路肩になめらかに停車する、白と青のギャラクシーカラーのトラック。
運転席から、颯爽と降り立つと、小脇に荷物を抱えて、全速力で駆けだすドライバー。
今や全国どこへ行っても見ることのできる佐川急便のセールスドライバーの活躍ぶりです。
佐川急便ではどんな教育がおこなわれているのでしょうか。
その謎を解き明かしてくれるのが、大重寛さんの「ブラック社員がこんなに!動く 佐川急便の『マネジメント』」です。
大重さんは私と同じ1967年生まれ、佐川急便でセールスドライバー、教育担当講師、品質管理課課長などを務められ、勤続20年を機に退職、いまは独立されて、セールスドライバー育成セミナーや管理職研修などを行っている方です。
題名に「ブラック社員」とありますが、佐川急便では、一般的には難しいと考えられている方が応募されてくるそうです。
パンチパーマでヒゲを生やしてガムを噛んで、4つ折りの履歴書を出してくるようなヤツでもまず採用します。よその企業で通用しなかったような連中、一般のごく普通のサラリーマンになれなかったようなヤツらです。そういう人間でもとりあえずみんな採用、創業者の佐川清氏が、ものにするのはおまえらの仕事だという考え方だったのです。
「ブラック社員がこんなに!動く 佐川急便の『マネジメント』」より引用
どのような素質の方でも、とりあえず採用してみて厳しく教育する、というのが佐川急便の方針なのですね。この本の中には、社内で殴り合いになってしまったようなケースも紹介されていました。
大重さんの営業方針は、とにかくお客さまに対して誠実に対応するというものでした。
大重さんが係長として新しいエリアを担当したときに、利益率の高い時間指定サービス商品の割合が他地区に比べて高い、ということに気が付きました。
調べてみると、お客さまに詳しい料金の説明をしないで会社に有利な商品を獲る、という慣習があったのです。
大重さんは、係全体の業績が下がることを承知の上で、すぐに不明な取引をやめさせたそうです。
「おまえらは嘘の実績で説明不足な商品を獲ってきて給料上げてたんだから、下がって当たり前なんじゃ。俺もここに係が変わっていきなり給料下がるけど、そんなん当たり前やと思ってる。ほんまに正しいことをやれ、誰にも文句言われへんような営業展開をせなあかん。俺は自分で毎日怒られてるけど当たり前じゃ。そんなん屁とも思わへん。だからもう俺はババ引いたと思ってるけど、でもそれは仕方ない。絶対おまえら立て直してやるから、新しい営業展開するぞ」
「ブラック社員がこんなに!動く 佐川急便の『マネジメント』」より引用
上司からも業績の悪化を追及されたそうですが、正しい方法をとることにより、半年で元の業績に戻したそうです。
誠実な取引をするのは当たり前のことですが、係長のレベルで自分たちの間違いを反省し、責任をもって業績を回復させるというのはすごいことですね。
「佐川急便のマネジメント」という題名ですが、マネジメントについての記述を期待して読むと、がっかりするでしょう。佐川急便での体験談が中心にまとめられています。また、文章がやや読みずらいという難点があります。
元気な佐川急便のセールスドライバーの皆さまがどのように教育されているのか知ることができます。ご参考になさってください。

参考文献:「ブラック社員がこんなに!動く 佐川急便の『マネジメント』」
大重寛 (東邦出版)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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