日高直樹さんのご著書『帝国の終焉』を拝読いたしました。
日高さんは1935年名古屋市生まれ、東大卒業後、NHKでニューヨーク支局長、ワシントン支局長、アメリカ総局長などを経て、1992年に退職されました。
その後は、ハーバード大学タウブマン・センター諮問委員、ハドソン研究所主席研究員として日米関係の将来に関する調査・研究の責任者を務めらておられるそうです。
私はテレビを見ないのでよく分からないのですが「ワシントンの日高直樹です」(テレビ東京系)でもご活躍されているとのことです。
日高さんは記者時代からアメリカに信頼され、数々の米軍用機に搭乗した経験があり、政府の要人とのつながりも強いようです。実際に見聞きし引き出した発言にはジャーナリストらしい地道さが感じられます。
この本の要点を私の観点でまとめますと、アメリカは巨大な財政赤字を抱えているために、もはや史上最大の軍事力を維持できなくなっており、その傘下で守られてきた日本は自らの力で自らを守らなくてはいけなくなる、というものです。
北朝鮮による日本人拉致事件が明るみに出た時、世界の国々は北朝鮮を非難し、拉致された人々に同情したが、日本という国には同情はしなかった。領土と国民の安全を維持できない日本は、国家の義務を果たしていないと見なされた。北朝鮮の秘密工作員がやすやすと入りこみ、国民を拉致していったのを見過ごした日本は、まともな国家ではないと思われても当然だった。
『帝国の終焉』より引用
日高さんは、日本は自らを守ることのできる軍事力をもつべきだ、という考え方です。
アメリカはいまでは日本を守る気がないという事実もあるようです。
日本はいまやアメリカの植民地ではなく、アメリカと対抗する経済大国になった以上、アメリカの費用で日本に「核の傘」を差し出すのはアメリカにとって得なことではない、というのが現在のアメリカの考え方だ。
『帝国の終焉』より引用
日高さんはアメリカからの見方を紹介しているので、日本国内の問題には触れていませんが、この線から考えると、在日米軍もそう遠くない未来に撤退する可能性が高いのではないか・・・・・・と考えてしまいます。(この本によれば、2016年6月30日をもって在韓米軍はすべて韓国から引き揚げることになっているそうです。)
将来起こり得る紛争として、中国が国民の不満を解決するために台湾を攻撃して一致団結すること、また、財政赤字抱えたアメリカが中国の石油タンカーの航行を妨げて中国を挑発すること、を挙げておられます。
私がこのようなシナリオを考えているのは、歴代の大統領がやってきたように、戦争でも起こさない限り処理できないほどアメリカの財政赤字がとてつもない額になっているからである。そしてアメリカが戦争をするとなれば、相手はいまや中国しかない。
『帝国の終焉』より引用
恐ろしい話です。ちなみにこの本によるとアメリカのあらゆる財政赤字を足すと100兆ドルを超えているそうです。単純に1ドル=100円とすれば1京円ということになります。
日本では戦争や軍事の話はタブーとなっていますが、国民としては現実を知り、自ら判断をして意見をもつことが必要だと思います。
頭の中が暗くなる話ですが、どうかご一読ください。

参考文献:『帝国の終焉』 日高義樹 (PHP研究所)
参考ブログ:
「『最もリアルなアメリカ入門』を読んで」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e948649.html
「欧米のシナリオ」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e948769.html
Hitoshi Yonezu at 10:00
| 読書感想 経済書