『ワケありな国境』を読んで

2014年01月27日

 武田知弘さんの『ワケありな国境』を拝読いたしました。

 武田さんは1967年、福岡県生まれ、西南学院大学経済学部を中退、大蔵省職員、塾講師、出版社勤務などを経て、2000年からフリーライターとして活躍されています。国際情勢、裏ビジネス、歴史の秘密など、世の中の裏側に関する著述活動を行っているそうです。

 この本は2008年に彩図社から刊行され、2011年に文庫本にしたものです。世界の国境にまつわる問題をコラム的にとりあげてあります。
 私は地図や地理がもともと好きですので、この手の本を見つけると立ち読みしてみますが、子供向けのものも多いです。この本は内容がしっかりしていそうだったので、楽しみとして読んでみればいいか~と思って購入しました。

 アメリカにはいくつかの飛び地がありますが、ロバーツ岬はご存知ですか?

 バンクーバー近郊で、カナダ領の岬の中で先端部分だけがアメリカ領となっているところです。
 アメリカとカナダの国境は北緯49度に定められています。そこを飛び出した先端部分だけがアメリカ領になっているのです。カナダとしては飛び地を作りたくなかったそうですが、すぐ近くにあるバンクーバー島の全島を領有することと引き替えにロバーツ岬を譲ったのだそうです。
 ここにはアメリカ人が住んでいますが、教育については小学校低学年までの学校しかないそうで、高学年になるとカナダ領を通ってワシントン州ブレインの学校に通うのだそうです。
 あとで地図で調べてみてください。

 日本についても、戦前に我が国の領土だった南沙諸島や南洋諸島の経緯、北方領土や竹島などについても紹介されています。

 いま六カ国で取り合いになっている南沙諸島も昔は日本の領土だったのですからね・・・・・・戦時中のことををいろいろ想像しました。

 詳しいことは専門の本を読んでいただくとして、世界の国境の問題を俯瞰するには分かりやすい本だと思います。

 どうぞご参考になさってください。

  


 参考文献:『ワケありな国境』 武田知弘 (ちくま文庫)
 

  

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『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』を読んで

2013年10月02日

 松下英樹さんのご著書『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』を拝読いたしました。

 松下さんは1964年静岡市生まれ、早稲田大学商学部をご卒業され、参議院議員秘書を経て、1999年静岡市にPCスクール運営会社、オックスクラブ・ドット・コムを設立されました。1990年からミャンマーに通い始め、現地での会社の経営を通じて人脈を広げていったそうです。2013年1月、日系初のベンチャーキャピタル、バガン・インベストメント社を設立し、取締役執行役員に就任されています。

 この本は成長が見込まれるミャンマーについて、政治経済や社会について、いまの様子を伝えてくれるものです。

 私はこの7月に視察旅行で初めてカンボジアのプノンペンに行きました。混沌としている中で今後経済は成長していくに違いない、という雰囲気をひしひしと感じることができました。ミャンマーのヤンゴンとはさまざまな面で事情が違いますが、この本を読みながらヤンゴンの街はプノンペン同様に活気であふれているのだろう、と想像しておりました。

 プノンペンの町では、ときどきハングル文字を見て、多くの韓国人が進出していることを感じましたが、ヤンゴンでも同じ様子らしいです。

 ヤンゴン市内に来てみると、韓国人の姿や韓国語の看板が目につくはずだ。それもそのはず。ヤンゴンに住んでいる日本人は700人程度といわれるが、韓国人は1万人以上住んでいる。ミャンマー人の間では、かつての日本のように韓流ドラマが大人気だ。雑誌やCM、市内の看板をみても、韓国人スターが数多く登場している。
 
 『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』 p85より引用
              
 
 ミャンマーのビザには、面白い制度があるそうです。

 通常、観光は28日間、商用は70日間と滞在期間が定められている。ところが出家修行に関しては、「メディテーション(瞑想)ビザ」という制度があり、ミャンマー国内の僧院からの招待状があれば何年間でも滞在できる。滞在費用も基本的には無料だ(気持ちがあればお布施をすれば良い)。

 『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』p128より引用


 ミャンマーで今後有望なビジネスは次のようなものだそうです。

 ①鉱業
 ②農業
 ③ホテル・観光業
 ④通信・IT業
 ⑤株式投資


 ヤンゴンではホテル不足が続いており、ヒルトンやノボテルなど世界的なホテルチェーンやタイやマレーシアのホテル運営企業が続々と進出してきて、急ピッチで工事を進めているそうです。

 ヤンゴンの土地は、目下のところバブルではないかと思われるほど高騰しているので、好立地で十分な面積のある用地は少ないが、日本式のビジネスホテルを建てるのに適した300~500坪くらいの物件はたくさんある。1泊70~80ドル前後で泊まれるような、レストランや宴会場のない、コンパクトで設備の整った70室くらいのホテルを作れば、けっこう需要はあるように思うのだが、まだ日系のホテルが進出するといった話は聞かない。

