『文は一行目から書かなくていい』を読んで

2011年08月20日

 芥川賞作家が文章術を公開してくれる・・・

 それが藤原智美さんの『文は一行目から書かなくていい』です。

 藤原さんのお名前は女性と間違えてしまいそうですが、1955年生まれの男性で、1992年に『運転士』により第107回芥川賞を受賞されています。

 私はいままで藤原さんの小説は読んだことがなかったのですが、芥川賞作家の文章術という内容に大変興味をもち、早速取り寄せてみました。

 藤原さんは、文章の本質は「ウソ」である、といいます。
 
 人は自分の見聞きした事柄や考えを文字に起こすプロセスで、言葉を選択したり、何らかの修飾を考えます。言葉の選択や修飾は演出そのもの。そうした積み重ねが文章になるのだから、原理的に「文章にはウソや演出が含まれる。あるいは隠されている」といえます。

              『文は一行目から書かなくていい』より引用


 文章の本質は創作であり、ありのままに描写した文章などというものは存在しないのだそうです。

 たとえノンフィクションでも、事実に反するウソはルール違反ですが、演出のない文章はないのです。

 文章ではないですが、かつてNHKの番組『プロジェクトX~挑戦者たち~』がヒットしたのも、演出がふんだんに盛り込まれていたからだろう、といいます。

 藤原さんのこの考え方は、テレビや新聞の報道を鵜呑みにはしないでおこうと普段から気を付けている私にとっては、大変納得のできることです。

 中立だという報道であっても、何らかの意図や演出が入ってしまうから、流されないように、自分でよく判断しなくてはならないのです。
 
 文章を書くときには、どうしてもウソや演出が入ってしまう・・・つまり、それこそが自分の書く文章なんだ、と理解したうえで書けば、少し気が楽です。

 次に引用するところは、私がいつも気を付けていることです。

 一方、「みんながこういっているから乗っかっておこう」「こう書いておけばみんな共感するだろう」という落としどころが先にある文章は、そこに当てはめるようにして言葉を探すから、借り物のにおいが漂って説得力を失うのではないでしょうか。

             『文は一行目から書かなくていい』より引用  
  
 
 私も立場上、ブログに書きたいけれども書けない内容があり、そういうときには一般論を書いてしまい、つまらない文章になりがちです。

 こんなつまらないことを書いてしまって・・・と後悔するのはいやなものですね。

 立場はあろうとも、一般論に逃げないで、立場にもとづいた責任ある自分の文章を書こう、と思いました。

 ブログを書かれている方や普段から文章を書く機会の多い方には、大変役立つ本です。ぜひご参考になさってください。 

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 参考文献:『文は一行目から書かなくていい』 藤原智美 (プレジデント社)
 

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