『時間の分子生物学』を読んで

2011年09月29日

 時間の分子生物学・・・・・・

 題名が難しくて、これだけ見たら何が書かれているのか、私にはさっぱりイメージがわきませんでした。

 この本は生物時計と睡眠のメカニズムについて書かれているのです。

 平成15年に発行され、平成16年に第20回講談社科学出版賞を受賞されています。

 著者は、睡眠障害を専門とする内科医で、熊本大学発生医学研究所准教授の粂和彦さんです。

 実験や研究など科学な説明が多いですが、分かりやすく睡眠のメカニズムが説明されています。

 我々の体には生物時計が組み込まれており、その時計は「今だいたい朝だ」というような大雑把なものではなく、10分から15分程度の差を感じることのできる時計なのだそうです。

 例えば、いつもより1時間早く起きなければならないと目覚まし時計をセットした朝、アラームが鳴る数分前にぱっと目が覚めることがあります。

 私もこれはいつも不思議だと思っていました。
 これは血液中にコルチゾール(副腎皮質ステロイドホルモン)という起床する用意を始めるホルモンがあり、その血液中の値が起床時間の一時間前から増えていくためだそうです。

 「意志」がホルモンの分泌を睡眠中に制御しているそうで、起きていてもホルモンの制御など出来ないのに、とても不思議なことですね。

 また、お年寄りは早起きだと言われますが、睡眠研究者の間では物忘れや肌のつやよりも、朝起きるのが辛くなくなったというのがもっとも早く認められる老化の兆候なのだそうです。
 
 30代以前の成年では二回から三回の深睡眠がありますが、年をとるに従って深睡眠の割合は減り続け、明け方の睡眠は浅い睡眠ばかりになり、朝早く目が覚めるようになるのです。
 
 さらに高齢になると、睡眠が不規則になり、不足した睡眠を補うために午睡する人も増えてくるのだそうです。

 よく眠れる人は若いと言われますが、医学的に見ても本当にそういうことらしいのです。いまだに早起きが苦手な私は若いんだ・・・ということにしておきましょう。

 ショウジョウバエを使った最近の研究成果なども詳しく解説されています。まったく寝ないで活動し続けるショウジョウバエもいるのだそうです。

 高度に科学的な内容なのですが、専門外の人でも読めるようにとても分かりやすく書かれています。

 著者が睡眠障害の診察をされているということもその一因かもしれません。

 興味深い本です。睡眠の謎を知るために、ぜひご一読ください。
 
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 参考文献:『時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子』
                       粂和彦 (講談社現代新書)
 

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