日曜日の夕刻、菩提寺でお参りをしていたときのことです。
後ろの方からパタパタと足音がして、誰かが近づいてきました。
顔を上げてみると、本堂のガラス戸に、白い半袖シャツと青い半ズボンの小学生らしき男の子が山門の方から走ってくるのが映っていました。
2年生くらいでしょうか、その子は私がお参りをしている間、「招福の鐘」を撞いてみたり、観音さまの横に掲げてある絵馬を見たり、一人、所在なさげに遊んでいました。
私を見て何か喋りたそうでしたので、
「こんにちは~一人で遊びに来たの?」
と声をかけてみました。
すると、
「はい、えーと、前に社会科見学でこのお寺に来たことがあったので、また一人で来てみました。」
と随分丁寧な言葉で話すのです。
「そうか・・・えらいなあ。絵馬も書いたの?」
と聞きますと、うれしそうに自分の書いた絵馬のほうを見ています。
私はスーツを着ていましたけれども、頭が少々お坊様に似ておりますし、普通のお寺で数珠をしてお線香を焚いてお参りをしている人はあまりいませんので、その子は私をお坊様だと思ったことでしょう。
私は「一緒にナンマイダーしてみる?」と言ってみたいのをこらえました。
その子はひとしきり境内を走り回っていたかと思うと、さっとどこかへ消えていきました。
一人でお寺に遊びにきてみたのに、お坊様みたいな人がいたから、いずらくなったのかもしれないな・・・と思いました。
私がお線香やらお花の包み紙やらを片づけて、寺の山門を出ようとしたときには、辺りは少し暗くなりかけていました。
お寺のある高台から見下ろすと、家々の窓にオレンジ色の灯りがともされ始めていました。そろそろ夕御飯の時間なのでしょう。
あの子は、どの家の子供なのかな・・・
私は、温かそうな灯りを見つめておりました。
Hitoshi Yonezu at 10:00
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