森信三さんは、『修身教授録』の中の「大志を抱け」という講義で次のように述べています。
野心とか大望というは、畢竟するには自己中心のものです。すなわち自分の名を高め、自己の位置を獲得することがその根本動機となっているわけです。ところが、真の志とは、この二度とない人生をどのように生きたら、真にこの世に生まれてきた甲斐があるかということを考えて、心中つねに忘れぬということでしょう。ですから結局最後は、「世のため人のために」という所がなくては、真の意味で志とは言いがたいのです。
森信三 『修身教授録』より引用
少年よ、大志を抱け・・・というと、札幌農学校の初代教頭であったウイリアム・スミス・クラーク博士の言葉として有名です。
この講義でクラーク博士の話は全く出てきませんし、講義の題名も誰がつけたのかは分かりませんので、関係があるかどうかは不明ですが、クラーク博士は明治19年に亡くなっていて、森信三さんは明治29年にお生まれですから、この言葉を知っていたかもしれませんね・・・
先日、株式会社フォーバルの大久保秀夫会長の講演を拝聴しましたら、昨今の企業の多くは、経済性、独自性ばかりを追求して、社会性が後回しになっている、というご指摘がありました。
大久保会長は、企業経営は、まずは社会性が大切で、次に経済性、最後に独自性だ、とおっしゃっていました。
社会のお役に立つ、人のためになる、という理念のある会社でないと、お金のために経営がぶれてしまって長続きしない、ということです。
森信三さんの講義は、個人の志について述べたものですが、「世のため人のため」でなくては、真の志とはいえないといいます。
個人の志も、企業の理念も、同じことですね。
いまこそ、もっと必要になってきていることだ、と思いました。

参考文献:『修身教授録』 森信三 (致知出版社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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