原田武夫さんの『教科書やニュースではわからない最もリアルなアメリカ入門』を拝読いたしました。
原田武夫さんは1971年、香川県生まれ、原田武夫国際戦略情報研究所の代表取締役を務めておられます。
東大法学部卒業後、外務省の職員となり、12年勤務の後、アジア太平洋局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職をされたのだそうです。
いまは「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いのもと、内外情勢の調査、分析、次世代人材育成などにあたっているそうです。
この本はアメリカという国がどういう経緯で誕生し、これから何をしようとしているのかを、大きな枠組みの中でとらえていくものです。原田さんは外務省を退職して以来、国際社会を考えるベースとして「複雑系としてのアメリカ」を徹底追求してきたそうです。一面では陰謀論的でもあるのですが、著者は「シナリオ・プランニング」という言葉を使っています。
19世紀後半まで続いたアメリカの西部開拓はその後のアメリカにさまざまな遺産を残しましたが、最も強い影響を残したものは「マニフェスト・デスティニー(manifest destiny/明白なる運命)」というスローガンだったといいます。
マニフェスト・デスティニーとは「白人入植者による植民地拡大は神の与えた運命である」とするもので、それによればインディアンは奪われて当然の存在だったそうです。
開拓にともない犠牲を被った黒人やインディアンに対して、白人は
「すべては啓蒙のため、文明開化のためだ。こうなることは明白なる運命なのだ」
といったのだそうです。
開拓を通じてマーケットが日増しに拡大していくことを前提としたビジネスモデルが築かれていったというわけです。
アメリカはずっと戦争をしている国というイメージがありますが、開拓という概念と結びついているのですね。
いまでは軍と民間の軍需産業が結びついた経済体制が出来てしまっているので、アメリカでは戦争と経済は切っても切れない関係になってしまっています。「軍産複合体」という概念があるくらいですものね。
歴史、枠組み、シナリオで見ていくと一般的に知られているアメリカとは違った側面が見えてきます。数字やニュースをスポット的に見るのではわからないアメリカがこの本にはあります。
どうぞご参考になさってください。

参考文献:『教科書やニュースではわからない最もリアルなアメリカ入門』 原田武夫 (かんき出版)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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