 『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』p169より引用

 
 東南アジアへいくといずれの国でも中国や韓国の資本が進んでいることを感じます。東南アジアは日本の資本にとっても大きなチャンスだと思います。

 ミャンマーにご興味のある方はご参考になさってください。 

  


 参考文献:『新聞では書かない、ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由』
                    松下英樹 (講談社+α新書)
 


  

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『中国経済の真実』を読んで

2012年09月17日

 石平さんと福島香織さんの対談集『中国経済の真実』を拝読いたしました。

 石平さんはこのブログでも何度もご紹介している中国問題の評論家です。中国のお生まれですので、我われには見えない切り口で中国の問題を語ってくれます。
 福島さんは、大阪大学卒業後、1991年産経新聞社大阪本社に入社、上海の復旦大学に1年間の語学留学を経て、2001年香港支局長、02年から08年まで中国総局記者として北京に駐在、09年に退社されました。現在はフリー記者として取材活動、執筆活動をされています。

 この対談が行われたのは、2011年11月初旬だそうですから、約11カ月が経ってしまっています。2012年1月に初版が発行されていますので、その頃購入したのだと思いますが家に積んだままになっていました。
 昨今の日中関係を考えるために、遅ればせながら読んでみました。

 いま大問題となっている中国での暴動は日本に向けてのものですが、純粋に日本の問題だけかといえば、その他のいろいろな問題を含んでいると考えたほうが妥当でしょう。

 天安門事件は、民主化という一つの理念のもとに学生や労働者が一元化したものでした。

 石さんは、もし次に革命があるとしたら次のようなものだ、といいます。

 次の革命はそうではなく、いろいろな人たちがいろいろな不満を持ち、これにもう我慢できなくなったとき、大きな事件をきっかけに、いっきに不満を爆発させるのです。その不満をネットが集約し、いきなりどこかで大騒動が起き、政権が押し潰されていくでしょう。

                 『中国経済の真実』より引用


 いまの中国人は日本人よりも煽られやすい状況にあると思います。

 福島さんは、『環球時報』という1.2元の新聞が庶民に大人気で、200万部も発行されていることに関連して次のように述べています。

 『環球時報』の読者は圧倒的に貧困層が多いですが、貧しい人ほど中国の国威発揚や軍事強化が嬉しいみたいです。日本のような一億総中流の状況下で、新聞が「戦争万歳!」と煽っても絶対に売れませんけれど、中国では「人民解放軍、海外派兵」という見出しを立てると、それが不満のはけ口になるようです。
 さらにいえば中国人は、日本人と違い「戦争は悪」とは思っていません。

              『中国経済の真実』より引用


 中国は暴動をある程度容認し、日本に対して強気の外交を展開しています。
 
 福島さんは、中国のやり方は北朝鮮と同じだといいます。いまの中国の軍事力ではアメリカに勝てないので、恐喝をするしかないというのです。

 中国も同じで、実際に武力衝突となったら勝てる見込みがないから、ガチンコでは戦わないでしょう。軍の首脳も「武力衝突をやってはいけない」と考えているはずです。ただ巨大な軍事力は、交渉の道具にはなります。
 外交交渉となったとき、中国はどこを狙えばいいのか、よく知っています。要するに交渉のいちばん下手な国、つまり日本が狙われるのです。

                      『中国経済の真実』より引用

                  
 中国の首脳も今のままの状況が続いたら、自国にどれだけの損害を与えてしまうか、分かっているでしょう。この暴動の矛先は別の方向に向かう可能性もあります。
 一般の中国国民は日本の国民と違って、自国のことも世界のこともまだあまりよくわかっていないと思います。

 領土の問題は、それぞれがもっともらしいことを言いますが、結局、支配しているもののものだ、というのが現実です。取り戻すには戦争をせねばならず、それは大変なことです。

 我々は報道に煽られて感情的にならないことです。
 
 暴動については、一刻も早い解決を望みたいと思います。    
 
  


 参考文献:『中国経済の真実』 石平 福島香織 (PHP研究所)
 

 参考ブログ:「中国が凶暴になるとき」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1080483.html
  

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中国が凶暴になるとき

2012年08月16日

 国境の問題が騒がしいですね。

 これがヨーロッパやアフリカの国境で発生していたとしたら、おそらく戦争に突入しているのではないか、と思います。

 先月、21世紀ニュービジネス協議会が主催して、中国問題評論家、石平(せき・へい)さんに長野にお呼びし、中国問題についての講演会を開催しました。

 「中国問題に切り込む石平さんの講演会のお知らせ」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1055643.html

 石平さんのご著書『中国人の正体』より引用いたします。

 日本人は中国の軍事的膨張に対して、「中国は凶暴だ」という言い方をするが、正確には違う。別に、中国人はいつも凶暴なわけではない。利益になるなら凶暴になり、利益にならないなら凶暴性を引っ込める。中国人にとっては、怒り、暴力といったことも、利益最大化ののための道具でしかないのだから。
 中国は対外政策においても、国家の利益を最大化するために、利用できるものは何でも利用し、邪魔になるものは排除していく。ほかの国でも国益は追及するが、同時に国際ルールを守り、国家間の信頼を重視する。しかし、中国はそんなものは無視し、自分たちの利益だけをとことん追い求める。それが典型的にあらわれているのが、中国の対日外交というわけだ。
                      
