コンピュータのデータはいろいろな示唆を与えてくれますが、データだけで判断することは、間違いを導くかもしれません。データによって出来上がった抽象を、具体的な事実によって確認する必要があるのです。

 「おかしいな・・・よし、現場に見に行こう!」という感じです。

 コンピュータの出現が、意思決定に対する関心に火をつけることになった理由は多い。しかしそれはコンピュータが意思決定を乗っ取るからではない。コンピュータが計算を乗っ取ることによって、組織の末端の人間までがエグゼクティブとなり、成果をあげる決定を行わなければならなくなるからである。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』p216より引用


 データが身近になったために、誰でも意思決定ができるようになりました。意思決定ができるということは、誰でもエグゼクティブになれるということです。

 毎日、大量のデータが吐き出されていますが、うまく活用されていません。チャットGTPは誰でも使えるようになりましたが、どれだけの人が成果を上げる使い方をしているでしょうか。
 
 データの海で船をうまく操縦できていないように思います。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
  

 Hitoshi Yonezu at 13:20  | ドラッカー

集中するために廃棄する

2024年02月09日

 暦の上では春となりましたが、まだ寒い日が続いております。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)から「集中」について読んでみます。
 
 集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない。

 つまるところ、成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。肥満防止のためである。組織は油断するとすぐ体型を崩し、しまりをなくし、扱いがたいものとなる。人からなる組織も、生物の組織と同じようにスマートかつ筋肉質であり続けなければならない。

 古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい。

    P.F.ドラッカー『経営者の条件』p142-146より抽出、編集して引用



 「体系的廃棄」という言葉を耳にしたことのある方も多いかと存じます。ドラッカーの言葉としてあまりにも有名です。
 
 集中するためには、まず不要なものを廃棄をすることが先だということです。

 ビジネスにおいては、何もしなくても、次々に新しい仕事がやってきますが、逆に、古い活動を見直したり、廃棄のための検討をしたりするような機会はありません。

 一般的には、優先順位を考えろ、と言われますが、何が劣後であるかを考え、劣後のものを廃棄するというのが体系的廃棄の手順です。

 当社も創業以来、組織の成果に寄与しない事業を捨てて、事業を転換してきました。昭和までは人口増加とGDPの増加というベースがありましたので、なんとかうまく転換することができてきました。
 
 「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか?」という言葉がいつも私の耳に響いています。

 いまもまさに、コロナ禍によって立ち行かなくなった事業は廃棄し、新しい事業に挑戦しています。しかし、昭和時代とは経済のベースが違いますので、簡単ではありません。

 地方の生活関連サービス系の事業は大きな引き潮の上にいます。いままで通りというわけにはいかないと思っております。

 次回は「意思決定」を読んでみます。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
  

 Hitoshi Yonezu at 10:12  | ドラッカー

企業における個人の「強み」の生かし方

2024年01月09日

 能登半島地震で被災された方、関係者のみなさまに心よりお見舞いを申し上げます。
 
 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、前回は、ドラッカーの『経営者の条件』より、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)のうち「貢献」のなかの「三つの領域における成果」についてご紹介しました。今回は「強み」について読んでみます。
 
 成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。

 鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑銘に刻ませた「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」との言葉ほど大きな自慢はない。これほど成果をあげるための優れた処方はない。カーネギーの部下たちは、それぞれの分野において優秀だった。それは彼が部下の強みを見出し仕事に適用させたからだった。もちろん、最も大きな成果をあげたのはカーネギーだった。

 強みを生かすことは、行動であるだけでなく姿勢でもある。しかしその姿勢は行動によって変えることができる。同僚、部下、上司について、「できないことは何か」でなく「できることは何か」を考えるようにするならば、強みを探し、それを使うという姿勢を身につけることができる。やがて自らについても同じ姿勢を身につけることができる。

 成果に関わるすべてのことについて、機会を育て、問題を立ち枯れにしなければならない。特にこのことは人事についていえる。自らを含め、あらゆる人を機会として見なければならない。強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。しかも弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない。

   P.F.ドラッカー『経営者の条件』p102-135より抽出、編集して引用


 どなたにもそれぞれの特徴として、強みや弱みがあります。一人で仕事をする場合は、強みを使えるはよいとしても、弱みも如実に表れてしまいます。

 しかし、組織には個人の弱みを消し、強みをより強く生かす機能があります。

 例えば、数字に強い人は経理を担当し、交渉力があり親しみやすい人は営業を担当し、手先が器用な人は製造を担当します。
 
 このように、組織は分業をすることによって、各人の強みを生かすことが出来るのです。

 カーネギーの墓碑銘が示す通り、カーネギーは人の強みを利用して大きな成果を上げました。それぞれの人の強みを生かすことで、企業はより大きな成果を上げることが出来るようになるのです。

 弱みにエネルギーを注ぐことは無駄な努力です。弱みで仕事をしなくてはならない場合は、最低限すべき(しなくてはならない)ルールを決めて、それをしっかり行ってもらうのがせいぜいか、と思います。

 今年一年のみなさまのご多幸、ご健勝を祈念いたします。

 いつもご利用ありがとうございます。

 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
  

 Hitoshi Yonezu at 10:52  | ドラッカー

あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする

2023年12月01日

 師走を迎え、お忙しくお過ごしのことと存じます。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、前回は、ドラッカーの『経営者の条件』より、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)のうち「貢献」についてご紹介しました。

 今回はその「貢献」の節の中で紹介された「三つの領域における成果」について解説します。
 
 あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。
 これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。したがって、この三つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。もちろんそれぞれの重要度は組織によって、さらには一人ひとりの人によって大きく異なる。

 第一の領域である直接の成果については、はっきり誰にでもわかる。企業においては売上げや利益など経営上の業績である。病院においては患者の治癒率である。

 第二の領域にある価値への取り組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのようにアメリカの家庭のために最も安く最も品質のよい財やサービスを見つけ出すことである場合もある。

 第三の領域が人材の育成である。組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。したがって自らを存続させえない組織は失敗である。今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新していかなければならない。確実に高度化していかなければならない。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』p81-83より抽出、編集して引用



