水島温夫さんのご著書『50時間の部長塾』を拝読いたしました。
水島さんは東京都のご出身で、慶應義塾大学とスタンフォード大学で修士号を取得されました。石川島播磨重工業、三菱総合研究所の勤務を経て、現在はフィフティ・アワーズの代表取締役としてコンサルティング活動に従事されています。
4月19日に八十二銀行の扇会セミナーで水島さんのご講演をお聞きし、興味をもちましたので読んでみました。
「部長塾」というのは出版社のすすめによる書名だそうで、内容は社長向けでもある、とおっしゃっていたのを覚えています。実際のところ、この本の内容は部長という立場とは関係がないように思います。
もし水島さんのお話をお聞きしなかったとしたら、私は「部長」というタイトルの本は読まなかったでしょうから、題名のつけ方はとても大切だと思います。
この本は、題名から想像する内容とは違っていて、大きなマクロの話が中心です。グローバル経営における日本の経営の強み弱みを解説するものです。中小企業というよりは主に大企業向けの内容なのですが、世界の経営における日本の経営の立ち位置を知るという意味ではおおきなヒントになりました。
誤解を恐れずに、私の視点からこの本の要諦をまとめてしまえば、日本の企業は擦り合わせ型で、欧米の企業は組み合わせ型だということです。
日本企業は絶えず進化・変化のスピードで勝負してきました。朝令暮改は当たり前、組織替えも意味があるなしに関係なく頻繁に行います。土台が固まることなく、常に不安定なわけです。個人のプロ化は人材の標準化と同じことだと説明しましたが、その標準化は安定した固まった土台があってできあがるものです。ある程度状況が固まってこそ標準化による効率アップの効果が出ます。日本企業のように、進化・変化のスピードで勝負することが前提で、いつも土台が固まらない状況下ではいかなる標準化もメリットがなく、進むわけはないのです。
『50時間の部長塾』 p251より引用
組み合わせ型のマネジメントにおいては、標準化が不可欠になります。ISOや内部統制などさまざまな規格が欧米に由来していることを考えると、納得がいきます。
組み合わせ型マネジメントの海外企業には優秀な個人プロが必須です。しかし、進化・変化のスピードで勝負する日本企業には専門性に凝り固まった個人プロは必要ありません。進化・変化を起こすことによって儲けを創出することのできる集団としてのプロが必要です。こう言い切ってしまうことに不安もあるでしょう。個人プロとしての専門知識のない社員ばかりが集まっても船は前に進まないという心配です。しかし、重要なのは深い専門知識より、儲けることに執着する集団です。
『50時間の部長塾』 p252より引用
つまり日本の企業においては一つを極めた専門家よりも、複数の専門分野を持つ人材が求められるというわけです。
大きな話ですので、ある程度の知識をもって全体を読まないと、理解ができないかもしれません。しかし非常に論理的な内容です。私は事前にご講演を聞いていたこともあり、大変よく理解できましたし、自分の会社に生かせる気づきもありました。
いまは日本の企業も欧米化が進んでいますが、ただ欧米の真似をするだけでは、日本のよさを発揮することはできず、欧米化の波に飲み込まれるばかりです。この本の示唆することは大変興味深いです。
どうぞご参考になさってください。

さきほど、操作ミスで昨日まとめたブログを消してしまいました。難しい内容を一生懸命まとめたのに・・・・・・
あー、がっかりです・・・・・・
今朝は底からのスタートですので、右肩上がりになるしかないですね。
きっと。
参考文献:『50時間の部長塾 グローバル時代閉塞突破の経営』
水島温夫 (生産性出版)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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