『経営の小さなヒント』を読んで
2013年08月08日
浅野喜起さんのご著書『経営の小さなヒント』を拝読いたしました。
この本は昭和62(1987)年2月に初版が発行されています。いまでは中古でしか手に入らないようです。ある先生が推薦されていたのを見て、中古品をとりせて読んでみました。
著者の浅野さんは1917年中国生まれ、大阪商科大学を卒業後、日本興業銀行経営研究部長を経て、日本経営システムの社長を務められました。ウィキペディアによれば、2008年にお亡くなりになっているようです。
浅野さんが経営コンサルタントとして見聞きされたさまざまな企業の社長の生きざまが紹介されています。
今ではほとんど聞かれなくなった戦争体験や戦前戦後の話が出てきて、懐かしい感じがします。
「懐かしい」といっても私は昭和42年生まれですから、戦争の体験はまったくありませんし、戦争を肯定する意味ではありません。
子供のころ、私のおじいさん、おばあさんが苦しかった戦時中や戦前戦後の話をよくしてくれたので、そのことがよみがえってきて「懐かしい」ように感じたのです。
今の子供たちは戦争の話を体験者から直接聞くことは難しくなっていますから、私の体験は貴重です。もしも戦時中のことを知りたければ、このような昔の本を読むしかないでしょう。
何人かの経営者の人生が紹介されていますが、日本全薬工業創業者の福井貞一さんの人生は、それを語るだけで映画になるように思いました。
古くても新しくても、原理は変わることはないのだと感じることができました。
たいせつなのは外的条件ではない。ものではなくて心の条件である。これまでの企業に欠けていたのは社員の力を十分に生かしきるという姿勢、中高年層の心の条件への配慮である。表街道からはずれた中高年層の胸をぐさりと刺すのは、社内の人の冷たい目である。
『経営の小さなヒント』 p44 より引用
仕事ができないのは仕事の話であって、人間性とは別のことです。苦手な部分が多い人でも、なんとかできるところを探して、そこを伸ばしてあげるようにしなくてはいけない、と感じます。
並はずれの交際費をつかい、せっせと運動をして甘い注文をとるということは、たとえ一時的に利益をもたらしても、企業体質に大きな禍根を残すおそれがある。「何事によらず、ぜいたくなくらしはいのちを縮める」
『経営の小さなヒント』 p97 より引用
私は会合があっても懇親会の費用はオフィシャルなものしか交際費にしませんし、自社の店舗を使う場合や二次会の費用は全部自費です。業種にもよっても違いがあるのでしょうが、交際費は社長の裁量によることになり、際限がなくなるので気をつけなくてはなりません。
会社の規模拡大について浅野さんは次のように述べています。
会社はそれぞれ社会的使命を持っているが、それはつきつめて考えればつぶれないということに尽きる。規模の大小、業種のいかんを問わず、会社の基本的な社会的使命はつぶれないということだといってよい。
(中略)
ところが、現実の会社はつねにつぶれる条件を拡大しながら発展している。会社が発展するということ、大きくなるということは、つぶれる条件を拡大していることに外ならない。
『経営の小さなヒント』 p177 より引用
勉強会や異業種交流会に出ると、威勢のいい経営者がおられて競い合っているような面も見られますが、比較する必要はないと思います。大切なことは規模ではありません。自分が自分に対していかに確からしさをもって経営するかです。
永続するということ、つぶれないということのためには、量より質を、いたずらに規模の大を追うよりは、すぐれた社風の形成を第一義とすべきである。大切なのは経営の姿勢である。
『経営の小さなヒント』 p178 より引用
経営者のみなさまはご参考になさってください。
参考文献:『経営の小さなヒント』 浅野喜起 (日本経済新聞社)
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