 三つの領域における成果・・・①直接的な成果 ②価値への取り組み ③人材の育成

 ドラッカーの言葉として、よく知られている部分だと思います。

 直接的な成果・・・これは分かりやすいです。例示されているように、売上など経営上の業績です。組織が重要と考えるKPIとしてもよいと思います。根本的なことから考えますと、お客さまに喜んで頂けるためにどうしたらいいのか?社会のお役に立つために何をするのか?ということになると思います。

 価値への取り組み・・・直接的な成果がカロリーであるとしたら、価値への取り組みはビタミンやミネラルの役割である、とドラッカーは述べています。ただ数値を上げればよいのではなく、社会にどのような価値をもたらすことによって、直接的な成果を上げるのか、ということです。価値への取り組みを考えない企業は、最終的な目標が数字(お金)ということになり、従業員が数字を達成させるために犯罪に手を染めてしまう恐れさえあるのではないでしょうか?

 人材の育成・・・文字通り、組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である、です。いま、コロナ禍が明けて、まさにこのような状況がハッキリと見えてきていると思います。個人ではなしえない高い成果を組織が出し続けています。今後はますます人材育成が重要になり、それができない企業は非常に厳しくなるでしょう。(自戒です。)

 本年もあっという間の一年でした。コロナは終わったと言いますが、私にとっては激動の日々が続いております。

 自分で選び、決めた道ですから、どのようなデコボコ道でも、決して他人のせいにせず、自分の足で乗り越えていく所存です。(艱難辛苦が楽しくなっているふしがあります。)

 一年間大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。

 来年がみなさまにとってますます豊かで幸福な年でありますことを祈念いたします。

 どうかよい年をお迎えください。
 
 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

成果を上げる貢献とは?

2023年11月15日

 秋があっという間に去ってしまって、早々に冬が来てしまった感じです。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、前回は、ドラッカーの『経営者の条件』より、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)のうち、「時間」についてご紹介しました。

 今回はそのうちの「貢献」について読んでみます。「貢献」とは何のことでしょうか。
 
 貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける。自らの専門やスキルや部門と、組織全体の目的との関係について徹底的に考えざるをえなくなる。政策にせよ、医療サービスにせよ、自らの組織の産出物の究極の目的である顧客や患者の観点から物事を考えざるをえなくなる。その結果、仕事や仕事の仕方が大きく変わっていく。

 なすべき貢献には、いくつかの種類がある。あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。
 これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。したがって、この三つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。もちろんそれぞれの重要度は組織によって、さらには一人ひとりの人によって大きく異なる。

 第一の領域である直接の成果については、はっきり誰にでもわかる。企業においては売上げや利益など経営上の業績である。病院においては患者の治癒率である。

 第二の領域にある価値への取り組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのようにアメリカの家庭のために最も安く最も品質のよい財やサービスを見つけ出すことである場合もある。

 第三の領域が人材の育成である。組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。したがって自らを存続させえない組織は失敗である。今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新していかなければならない。確実に高度化していかなければならない。

 新任の病院長が最初の会議を開いたとき、ある難しい問題について全員が満足できる答えがまとまったように見えた。そのとき一人の出席者が、「この答えに、ブライアン看護師は満足するだろうか」と発言した。再び議論が始まり、やがてはるかに野心的なまったく新しい解決策ができた。
 その病院長は、ブライアン看護師が古参看護師の一人であることを知った。特に優れた看護師でもなく、看護師長をつとめたこともなかった。だが彼女は、自分の病棟で何か新しいことが決まりそうになると、「それは患者さんにとっていちばんよいことでしょうか」と必ず聞くことで有名だった。事実、ブライアン看護師の病棟の患者は回復が早かった。

 貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるということである。貢献に焦点を合わせることなくしては、やがて自らをごまかし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺くことになる。

     P.F.ドラッカー『経営者の条件』p79-84より抽出、編集して引用


 組織の成果を上げるための貢献とは、成果を上げることにそれぞれが責任を持つことです。
 
 一般の従業員は目の前の仕事を遂行することに精一杯で、組織全体のことを考えている余裕はありません。
 しかし、どうしたら組織のために貢献できるだろうか?という視点をもったときに、仕事に対する向き合い方が変わり、自分の仕事が成果につながるようになるのです。

 引用文に出てきましたブライアン看護師は、注射を打つ、血圧を測るという業務で満足するのではなく「どのような仕事をしたら、患者さんにとっていちばんよいことになるのか」と考えました。
 目の前の仕事に真摯に取り組みながら、組織の成果に目を向ける、このような行動が患者さんの回復を早めることに繋がりました。患者さんの回復が早いことは病院としては大きな成果です。

 次回は「三つの領域における成果」について検討したいと思います。

 みなさまのご多幸を祈念しています。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

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 Hitoshi Yonezu at 09:48  | ドラッカー

ドラッカーの「時間」のまとめ方

2023年10月06日

 日照りの夏が終わり、突然秋がやってきた感じがします。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、前回はドラッカーの『経営者の条件』から、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)をご紹介しました。

 今回はその五つの条件のうちの「時間」について読んでみます。成果を上げるための時間の使い方とはどんなものでしょうか。
 
 時間の使い方は練習によって改善できる。だがたえず努力をしないかぎり、仕事に流される。したがって次にくる一歩は体系的な時間の管理である。時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していくことである。そのための方法は三つある。

 第一に、する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである。すべての仕事について、まったくしなかったならば何が起こるかを考える。何も起こらないが答えであるならば、その仕事は直ちにやめるべきである。
 第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである。毎晩会食していた社長は、さらに三分の一はほかの幹部に任せられることを知った。参席者のリストに社名が出ていればよかった。
 時間管理のための第三の方法は、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除することである。人は、他人の時間まで浪費していることがある。
 そのような時間の浪費が簡単にわかる徴候はなくとも、発見のための簡単な方法はある。聞くことである。「あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているか」と定期的に聞けばよい。

