『帝国の終焉』で日高直樹さんは、オバマ大統領はアメリカを「チェンジ」できなかった、と述べています。
オバマ大統領の経済政策は、明らかに失敗に終わった。失業者の数はオバマ大統領が就任して以来、二倍の一五〇〇万人に膨れ上がり、住宅の値段は依然として下がり続けている。専門家たちはアメリカの住宅の値段は二〇一五年にならないと下げ止まらないと見ている。そのうえアメリカの財政赤字は恐ろしいほどのスピードで増え続けている。
『帝国の終焉』より引用
政府だけでなくカリフォルニアやニューヨークといった州の赤字総額は24兆ドルにのぼり、公営住宅資金や住宅援助資金の焦げ付きが少なくとも数十兆ドルに達しているそうです。
これらの借金をあわせるとアメリカの財政赤字は100兆ドルを超すことになるのだそうです。(1ドル=80円とすれば8000兆円です。日本の財政赤字はおおよそ1000兆円といわれています。)
「大統領は当選してホワイトハウスに入るまでは党の代表である。だが、いったんホワイトハウスに入れば、アメリカ国民すべての代表になる」
オバマ大統領はこのアメリカ政治のルールが分かっていない。ホワイトハウスに入ってからもオバマ大統領は野党共和党やその政治家たちを「憎い敵」と見なしている。国民を全体的に見ようという気持ちを持っていないのである。
『帝国の終焉』より引用
日高さんのオバマ評は厳しいものです。
友人のアメリカ人ジャーナリストが私にこう言ったことがある。
「オバマ大統領は、あまりにも貧しい子供時代を過ごしたために、借金は返さなければならないという、社会の基本ルールが分からなくなってしまった」
『帝国の終焉』より引用
アメリカの保守系雑誌『ウィークリー・スタンダード』が次のように指摘している。
「オバマ大統領は子供の時、父親に捨てられたため、人に助けてもらいたいという願望が強い。このため自ら決定することができなくなった」
『帝国の終焉』より引用
オバマ大統領はブッシュ大統領が始めたイラク戦争に対抗して「私の戦争」としてアフガニスタンで戦争を始めたこと、戦争の重要な決定を軍人に任せてしまったこと、軍事に疎いために中東の米軍司令官を三回も変えたこと、オバマ大統領と米軍の間には緊張した状態が続いていること、なども指摘されています。
日高さんは、オバマ大統領は次の誰かがやり直すことができないほどの失敗をやってしまったかもしれない、と述べています。
オバマ大統領が誕生したとき、アフリカ系の初めての大統領ということで、私はアメリカが変わり、世界が変わるかもしれない、と希望を抱きました。
しかし、日高さんの見たいまのアメリカの現実はこういうことです。
今年はアメリカを始め世界の主要国で大統領選挙があります。
大きな変化があるかもしれません。

参考文献:『帝国の終焉』 日高義樹 (PHP研究所)
参考ブログ:
「『最もリアルなアメリカ入門』を読んで」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e948649.html
「欧米のシナリオ」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e948769.html
Hitoshi Yonezu at 10:00
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