成果を上げる貢献とは?

2023年11月15日

 秋があっという間に去ってしまって、早々に冬が来てしまった感じです。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、前回は、ドラッカーの『経営者の条件』より、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)のうち、「時間」についてご紹介しました。

 今回はそのうちの「貢献」について読んでみます。「貢献」とは何のことでしょうか。
 
 貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける。自らの専門やスキルや部門と、組織全体の目的との関係について徹底的に考えざるをえなくなる。政策にせよ、医療サービスにせよ、自らの組織の産出物の究極の目的である顧客や患者の観点から物事を考えざるをえなくなる。その結果、仕事や仕事の仕方が大きく変わっていく。

 なすべき貢献には、いくつかの種類がある。あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。
 これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。したがって、この三つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。もちろんそれぞれの重要度は組織によって、さらには一人ひとりの人によって大きく異なる。

 第一の領域である直接の成果については、はっきり誰にでもわかる。企業においては売上げや利益など経営上の業績である。病院においては患者の治癒率である。

 第二の領域にある価値への取り組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのようにアメリカの家庭のために最も安く最も品質のよい財やサービスを見つけ出すことである場合もある。

 第三の領域が人材の育成である。組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。したがって自らを存続させえない組織は失敗である。今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新していかなければならない。確実に高度化していかなければならない。

 新任の病院長が最初の会議を開いたとき、ある難しい問題について全員が満足できる答えがまとまったように見えた。そのとき一人の出席者が、「この答えに、ブライアン看護師は満足するだろうか」と発言した。再び議論が始まり、やがてはるかに野心的なまったく新しい解決策ができた。
 その病院長は、ブライアン看護師が古参看護師の一人であることを知った。特に優れた看護師でもなく、看護師長をつとめたこともなかった。だが彼女は、自分の病棟で何か新しいことが決まりそうになると、「それは患者さんにとっていちばんよいことでしょうか」と必ず聞くことで有名だった。事実、ブライアン看護師の病棟の患者は回復が早かった。

 貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるということである。貢献に焦点を合わせることなくしては、やがて自らをごまかし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺くことになる。

     P.F.ドラッカー『経営者の条件』p79-84より抽出、編集して引用


 組織の成果を上げるための貢献とは、成果を上げることにそれぞれが責任を持つことです。
 
 一般の従業員は目の前の仕事を遂行することに精一杯で、組織全体のことを考えている余裕はありません。
 しかし、どうしたら組織のために貢献できるだろうか?という視点をもったときに、仕事に対する向き合い方が変わり、自分の仕事が成果につながるようになるのです。

 引用文に出てきましたブライアン看護師は、注射を打つ、血圧を測るという業務で満足するのではなく「どのような仕事をしたら、患者さんにとっていちばんよいことになるのか」と考えました。
 目の前の仕事に真摯に取り組みながら、組織の成果に目を向ける、このような行動が患者さんの回復を早めることに繋がりました。患者さんの回復が早いことは病院としては大きな成果です。

 次回は「三つの領域における成果」について検討したいと思います。

 みなさまのご多幸を祈念しています。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
 
 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books