   P.F.ドラッカー『経営者の条件』p58-61より抽出、編集して引用


 コロナ禍を通じて、私は時間の使い方がだいぶ変わりました。おそらく、多くの人もそうではなかったかと思います。

 特に、二番目の事例にもありますが、会食の機会がだいぶ減りました。そして、会食をしなくても何とかなる・・・という空気が社会に生まれました。

 私は宴会場を経営しておりましたので、宴会を盛り上げようと、どの店であろうと、いままでできる限り宴会には参加してきましたが、これほど宴会のなかった期間はいまだかつてありませんでした。この期間を通じて、ノンアルコールの日が、人生で最も増えてきました。(健康のために良いことです。)

 成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。たとえ一日の四分の一であっても、まとまった時間であれば重要なことをするには十分である。逆にたとえ一日の四分の三であってもその多くが細切れではあまり役に立たない。
 したがって時間管理の最終段階は、時間の記録と仕事の整理によってもたらされた自由な時間をまとめることである。
 時間をまとめるには方法がある。ある人たち、なかでも年配の人たちは、週に一日は家で仕事をしている。編集者や研究者がよく使う方法である。
 ある人は会議や打ち合わせなど日常の仕事を週に二日、例えば月曜日と金曜日に集め、他の日、特に午前中は重要な問題についての集中的かつ継続的な検討に充てている。

               P.F.ドラッカー『経営者の条件』p73より引用


 ドラッカーの成果を上げるための時間の使い方とは、以下のようなものではないかと思います。

 自分の時間の使い方をよく調べて、時間の浪費があるのだとしたら、それらを廃棄します。そこに細切れの時間が生まれます。
 そこで生み出された細切れの時間を大きくまとめていって、自由な時間の大きな塊をつくります。
 そこで出来た時間の塊を、やりたいこと、やるべきことに投入していくということです。

 誰にも邪魔されないように、ホテルで一泊二日の一人合宿をする方法もあるでしょう。私は経営計画書を作るための合宿や、社長としての個人計画を作るための泊まり込みの合宿に、かつて何度も参加したことがあります。

 そこまでしなくても、カラオケボックスに入ったり(歌うためではありません)、JR東日本のステーションワークに入って集中するのもよいでしょう。平日昼間のカラオケボックスの料金はとても安いです。最近、長野駅や上田駅にもステーションワークはあります。

 「する必要のまったくない仕事」「何の成果も生まない時間の浪費である仕事」というドラッカーの言葉を冒頭でご紹介しましたが、改めて、ここはよく考えてください。
 
 子供や親との食事、会社の同僚との共有時間、コーヒーを入れる時間など、人によって異なりますが、そのようないつもの時間がその人にとって、とても大切な時間である場合があります。間違って大切な時間を捨てることのないようにしてほしいものです。
 
 私は自分のシャツやパンツ(ズボン)はすべて自分でアイロンをかけていますが、この時間は結構好きです。アイロンに集中できるからです。(坐禅をしているのと同じだと思っています。)

 どうかすてきな秋をお過ごしください。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

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 Hitoshi Yonezu at 16:08  | ドラッカー

成果を上げるための5つの能力

2023年09月12日

 台風の季節となり、各地で災害が発生しております。被災されたみなさま、関係者のみなさまにお見舞いを申し上げます。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、今回のブログから、ドラッカーの『経営者の条件』をご紹介します。

 この本はドラッカーの著作の中で唯一、セルフマネジメントについて書かれた本です。

 セルフマネジメントとは、直訳すると自己管理です。自分の行動、精神、健康など管理して、仕事や人生において、よりよい成果を上げるための方法です。

 以下、ドラッカーの「成果を上げるための能力」について、本文を編集して引用します。
 
 私は、成果をあげる人のタイプなどというものは存在しないことにかなり前に気づいた。私が知っている成果をあげる人は、気質と能力、行動と方法、性格と知識と関心などあらゆることにおいて千差万別だった。共通点はなすべきことをなす能力だけだった。
 
 成果をあげるために身につけておくべき習慣的な能力は五つある。

 (1) 何に自分の時間がとられているかを知ることである。残されたわずかな時間を体系的に管理することである。
 (2) 外の世界に対する貢献に焦点を合わせることである。仕事ではなく成果に精力を向けることである。「期待されている成果は何か」からスタートすることである。
 (3) 強みを基盤にすることである。自らの強み、上司、同僚、部下の強みの上に築くことである。それぞれの状況下における強みを中心に据えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。すなわちできないことからスタートしてはならない
 (4) 優れた仕事が際立った成果を領域に力を集中することである。優先順位を決めそれを守るよう自らを強制することである。最初に行うべきことを行うことである。二番手に回したことはまったく行ってはならない。さもなければ何事もなすことはできない。
 (5) 成果をあげるよう意思決定を行うことである。決定とは、つまるところ手順の問題である。そして、成果をあげる決定は、合意ではなく異なる見解に基づいて行わなければならない。もちろん数多くの決定を手早く行うことは間違いである。必要なものは、ごくわずかの基本的な意思決定である。あれこれの戦術ではなく一つの正しい戦略である。

    P.F.ドラッカー『経営者の条件』p41-44より抽出、編集して引用


 ドラッカーは成果を上げる人にタイプというものはないと述べています。

 穏やかな人でも、声の大きな人でも、論理的な人でも、感情豊かな人でも、どのようなタイプの人でも成果を上げることができるのです。

 成果を上げる人の共通点はなすべきことをなす能力だけである、というのです。

 なすべきことをなす能力とは何か?

