みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログではドラッカーの『マネジメント』を読んでいます。前回から下巻に入りましたが、途中をだいぶ飛ばしまして、結論に入ります。
「結論 マネジメントの正統性」を読んでみます。以下、本文を編集して引用します。
社会においてリーダー的な階層にある者は、自らの役割を果たすだけでは不十分である。成果をあげるだけでは不十分である。正統性をもたなければならない。社会から正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
マネジメントがその権限を認められるうえで必要とされるものが、正統性である。マネジメントたる者は、自らの権限の基盤を、組織なるものの目的と特性に由来するところの正統性に置かなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。それが組織の特性である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。すなわち、人の強みを生産的なものにすることである。組織とは、個としての人間一人ひとり、および社会的存在としての人間一人ひとりに貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。
組織の基盤となる原理は、「私的な強みは公益となる」である。これが、マネジメントの正統性の根拠である。マネジメントの権限の基盤となりうる正統性である。
マネジメントは、制御されず制御しえず、したがって専制的たらざるをえない存在としての中央の政治権力の僕ではないという意味において私的な存在である。と同時に、意識して公然と、公的なニーズを自らの自立した組織にとっての私的な機会に転換すべく働くという意味において、公的な存在である。
そしてさらに必要とされるものが、マネジメントの人間としての役割と機能に関わる仕事である。自立した存在としての組織のマネジメントたらんとするのであれば、自らを公的な存在としえなければならない。すなわち組織としての責任の真髄、一人ひとりの人間の強みを生産的なものとし、成果をあげさせるという責任を負わなければならない。
P.F.ドラッカー『マネジメント(下)』
結論「マネジメントの正統性」p297-304より抽出、編集して引用
この部分は『マネジメント』の結論が述べられているところで、私が大変好きな部分です。
初めてここを読んだとき「マネジメントって、いろいろな経営者やコンサルがいろいろなことを言うけれど、結局これだ!」と感動したことを覚えています。
二段目の文章を原書で読んでみます。
What managers need to be accepted as legitimate authority is a principle of morality. They need to ground their authority in a moral commitment which, at the same time, expresses the purpose and character of organizations.
“morality”(道徳)、"moral"(道徳的な)という言葉が訳文では飛ばされているのは少し気になるところです。
企業において社長が権限を行使してマネジメントをしてよい根拠は、その企業の目的から導き出される正統性にもとづかなくてはならないのです。「正統性」は原書ではlegitimate authorityと表記されています。正統な権威、正当な権力ということです。
その正統性は道徳的な原則、コミットメントにもとづいていなくてはなりません。(こう書いてしまってよいかと私は思います。)
「マネジメント」という行為は、お役所にも、他人にも、誰にも制御されることはないですから、公的なものではなく、私的なものであります。
しかし、企業は、道徳的な価値観にもとづいて、世の中の人々がもっているニーズや問題を解決したり、欲しいと考えている商品、サービスを創り出したりすることができます。この意味において、企業には公的な存在としての要素があります。企業がこれらを実現することができるならば、企業は世の中の役に立つ公的な存在となりうるのです。
(道徳的な価値観にもとづかないマネジメントは、お客さまのご満足よりも、自社の売上重視、利益重視となるのではないでしょうか。)
企業で働く人々にとっては、企業において自分の強みを生かすことができます。企業という機関を通じて、自分の力を生かして(レバレッジを効かせて)社会に成果を上げることが出来ます。
つまり、企業は、所属する個人が力を発揮し自己実現をできるように活躍する場を提供しつつ、経営理念を達成するべく経営しますし、個人は自らの強みをもって企業に貢献します。
企業は個人の力の貢献を得て、社会に対して成果を上げるのです。
これらの機能の間に存在して、この働きをさらに良くしていこうというのが「マネジメント」です。
この仕組みが「マネジメントの正統性」であろう、と私は考えています。
私はまた至っておりませんが、ここに達するように経営をしておこう!(こうなろう!)と常に考えております。
いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
参考文献: 『マネジメント 課題、責任、実践(下)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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