うららかな春の日差しが心地よい季節となりました。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、マネジメントというと、成果を上げるために冷徹に進めていくようなイメージがありますが、マネジメントの資源は人です。人を抜きにしてマネジメントは語れません。ドラッカーは次のように述べています。
人と働くことは人の成長に関わりをもつということである。いかにともに働くかが、個としての人間および働く者としての人間の成長を助けるか妨げるかを左右する。このことは、マネジメントの対象となる者だけでなく、マネジメントをする者にも当てはまる。部下を正しい方向へ導き、より大きく、より豊かな人間にすることが、直接的に、自らがより豊かな人間となるかより貧しい人間となるか、成長するか退化するかを決める。
人のマネジメントに関わる能力、例えば議長役や面接の能力は学ぶことができる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて、人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だが、それだけでは十分でない。スキルの向上や仕事の理解では補うことのできない根本的な資質が必要である。すなわち真摯さである。
『マネジメント(中)』 p29より引用
マネジメントに必要な知識やスキルは、意欲さえあればさまざまな方法で学ぶことができます。私も若い頃に意欲的に学んだのは、ほとんどが知識やスキルに関することでした。では、知識とスキルさえあれば十分だったのか。そうではありませんでした。
マネジメントの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジメントにできなければならないことは学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである。
『マネジメント(中)』 p30より引用
「真摯さ」は人に関わることです。原文ではintegrityという単語で表されています。リーダーズ英和辞典をみるとintegrityに「真摯さ」という訳はなくて「(道徳的、人格的に信頼できる)正直、清廉、高潔、誠実」とあります。「真摯さ」は分かりずらい言葉であるために、さまざまな解釈がありますが、私は辞書に書いてあるように、人間的に信頼できる高潔さ、誠実さのことを指していると思っています。
経営者(マネジメント)として人の上に立つためには、大前提としてそれだけの人間性が求められるのです。人間性は後からは身につけられません。そもそも、ひどい社長(上司)についていってくれる社員さんはいるのでしょうか?
私が人格者であるなどという不遜なことは考えてもおりませんが、このようなことを書くことさえためらうほどぶれてしまったら、そのときこそ本当に経営者失格だろうと思い、自戒のつもりで書いてみました。
いつも当社をご利用いただき、ありがとうございます。今月もご指導のほどよろしくお願いいたします。
参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 10:00
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