 ドラッカーは5つの能力を示しています。時間、貢献、強み、集中、意思決定です。この5つさえ自分で管理できれば、大きな成果を上げることができるということです。
 
 (1)時間について
 自分の時間の使い方を計算してみると、成果のために利用している時間は少ないものです。一度一日の行動を記録してみるとよいです。

 (2)貢献について
 自分に期待されている貢献は何かを明確に把握することです。意味のないことにこだわってしまって、別の方向に走っていることもあるでしょう。

 (3)強みについて
 自分で自分の強みは理解できているでしょうか。強みでないことを基盤としているならば、自分の立ち位置を見直す必要があるかもしれません。

 (4)集中について
 いろいろなことを一度に行うと、成果を上げるまでに時間がかかります。まず何に集中して仕上げるか?逆に言えば、劣後順位を定めることです。

 (5)意思決定について
 つまるところ、最終的には、意思決定をしないと成果は上げられないです。意思決定をすることは壁を破ることであり、戦略であり、決断です。反対されることが多いです。
 
 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

 Hitoshi Yonezu at 09:59  | ドラッカー

マネジメントの正統性とは?

2023年08月30日

 みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『マネジメント』を読んでいます。前回から下巻に入りましたが、途中をだいぶ飛ばしまして、結論に入ります。

 「結論 マネジメントの正統性」を読んでみます。以下、本文を編集して引用します。

 社会においてリーダー的な階層にある者は、自らの役割を果たすだけでは不十分である。成果をあげるだけでは不十分である。正統性をもたなければならない。社会から正統なものとしてその存在を是認されなければならない。

 マネジメントがその権限を認められるうえで必要とされるものが、正統性である。マネジメントたる者は、自らの権限の基盤を、組織なるものの目的と特性に由来するところの正統性に置かなければならない。

 そのような正統性の根拠は一つしかない。それが組織の特性である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。すなわち、人の強みを生産的なものにすることである。組織とは、個としての人間一人ひとり、および社会的存在としての人間一人ひとりに貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。

 組織の基盤となる原理は、「私的な強みは公益となる」である。これが、マネジメントの正統性の根拠である。マネジメントの権限の基盤となりうる正統性である。

 マネジメントは、制御されず制御しえず、したがって専制的たらざるをえない存在としての中央の政治権力の僕ではないという意味において私的な存在である。と同時に、意識して公然と、公的なニーズを自らの自立した組織にとっての私的な機会に転換すべく働くという意味において、公的な存在である。

 そしてさらに必要とされるものが、マネジメントの人間としての役割と機能に関わる仕事である。自立した存在としての組織のマネジメントたらんとするのであれば、自らを公的な存在としえなければならない。すなわち組織としての責任の真髄、一人ひとりの人間の強みを生産的なものとし、成果をあげさせるという責任を負わなければならない。

     P.F.ドラッカー『マネジメント(下)』 
     結論「マネジメントの正統性」p297-304より抽出、編集して引用

 この部分は『マネジメント』の結論が述べられているところで、私が大変好きな部分です。

 初めてここを読んだとき「マネジメントって、いろいろな経営者やコンサルがいろいろなことを言うけれど、結局これだ!」と感動したことを覚えています。

 二段目の文章を原書で読んでみます。

 What managers need to be accepted as legitimate authority is a principle of morality. They need to ground their authority in a moral commitment which, at the same time, expresses the purpose and character of organizations.

 “morality”(道徳)、"moral"(道徳的な)という言葉が訳文では飛ばされているのは少し気になるところです。

 企業において社長が権限を行使してマネジメントをしてよい根拠は、その企業の目的から導き出される正統性にもとづかなくてはならないのです。「正統性」は原書ではlegitimate authorityと表記されています。正統な権威、正当な権力ということです。

 その正統性は道徳的な原則、コミットメントにもとづいていなくてはなりません。(こう書いてしまってよいかと私は思います。)
 
 「マネジメント」という行為は、お役所にも、他人にも、誰にも制御されることはないですから、公的なものではなく、私的なものであります。

 しかし、企業は、道徳的な価値観にもとづいて、世の中の人々がもっているニーズや問題を解決したり、欲しいと考えている商品、サービスを創り出したりすることができます。この意味において、企業には公的な存在としての要素があります。企業がこれらを実現することができるならば、企業は世の中の役に立つ公的な存在となりうるのです。

 (道徳的な価値観にもとづかないマネジメントは、お客さまのご満足よりも、自社の売上重視、利益重視となるのではないでしょうか。)

 企業で働く人々にとっては、企業において自分の強みを生かすことができます。企業という機関を通じて、自分の力を生かして(レバレッジを効かせて)社会に成果を上げることが出来ます。

 つまり、企業は、所属する個人が力を発揮し自己実現をできるように活躍する場を提供しつつ、経営理念を達成するべく経営しますし、個人は自らの強みをもって企業に貢献します。
 
 企業は個人の力の貢献を得て、社会に対して成果を上げるのです。
 
 これらの機能の間に存在して、この働きをさらに良くしていこうというのが「マネジメント」です。

 この仕組みが「マネジメントの正統性」であろう、と私は考えています。

 私はまた至っておりませんが、ここに達するように経営をしておこう!(こうなろう!)と常に考えております。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献: 『マネジメント 課題、責任、実践(下)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
  
タグ :P.F.ドラッカーマネジメント

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

トップマネジメントの仕事

2023年07月13日

 梅雨明けが待ち遠しい今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『マネジメント』を読んでいます。前回の続きですが、中巻の後半をだいぶ飛ばしまして、下巻に入ります。「第50章 トップマネジメントの仕事」を読んでいきます。以下、本文を編集して引用します。
 
 トップマネジメントの仕事の一部を列挙するならば、次のとおりである。

 (1)組織としてのミッションを考える役割がある。すなわち、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を考えなければならない。
 (2)基準を設定する役割、すなわち組織全体の規範を定める役割、良識機能を果たす役割がある。
 (3)組織をつくりあげ、それを維持する役割がある。明日のための人材、特に明日のトップマネジメントを育成する必要がある。加えて、組織構造を設計する役割がある。
 (4)トップの座にある者だけの仕事として、渉外の役割がある。顧客や取引先との関係である。金融機関や労働組合との関係、政府機関との関係である。
 (5)公的行事や夕食会への出席など、数限りない儀礼的な役割がある。これは、むしろ大企業よりも、地域において目立つ存在になっている中企業、小企業のトップマネジメントとして逃れられない仕事である。
 (6)重大な危機に際しては自ら出動するという役割、著しく悪化した状況に取り組む役割がある。

