たった一つだけ、必要な資質「真摯さ」とは?

2023年01月04日

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年は大変お世話になりました。誠にありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、このブログでは『マネジメント』の中巻を読んでいます。前回は「マネジメントの5つの仕事」についてご紹介しました。続きを読んでいきます。

 人のマネジメントに関わる能力、例えば議長役や面接の能力は学ぶことができる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて、人材開発に有効な方策を講ずることもできる。

 だが、それだけでは十分でない。スキルの向上や仕事の理解では補うことのできない根本的な資質が必要である。すなわち真摯さである

 最近は、愛想をよくすること、人を助けること、人づきあいをよくすることが、マネジメントの資質として重視されている。だがそのようなことで十分なはずはない。
 事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくない者がいる。この種の者は、気難しいくせにしばしば人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。自ら知的な能力をもちながら、真摯さよりも知的な能力を評価したりしない。
 逆に、このような資質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジメントとしても紳士としても失格である。
 マネジメントの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジメントにできなければならないことは学ぶことができる。

 しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである。

   『マネジメント(中)』第31章「マネジメントの仕事」p29-30より引用


 ドラッカーは後から身に付けることが出来ない資質、始めから身に付けていなければならない資質として、たった一つだけ「真摯さ」を挙げました。その他のマネジメントの仕事は学ぶことができるが「真摯さ」だけは学ぶことは出来ない、と言ったのです。
 「真摯さ」はドッラカリアン(ドラッカー好きな人たち)の中でしばしば議論になる言葉です。上の文章のうち「真摯さ」が含まれる部分の原書の英文を紹介します。

 
But when all is said and done, developing men still requires a basic quality in the manager which cannot be created by supplying skills or by emphasizing the importance of the task. It requires integrity of character.


 But one quality cannot be ‘learned, one qualification that the manager cannot acquire but must bring with him. It is not genius; it is character.


 原書では「真摯さ」は、integrity of characterit is characterという英語で表現されています。

 上田惇生先生の翻訳(ダイヤモンド社発行の『マネジメント』)では、両方とも「真摯さ」と訳されていますが、有賀裕子先生の翻訳(日経BP社の『マネジメント』)では、順に「人間としての誠実さ」「人格」と訳されています。

 リーダーズ英和辞典でこれらの単語を調べますと、以下のような説明があります。

 integrity
 ⦅道徳的、人格的に信頼できる⦆正直、清廉、高潔、誠実、健全、完全、無欠(の状態)

 character
 ⦅個人、国民の⦆性格、品性、人格、人柄、気骨

 新明解国語辞典で「真摯」を調べると次の意味が説明されています。

 真摯:他事を顧みず、一生懸命やる様子、まじめ 

 Integrityはintegrate(全体にまとめる、統合する)という動詞から派生した言葉で、語源は完全を意味するintegritasというラテン語にあるようです。
 
 アメリカはではリーダーに求められる資質としてintegrityと言う言葉がよく使われるようです。私はそのまま「誠実」「高潔」などの意味として解釈していいのではないかな、と思っています。
 
 人の上に立つリーダーには、高い人格が求められます。あたりまえですが、人格はあとからとってつけるのは難しいのです。誠実さ、高潔さ、真摯さなどの資質をもたない人が経営者になったらどうなるでしょうか。

 そういう人がいたとしても「私は違う」と言われればそこまでなので、指摘することはできませんものね。なかなか人にそんなこと言えません。
 
 結局、何かの事件が発生してようやく、経営者にそぐわない人格だったことが発覚するのだと思います。
 
 他人ごとではありません。私も経営者の端くれです。流されないように、常に我が身を省み続けなくてはならないことです。

 今年がみなさまに昨年よりももっと幸せな年となりますことを祈念しております。寒い日が続きます。どうぞご自愛ください。


 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

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