愛するもののために死んだ故に彼等は幸福であったのではなく、反対に、彼等は幸福であった故に愛するもののために死ぬる力を有したのである。日常の小さな仕事から、喜んで自分を犠牲にするというに至るまで、あらゆる事柄において、幸福は力である。徳が力であるということは幸福の何よりもよく示すところである。
三木清著『人生論ノート』「幸福について」の章より引用
自分が幸福でなければ、自己を犠牲にして人のために死ぬことはできない・・・・・・
人のためになろうと思うなら、自分が幸せでなければならない・・・・・・
「日常の小さな仕事から」といいますから、あらゆることの力の源泉に幸福があるのですね。
三木清さんは京都学派を代表する哲学者です。
治安維持法により投獄され、終戦後間もない昭和20年9月26日、獄中にて48歳の若さで亡くなりました。
『人生ノート』は三木さんの著作の中でもっとも親しみやすい本です。23ある章のほとんどは昭和13年6月以来『文学界』に掲載されてきたものをまとめたものです。
この本は難解な部分も多いですが、文章自体は読みやすいですので繰り返し読むことで理解が進みます。
何度も読んでも古びることがなく、新しい発見があるような気がします。
三木さんは、こういう文章を今の私とほぼ同じ40代の前半に書かれていたのです。
戦時中、獄中と三木さんはどんな気持ちで過ごされたのでしょうか。

参考文献:『人生論ノート』 三木清 (新潮文庫)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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