 「組織の成功と存続にとって決定的に重要な意味をもち、かつトップマネジメントだけが行いうる仕事は何か」

 「事業全体を見ることができ、今日と明日のニーズをバランスさせることができ、最終的な意思決定をなしうる者だけが行うことのできるものは何か」

    P.F.ドラッカー 『マネジメント(下)』
     第50章「トップマネジメントの仕事」p9-12より抽出、編集して引用


 トップマネジメントのなすべき仕事が紹介されています。トップマネジメントはミドルマネジメントやマネジャーとは異なり、組織のトップに立つ社長や経営陣のことです。私はこの中では(1)~(3)が最も大切だと思います。

 (1)はドラッカーの有名な問いかけですが、組織のミッション(使命)を考えることです。組織の直接的な成果は何か?なによりもまずこれがなくては事業が始まりません。わが企業が何をするのか、目的を決めて、その達成に努めることです。

 (2)には「良識機能」という聞きなれない言葉が出てきます。組織の良心をつくり、保つのはトップマネジメントの仕事です。組織の価値観への取り組みといえます。

 (3)は組織をつくることであり、人材育成であります。

 (1)~(3)はそれぞれ、直接の成果、価値への取り組み、人材育成とよばれるものです。あらゆる組織に必要な三つの成果としてドラッカーが取り上げているものです。『経営者の条件』第3章81ページを参照してください。

 (4)は会社の代表として利害関係者と関係を保つことです。
 
 (5)には地域や業界での儀礼的なイベントに参加することであり、ロータリークラブなどで活動することもこれに当たるのではないかと思います。現代においては、社長は本業に専念しなさい、と言われることが多いですが、ドラッカーはトップマネジメントの役割として、社会的な活動を認めていました。
 
 (6)は、重大な問題が発生した時には、自ら前に出て対応することです。指揮官先導ということではないでしょうか。

 そして、最後の二つの問いは、社長に対して「そのような仕事をしているか?」と問われていることです。

 6月末をもちまして当社の祖業であります上田市の『ささや』を閉店いたしました。永い間ご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました。

 組織の成功と存続を想い、今日と明日のニーズをバランスさせるために、5年後、10年後を見据えて、経営者として、大きな決断をいたしました。
 
 『ささや』は閉店いたしましたが、ささや株式会社は社員、パートナー一同、元気に営業を続けてまいります。今後の御利用を心よりお待ちしております。
 
 みなさまどうぞご自愛ください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献: 『マネジメント 課題、責任、実践(下)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
タグ :P.F.ドラッカーマネジメント(下)

 Hitoshi Yonezu at 13:10  | ドラッカー

真摯さに欠ける者は組織を破壊する

2023年06月08日

 さくらんぼの季節となりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『マネジメント(中)』を読んでいます。今回は「第36章 成果中心の精神」の「真摯さ」(Integrity, the Touchstone)の節からご紹介します。

 以下、p109-110の本文を編集して引用します。
 
 真摯さ(integrity)を絶対視して、初めてマネジメントの真剣さが示される。それは人事に表れる。リーダーシップが発揮されるのは、真摯さによってである。範となるのも、真摯さによってである。真摯さは、取って付けるわけにはいかない。

 真摯さはごまかせない。ともに働く者、特に部下には、上司が真摯であるかどうかは数週でわかる。無能、無知、頼りなさ、態度の悪さには寛大になれる。だが真摯さの欠如は許さない。そのような者を選ぶ者を許さない。真摯さを定義することは難しい。しかし、マネジメントの地位にあることを不適とすべき真摯さの欠如を明らかにすることは難しくない。

 ①人の強みよりも弱みに目のいく者をマネジメントの地位に就けてはならない。
 ②マネジメントたる者は実践家でなくてはならない。評論家であってはならない。
 ③何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心をもつ者をマネジメントの地位に就けてはならない。
 ④真摯さよりも頭のよさを重視する者は、マネジメントの地位に就けてはならない。
 ⑤できる部下に脅威を感じることが明らかな者も、マネジメントの地位に就けてはならない。
 ⑥自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジメントの地位に就けてはならない。

 いかに知識があり、聡明であって、上手に仕事をこなしても、真摯さに欠ける者は組織を破壊する。

 このことは特にトップマネジメントについていえる。しかも、組織の精神はトップで形成される。組織が偉大たりうるのはトップが偉大なときだけである。組織が腐るのはトップが腐るからである。「木は梢から枯れる」との言葉どおりである。したがって、範とすることのできない者を高い位置に就けてはならない。

            『マネジメント(中)』第36章「成果中心の精神」
                   p109-110より抽出、編集して引用


 真摯さ(integrity)は、日本語としては普段はあまり使われることがないと思います。上田先生の翻訳によるドラッカーの言葉として大変有名になりました。

 しかし、真摯さとは何か?と聞かれると、なかなか答えづらいと思います。

 『マネジメント』には日経BPから出版されている別の訳書があります。有賀裕子さんが翻訳をされていて、integrityを「高潔さ」と訳されています。

 ドラッカーは「真摯さ」は後から身につけることでのできない資質で、この資質がない者をマネジメントにつけてはならない、と述べています。

 真摯さに欠けるマネジャーとはどんな人なのか、引用した①~⑥を解説します。自分だったらどうかと考えながら読んでいただくと分かりやすいかと思います。

 ①ほめることが出来ず、揚げ足取りをして、怒ってばかりいるマネジャーです。素直でないとも言えます。
 
 ②行動しないで評論ばかりする人です。
 
 ③気に入った部下や好きな部下をえこひいきするマネジャーや有名人や他人の言うことを盲信するマネジャーです。
 
 ④頭がよいことよりも誠実な人柄が大切だということです。

 ⑤将来自分を追い越す恐れのある優秀な部下を蹴落とそうとする人です。

 ⑥自分の出来る範囲、やりやすい範囲で考えてしまう人です。これでは企業は伸びません。
 
 真摯さに欠ける者(高潔さに欠ける者)が社長だったら、組織が破壊されます。真摯さに欠けるマネジャーも然りです。耳が痛い言葉です。

 ご覧いただきありがとうございました。みなさまどうぞご自愛ください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
タグ :P.F.ドラッカーマネジメント真摯さ

