南場智子さんの『不格好経営 チームDeNAの挑戦』を拝読いたしました。
南場さんは新潟市生まれで、津田塾大学卒業後、1986年マッキンゼーアンドカンパニーに入社されました。1990年、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得され、1996年パートナー(役員)に就任、1999年同社を退社して、DeNAを設立、代表取締役に就任されました。
DeNAは2005年に東証マザーズに上場し、2007年には東証一部に指定替えされています。2011年には病気療養中の夫の看病に力を注ぐため、代表取締役CEOを退任され、現在、代表権のない取締役を務めておられます。
南場さんは創業当初から有名な経営者でしたので、マスコミの記事などでなんとなく存じておりました。お写真で見る優しそうなお顔の雰囲気と違わず、文章にもユーモアがあります。この本を読んで創業者としての考え方や同社の成り立ちなどがよく分かりました。
マッキンゼーのご出身だけあって、戦略を策定して、決まったらその実現に全力で取り組んでいくという仕事の進め方です。変化に対応するのが精いっぱいの私の経営とはだいぶ違うと感じました。
南場さんは「社長の一番大事な仕事は意思決定」と述べています。社長時代、意思決定のための会議に時間の多くを使っていたそうです。
この意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないということが極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。
継続討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に一週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。そして、待ち構えていた現場がまた動けなくなり、ほかのさまざまな作業に影響を及ぼしてしまう。こうしたことが、動きの速いこの業界では致命的になることも多い。だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。
『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p198より引用
これは私も気を付けていることです。案件がペンディングになったまま1カ月も放置されて自然消滅するようなことがあれば、社員からも信頼を失うことでしょう。
社員との接点から得られる情報については次のように述べています。
ここで気をつけるべきは、自分が接している情報が断片的であるという自覚を失わないこと。どうしても直接見聞きしたことに大きく影響を受けるのが人情なので、十分すぎるほど気をつけなければならない。
『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p199より引用
これはよくあることですね。声の大きい者、社長に直接話を上げてくる者の意見が耳に入りやすいのですが、たいていの場合、自分サイドのことしか主張していません。
DeNAの競争力の源泉は「人材の質」だと明言されています。
人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずに、ステージに乗って輝き、④だから辞めない、という要素を果たすことが必要だ。
『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 p200より引用
このために、採用は「ものすごいド根性」で行っているとのことです。
南場さんは年間30回の新卒向け会社説明会をすべて自分で行ってきて、社長退任後の現在も取り組み続けているそうです。
DeNAはなんといっても経営戦略なんですね。
マッキンゼーのコンサルタント3人での創業ですから、スタート地点が髙いわけで、ここまで来たのは必然かも・・・・・・という感があります。
苦労話さえもあまり苦労されたように感じられず、すっきり解決した話として読めてしまいます。
社会に対しての当該事業の問題点について対応策は示されていますが、事業としての社会への影響については言及されていません。社会的な価値というよりも事業の組み立てなのですね。
昨日のブログで紹介した『二十一世紀残る経営、消える経営』のような顧客価値を追求していく経営とは違うと思います。
みなさまもどうぞご一読くださいませ。

参考文献:『不格好経営 チームDeNAの挑戦』 南場智子 (日本経済新聞出版社)
参考ブログ:
『二十一世紀残る経営、消える経営』を読んで
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334110.html
第32回ビジネス読書会
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1334746.html
Hitoshi Yonezu at 10:00
| 読書感想 経営書