                    『中国人の正体』より引用


 石さんの講演会で印象的だったのは、外交を担当する人(例えば外務大臣)を「大阪のおばちゃん」にすればいい、というものでした。

 石さんの義理のお母さまはいわゆる「大阪のおばちゃん」だそうで、具体的なことは教えてもらえませんでしたが、とてもすごい人とのことで、彼女を外務大臣にしたらいい、とまでおっしゃっていました。

 もちろん半分は冗談ですが、日本の外交にはその側面が求められているという意味です。

 「大阪のおばちゃん」がどういう意味なのか、だいたいお分かりかと思います。

 中国は日本とは全く違うフレームワークをもっている国ですから、そのことをよく理解したうえで、日本国政府には上手に外交をしてほしい、と切に願っています。

  


 参考文献:『中国人の正体』 石平 (宝島社)
 

 参考ブログ:
 「『中国人に負けない7つの方法』を読んで」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1061813.html

 「『中国人の正体』を読んで」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1007694.html
  

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『中国人に負けない7つの方法』を読んで

2012年07月19日

 石平さんのご著書『中国人に負けない7つの方法』を拝読いたしました。

 以前、石平さんの『中国人の正体』をご紹介したことがあります。
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1007694.html

 『中国人の正体』を読んで中国人の行動が分かったという編集者から「ではそのような中国人に対してどのような対応すればいいのか」と問われ書いたのが『中国人に負けない7つの方法』なのだそうです。

 この本も『中国人の正体』と同様、石さんにしか分からない視点で書かれていて大変興味深いです。

 石さんは中国人の本質として三つをあげています。

 1.自己中心的でわがままでありエゴイズムの塊
 2.恥知らず
 3.基本的に責任感というものがあまりない


 とてもひどいことが書いてありますね。
 私の友人の中国人は信頼のおけるよい人ばかりですので、こう指摘されてもよく分かりません。

 そこで、前に万里の長城を訪れたときのことを思い出しました。

 秋でしたが急に雨が降ってきて寒くなったので同行者がトレーナーを買うことにしました。お土産物屋さんでガイドさんに通訳をお願いして300元(約3600円)だという万里の長城のプリントされたトレーナーをとりあえずは100元(1200円)までまけてくれて、最終的には50元(600円)までまけてもらいました。もっと安いのかもしれませんが、まあまあそのくらいならよいだろうと思いました。中国人のガイドさんが通訳してくれたおかげです。

 ところが帰り道、その店の前を通ると、先ほどのおばさんが我々を見つけるなり飛んできて「アト50ゲン!アト50ゲン!」と迫ってくるのです。どうやら後から我々が日本人と分かり、値段をアップさせたかったようでした。
 もう会計がすんで何時間も経っているのに、鬼気迫るその姿にびっくりしてしまいました。お互いが納得して会計のすんだ取引ですから、いまさら蒸し返すことではありません。我々は這う這うの体で逃げてきました。

 石さんは、中国人に勝つための方法として次の三つを紹介されています。

 1.割り切る・・・お互いに利益だけを求める関係として割り切る
 2.日本人を放棄する・・・中国人と付き合っているあいだは日本人的感覚を捨てる
 3.以毒攻毒・・・毒を以って毒を制す


 日本人としては相当気合いを入れないとできないことです。おそらく中国でビジネスをされている方はこのように実践をされて日々戦っておられるのだと思います。

 実は石さんも巻末の「おわりに」でこんなことを述べておられます。

 とにかく、中国人と交渉する間は「中国人」になりすましたほうがいいのだが、それが終わってしまえば、普通の日本人はやはり普通の日本人に戻るべきであろう。中国人との交渉において、中国人のように平気で嘘をつくのも中国人以上に図々しくなるのも結構なことである。しかし、日本での日常生活に戻れば、普通の日本人は、やはり誠実にして思いやりのある普通の人間であった方がいい。

              『中国人に負けない7つの方法』より引用

 

 石さんによれば、中国人観光客が日本に来て感じる付加価値とは「おもてなしの心」なのだそうです。それは実利主義や利己的なビジネス関係とはかけ離れた世界だからです。

 我々は、その強みをもっとうまく使えないでしょうか。

 今日、この話の続き(?)を長野市でお聞きになれますよ。

 7月19日、石平さんの講演会が長野市で開催されます。主催は21世紀ニュービジネス協議会です。まだ多少のお席はあると思いますので、よろしかったら直接会場へお越しくださいませ。

 「中国問題に切り込む石平さんの講演会のお知らせ」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1055643.html
 
 では会場でお会いしましょう!

  


 参考文献:『中国人に負けない7つの方法』 石平 (宝島社)
 
  

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