 Hitoshi Yonezu at 12:05  | ドラッカー

目標管理と自己目標管理の違い

2023年05月01日

 風薫る季節となりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『マネジメント(中)』を読んでいます。今回は「自己目標管理」の節を読みます。

 よく耳にする「目標管理」とは「自己目標管理」のことだった、という点について解説します。
 
 自己目標管理(MBO:Management by Objectives and Self-control) の最大の利点は、自らの仕事を自らマネジメントできるようになることにある。自己管理が強い動機づけをもたらす。適当にこなすのではなく、最善を尽くす願望を起こさせる。目標を上げさせ、視野を広げる。

 自己目標管理の値打ちは、支配によるマネジメントの代わりに、自己管理によるマネジメントを可能にするところにある。
 自らの仕事ぶりを管理するには、自らの目標を知っているだけでは十分でない。目標に照らして、自らの仕事ぶりと成果を評価できなければならない。
 したがって、あらゆる分野にわたって、自己評価のための明確な情報を与える必要がある。それらの情報は数学である必要はない。厳密である必要もない。しかし明瞭でなければならない。意味があり、かつ直截でなければならない。正確さの程度を知りうるだけの信頼性をもつものでなければならない。難しい説明や解釈を必要としない平易なものでなければならない。
 あらゆる者が自らの仕事ぶりを測定するための情報を手にすることが不可欠である。しかも、必要な措置がとれるよう、それらの情報は早く提供しなければならない。
 それらの情報は、彼ら自身に伝えるべきであって上司に伝えるべきではない。情報は、自己管理のためのツールであって、上から管理するためのツールではない。このことは、情報の収集、分析、統合に関わる技術進歩の結果、それらの入手能力が急速に増大した今日、特に強調しておく必要がある。

    『マネジメント(中)』第34章「自己目標管理」p83-85より抽出して引用


 日本において「自己目標管理」は「目標管理」である、と誤解して広まり、大手企業などにおいて、成果主義を導入するための道具にされてしまいました。故に、みなさまの中には「目標管理」という言葉に嫌悪感をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
 
 ドラッカーもいい迷惑だったと思います。ご紹介した『マネジメント(中)』p83にはわざわざ原語が添えられています。

 
自己目標管理(MBO:Management by Objectives and Self-control)



 これをもう少し言葉を加えて訳せば「自己規律による目標管理」ということになると思います。

 ドラッカーがMBOを考えだす以前の企業では、上司の指示通りに仕事をするのが当たり前であり、仕事の目標に自分の考えを入れることは出来ませんでした。半分ジョークではありますが、MBOが発明される前の言葉として、MBB:Management by Boss(上司による管理)というものがあります。

 日本にMBOが導入されたときの問題があります。
 
 原文には”Management by Objectives”の後に、”and Self-control”とはっきり書かれているのですが、それが抜け落ちてしまいました。「自己目標管理」は文字通り、組織の目標を元にして、自分で自分の目標を決める方法です。しかし「自己」がなくなり、ただの「目標管理」になってしまいました。

 当時、欧米のように成果主義を導入して、人件費の削減をしたいと思っていた日系企業が、「目標管理」という言葉だけを取り上げて、自社に都合の良いように解釈しました。
 そして、部下の仕事もよく分かっていない上司が無理な目標を課し、その結果をもって、降格したり、降給したりという、裏でやりたいと思っていたことを、権力によって表で堂々と実行するようになったのです。

 本来目標は自分で決めるべきものですし、ここに書かれていますように、それに必要な情報をすべて、上司ではなくて、本人に与えなくてはならなかったのです。誤った「目標管理」により、パワハラなどさまざまな問題が発生しました。これによる経済、経営への影響は大きかったと思います。

 本日はありがとうございました。みなさまどうぞご自愛ください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
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 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

マネジメント教育

2023年04月04日

 風に舞う花吹雪が目にまぶしい今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『マネジメント(中)』を読んでいます。今回は「マネジメント教育」という節をご紹介します。
 
 すでに社会は、「どれだけの教育ある者を扶養できるか」から、「どれだけの教育のない者を扶養できるか」へと問題の焦点を移している。こうしてマネジメント教育は、企業が社会に対して果たすべき責任を果たすためにも必要とされている。
 もし企業にその力がなくなれば、社会は放置しない。なぜならば、組織、特に大企業が継続して成果をあげていくことが、社会にとっては死活的に重大だからである。社会は、企業という富を生み出す機関が、有能なマネジメントの欠落のために危機に瀕することを許さないし、その余裕もない。
 しかも今日の社会においては、仕事は生計の資以上のものを意味する。人は、仕事に誇りと自己実現という金銭を超えた満足を求める。したがって、マネジメント教育とは、仕事を生計の資以上のものにすることであるといって過言でない。それは、働く者が自らの能力をフルに発揮できるようにすること、すなわち仕事をよき人生にすることである。
 マネジメントの人間は、育つべきものであって、生まれつきのものではない。したがって、われわれは明日のマネジメントの育成、確保、スキルに体系的に取り組まなければならない。運や偶然に任せることは許されない。

    『マネジメント(中)』第33章「マネジメント教育」p55-56より引用


 企業は社会の一つの機関であり、企業が社会にとって有益なことをしているから 存在を許されているのだ、というのがドラッカーの考え方です。
 
 この文章で述べられていることは、その考え方の一つであると言えます。マネジメント教育を行って、マネジャーを育成することも、社会が企業に要請している重要なことの一つであるのです。
 
 マネジメントはドラッカーが考えた概念ですから、せいぜいこの100年で構築されてきたことです。マネジメントの能力を生まれつき持っている人はいないのです。マネジャーは企業が育てるものであり、マネジメント教育は企業の責任の一つであります。
 
 働く人から見ると、企業からマネジメントを教えてもらい、マネジメントができるようになる(マネジャーになる)ことで、給料の増額はもちろんですが、給料以上の価値、すなわち誇りと自己実現という満足を得ることが出来るようになるのです。
 
 これは企業に都合の良い考え方では?と勘繰る向きもあるかもしれませんが、私はそうではないと思います。
 ドラッカーは、企業を観察している中で、ボスから命令された仕事にイヤイヤ取り組んでいる労働者も見たでしょうが、一方で、マネジャーとして前向きな態度で生き生きと働き、大きな成果を上げている労働者も見たのです。これらのことから、マネジメントの構造に気がついたのではないでしょうか。
  
 今年の夏は暑くなるそうです。みなさまどうぞご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
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 Hitoshi Yonezu at 15:41  | ドラッカー

現場にマネジメントを任せるには?

