『経済学的思考のすすめ』を読んで

2011年08月30日

 辛坊治郎さんの『日本経済の真実』をバッサリ切る・・・・・・

 学習院大学教授で経済学者の岩田規久男さんの『経済学的思考のすすめ』は、徹頭徹尾、辛坊さんの本の批判で貫かれています。

 日本では経済学の専門家でない人の経済本がよく売れ、そうした人たちの経済解説が盛んであるとし、その代表的な本として辛坊さんの『日本経済の真実』を取り上げているのです。

 議論の方法という基本的なところから、岩田さんの追及は始まっています。
 自然科学と同様に、経済学という学問が演繹法をとるのに対して、辛坊さんの本や日常的な議論のほとんどは帰納法をとります。帰納法とは、「陽は東から出て西に沈む」というように、繰り返し起こる現象を普遍化、一般化して考える思考法で、間違いを導きやすいのです。

 辛坊さんが唱えている国家財政の破綻については、真っ向から否定されています。

 国と国民の取引である国家の借金は、個人や企業の借金とは根本的に違うものだといいます。

 もし国民が国に対してこれ以上お金を貸さない、といったとしても、国には課税権があるので、国民から徴税してその中から国民に返済するだけだということです。

 また、国民が国に対して、貸したお金を全額返せといい、他方で国に対して税金を払うことを拒否すれば、国は破産を宣告して借金を棒引きにするだけで、国民の懐具合は税金を払うときとまったく同じだといいます。

 国が国民からの借金を返済しないことを決めれば、定義により日本は破産しますが、どの政党が政権をとろうとも、党の信用を失う間抜けなことは決してせず、増税の道を選ぶはずだ、とのことです。

 岩田さんは将来の増税をみているということですね。(現状からみたらどうみてもそうなるでしょうが)

 この辺りの議論はやや粗い気がしますが、辛坊さんほか、国家破綻の本が大変受け、売れているいま、経済学者の冷静な分析も読んでおくべきだと思います。

 岩田さんの経済学の本は分かりやすいので、若いころからよく読んで、学ばせて頂きました。

 経済学の論理にもとづいていますから、読み進むとやや面倒なところもありますが、難しくはありません。
 
 みなさまもどうぞご参考になさってください。

 人気ブログランキングへ

 参考文献:『経済学的思考のすすめ』 岩田規久男 (筑摩書房)
 

 『日本経済の真実 ある日、この国は破産します』 辛坊治郎 辛坊正記 (幻冬舎)
 
 
 参考ブログ:
 「辛坊治郎さんの『日本経済の真実』を読んで」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e507937.html

 「いつまでも経済がわからない日本人』を読んで」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e508747.html

 「いつまで借金できるのか?」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e509232.html

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | 読書感想

お知らせ
Hitoshi Yonezu
P.F.ドラッカーを読む読書ブログです。
 
ささや
< 2025年05月 >
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8