企業が大きくなればなるほど、いわゆるお役所気分というものが強くなってきます。ところが、中小企業はそういうことをしていては、会社がやっていけません。ですからどうしてもいやおうなしに働かなくてはならないということがあります。また従業員が二十人とか五十人とかいうことであれば、お互いの気心や動きがよくわかって、打てば響くすばやい動きができやすいということもあります。
そういうことから、私は中小企業ほど人がその能力を十分発揮しつつ働きやすいところはないし、また実際よく働いていると思うのです。
『松下幸之助 成功の金言 365』 9月26日の節より引用
私は平成2年(1990年)に大学を卒業して社会人になりましたが、その頃の大学生の就職希望先は、まずは大企業で、中小企業はあまり人気がありませんでした。
私も周りの友人たちの行動とその空気に染まって、東証一部上場の金融機関に就職しました。
いま、その企業の名前は残っていますが、資本は二度変わりました。
誰もが安泰だと信じて疑うことのなかった企業が、3月の大震災によってまったく不安定な企業になってしまいました。
上場企業だから大企業だからといって安全だということはないのです。もはや大企業だから、という理由だけで会社を選択をする学生は少なくなっているのではないでしょうか。
松下幸之助さんは、冒頭の文章に続いて、大企業では人の力の70%しか生かすことができないが、中小企業では100%から120%も生かすことができ、これは中小企業の強みだ、と述べておられます。
大企業であっても業績のよいところは、中小企業のような個性的な社長がいて、小さなユニットで管理されてる企業が多いような気がします。
私は中小企業で働くことができてよかったと思っています。小さくて不安定な船ですが、波間で揺れることを生き方として受け入れましたし、波にのまれそうなときには社員とともに力を発揮できます。
大学を卒業して間もないころ、有名な大企業のきれいなオフィスで働いているということに誇りを感じていた自分を恥ずかしく感じます。
会社を信じてついてきてくれている社員とともに、生き生きと力を発揮していこう、と思います。

参考文献:『松下幸之助 成功の金言365』 松下幸之助 (PHP研究所)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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