2023年03月02日

 少しずつ暖かくなり、春らしさが感じられるようになりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログでは『マネジメント』の中巻を読んでいます。今回は「マネジメントの権限」という節から重要な部分を抽出してご紹介します。
 
 いかなるマネジメントを行うかはトップマネジメントが決める。そのための最終製品が決定され、事業上の目標が設定される。
 しかしマネジメントの仕事は、下から決めていかなければならない。生産、販売、設計の最前線の活動からスタートしなければならない。すべては最前線のマネジメントの仕事ぶりにかかっている。上層のマネジメントの仕事は、この最前線のマネジメントを助けるための派生的な仕事にすぎない。
 あらゆる権限と責任が最前線にある。彼らにできないことだけが上層にゆだねられる。いわば、最前線のマネジメントが組織のDNAである。上層の機関のなすべきことは、すべてそこで規定される。

 マネジメントが行うことのできる決定の限界については、一つだけ簡単なルールがある。GEの電球事業部の内規は、アメリカ憲法をなぞって、「明文をもって規定されていないかぎり、権限は下位のマネジメントにある」としている。これは「命じられていないかぎり、すべては禁じられる」とのプロシア法の考えの逆である。 担当する仕事について行うことのできない決定は、すべて明文をもって明らかにしておかなければならない。他のことについては、すべて権限と責任を有するものと解さなければならない。

『マネジメント(中)』第32章「マネジメントの権限」p50-52より抽出して引用


 この企業の経営理念は何か?
 この企業はなんのために存在するのか?
 どのような事業を行っていくのか?

 ・・・など、企業の最重要事項を決めるのは、社長です。しかし、それをどのように行っていくかについては、現場の最前線のマネジャーに任せるべきなのです。社長の仕事は、経営理念のもとで、最前線のマネジャーを助けることです。
 
 GEの事例にありますように、「やってはいけない」と書いてない限り、すべては現場のマネジャーに権限と責任があります。権限と責任の両方ですから、自分で決めたことは当然自分で責任をとってもらうことになります。
 権限と責任をセットにして下位のマネジャーに移管していかないとマネジメントは機能しません。社長としてはすべてのことに口を出したい気持ちがありますが、それをやり始めると、マネジメントにはなりません。家業のごとく、一日中、社長が怒鳴り、騒ぎ続けることになってしまうでしょう。
 
 ただし、現場のマネジャーに任せる際には、大前提として、現場のマネジャーは、企業の経営理念をよく理解し、納得し、賛同していなければなりません。この前提がなくして任せることはできないでしょう。
 
 私自身も社内で繰り返し繰り返し経営理念を説き続けていますが、どのくらい分かってもらえているのか?不十分であると反省しております。まだ到達点は見えません。

 季節の変わり目です。みなさまどうぞご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
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 Hitoshi Yonezu at 17:00  | ドラッカー

職務設計の間違い6つ

2023年02月01日

 春の温かさが待ち遠しい今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログでは『マネジメント』の中巻を読んでいます。

 前回は、マネジメントに不可欠であり、後天的に備えることが出来ない資質として「真摯さ」についてご紹介しました。本日は続きの部分、マネジメントの仕事を設計する際の「職務設計の間違い」の6項目について、重要な部分を抽出してご紹介します。

 以下は引用です。

 (1)第一に、最も一般的な間違いは、仕事を狭く設計し、人が仕事で成長することを妨げることである。マネジメントの仕事は、その職にあるかぎり、学び、育つことのできるものにしなければならない。大きく設計した仕事が害をなすことはない。たとえ害があっても、直ちに直すことができる。ところが、小さく設計した仕事は、人と組織を知らぬ間に麻痺させる。

 (2)マネジメントの働きを妨げる間違いの第二に、仕事とはいえない仕事、つまり補佐の仕事がある。マネジメントの仕事には目的、目標、役割がなければならない。明確な貢献ができるものでなければならない。責任ある存在となれなければならない。 ところが、補佐の役には直接貢献できることがない。自分だけでは責任ある存在とはなりえない。自身の目的、目標、役割がない。

 (3)間違いの第三は、マネジメントが自分の仕事をもたないことである。マネジメントとは仕事である。しかしそれは、マネジメントがすべての時間を費やすほど時間を要する仕事ではない。マネジメントの人間の仕事は、マネジメントの仕事と自分の仕事の二つからなる。マネジメントの人間とは、マネジメント兼専門家である。 したがって、自分の仕事がなければならない。十分な仕事がないとき、マネジメントの人間は部下の仕事をとってしまう。

 (4)第四に、マネジメントの仕事は、一人あるいはその直接の部下を使うだけでなしうるものにしなくてはならない。会議や調整を常に必要とする仕事は間違いである。最初から人間関係を織り込むことは無用としなければならない。

 (5)第五に、報奨の不足を肩書で補ってはならない。もちろん、仕事の中身の不足を肩書で補ってはならない。採用すべき原則は、優れた仕事ぶりには報酬を与えることとし、肩書は仕事、地位、責任が変わったときにのみ変えることとすべきである。

 (6)第六に、「後家づくり」の仕事は再考して廃止しなければならない。今日では、優秀な者が連続して失敗する仕事が「後家づくり」である。理屈ではよくできた仕事に見える。しかし、実績のある者が二人続けて失敗したならば、そのような仕事は廃止し、仕事の内容を再構成しなければならない。

         『マネジメント(中)』第32章「マネジメントの仕事の設計」
                       p33-41より抽出して引用


 これらはマネジャーの仕事を設計する際に気をつけなくてはならないことを6項目にまとめたものです。一つずつ見ていきます。

 (1)マネジャーの仕事を小さく設計すると、仕事を軽々とこなしてしまい、マネジャーはそれ以上成長することができません。仕事を大きく設計することの害はありませんが、小さく設計すると人と組織を麻痺させてしまいます。

 (2)マネジャーに補佐の仕事をさせることは避けなければなりません。補佐の仕事は、マネジャーには小さすぎます。責任がないために、貢献もはっきりしません。
 
 (3)マネジメントは仕事ですが、フルタイムの仕事ではありません。例えば1000人が働く巨大工場であるならば、工場長はマネジメントだけに専念する必要があるでしょう。しかし、一般のマネジャーがマネジメントの仕事だけに専念するということはありません。マネジャーは自分の専門の仕事を抱えながら、マネジメントをすることになります。
 
 (4)マネジメントの仕事は自分一人で完結できるものか、せいぜい一人の部下を使って出来るものでなければなりません。マネジャーなのに、一人で決められず、常に会議を開く必要があったり、多くの同僚の援助が必要だったりしたら、マネジャーの地位である意味がありません。

 (5)報奨が少ないから、肩書をつけてあげようというのは、経営者の都合であります。優れた仕事をする人の報奨は上げなくてはなりません。肩書で埋め合わせすることは出来ないのです。

 (6)「後家づくりの仕事」とは、ドラッカーらしい面白い表現ですね。原書でもその言葉通り“widow-makers”と表現されています。(1)とは逆の意味ですが、誰もできないような仕事があるとしたら、それは仕事の設計が間違っています。それを部下にやらせるのはあまりにも無責任です。

 マネジメントの仕事の設計と言いますと、難しい感じがしますが、以上のことに気を付けて考えていきます。このように、原則が頭に入っていると、間違った判断はしなくなるでしょう。
 ドラッカーは細かいところまでよく見ているな、と感心します。

 この冬は本当に寒い日が続きます。1月には会社の水道も凍結してしまったほどです。どうぞご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。


 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
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 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

たった一つだけ、必要な資質「真摯さ」とは?

2023年01月04日

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年は大変お世話になりました。誠にありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、このブログでは『マネジメント』の中巻を読んでいます。前回は「マネジメントの5つの仕事」についてご紹介しました。続きを読んでいきます。

 人のマネジメントに関わる能力、例えば議長役や面接の能力は学ぶことができる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて、人材開発に有効な方策を講ずることもできる。

 だが、それだけでは十分でない。スキルの向上や仕事の理解では補うことのできない根本的な資質が必要である。すなわち真摯さである

 最近は、愛想をよくすること、人を助けること、人づきあいをよくすることが、マネジメントの資質として重視されている。だがそのようなことで十分なはずはない。
 事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくない者がいる。この種の者は、気難しいくせにしばしば人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。自ら知的な能力をもちながら、真摯さよりも知的な能力を評価したりしない。
 逆に、このような資質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジメントとしても紳士としても失格である。
 マネジメントの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジメントにできなければならないことは学ぶことができる。

 しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである。

   『マネジメント(中)』第31章「マネジメントの仕事」p29-30より引用


 ドラッカーは後から身に付けることが出来ない資質、始めから身に付けていなければならない資質として、たった一つだけ「真摯さ」を挙げました。その他のマネジメントの仕事は学ぶことができるが「真摯さ」だけは学ぶことは出来ない、と言ったのです。
 「真摯さ」はドッラカリアン(ドラッカー好きな人たち)の中でしばしば議論になる言葉です。上の文章のうち「真摯さ」が含まれる部分の原書の英文を紹介します。

 
But when all is said and done, developing men still requires a basic quality in the manager which cannot be created by supplying skills or by emphasizing the importance of the task. It requires integrity of character.


 But one quality cannot be ‘learned, one qualification that the manager cannot acquire but must bring with him. It is not genius; it is character.


 原書では「真摯さ」は、integrity of characterit is characterという英語で表現されています。

 上田惇生先生の翻訳(ダイヤモンド社発行の『マネジメント』)では、両方とも「真摯さ」と訳されていますが、有賀裕子先生の翻訳(日経BP社の『マネジメント』)では、順に「人間としての誠実さ」「人格」と訳されています。

 リーダーズ英和辞典でこれらの単語を調べますと、以下のような説明があります。

 integrity
 ⦅道徳的、人格的に信頼できる⦆正直、清廉、高潔、誠実、健全、完全、無欠(の状態)

 character
 ⦅個人、国民の⦆性格、品性、人格、人柄、気骨

 新明解国語辞典で「真摯」を調べると次の意味が説明されています。

 真摯:他事を顧みず、一生懸命やる様子、まじめ 

 Integrityはintegrate(全体にまとめる、統合する)という動詞から派生した言葉で、語源は完全を意味するintegritasというラテン語にあるようです。
 
 アメリカはではリーダーに求められる資質としてintegrityと言う言葉がよく使われるようです。私はそのまま「誠実」「高潔」などの意味として解釈していいのではないかな、と思っています。
 
 人の上に立つリーダーには、高い人格が求められます。あたりまえですが、人格はあとからとってつけるのは難しいのです。誠実さ、高潔さ、真摯さなどの資質をもたない人が経営者になったらどうなるでしょうか。

 そういう人がいたとしても「私は違う」と言われればそこまでなので、指摘することはできませんものね。なかなか人にそんなこと言えません。
 
 結局、何かの事件が発生してようやく、経営者にそぐわない人格だったことが発覚するのだと思います。
 
 他人ごとではありません。私も経営者の端くれです。流されないように、常に我が身を省み続けなくてはならないことです。

 今年がみなさまに昨年よりももっと幸せな年となりますことを祈念しております。寒い日が続きます。どうぞご自愛ください。


 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

  
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 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

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