『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』は、キャノン電子の社長である酒巻久さんが、同社を高収益体質に変える元となったドラッカーの教えをまとめた本です。
酒巻久さんは、1967年にキャノンに入社し、常務取締役生産本部長まで務めた後、1999年、キャノン電子の社長に就任しました。
環境経営の徹底により、同社を売上高経常利益率10%超の高収益企業へと成長させた有名な経営者です。
立ったまま会議を行ったり、社内を歩くスピードの基準を決めたり、同社のユニークな取り組みは、メディアなどでもたびたび取り上げられてきました。
酒巻さんがキャノンに入社して初めて給料をもらった日の帰り道、書店に立ち寄って記念に何か一冊買おうと思って手に取った本が、ドラッカーの『経営の適格者』だったそうです。
そこには次のような文章が書かれていたそうです。
「有能な人びとは強みのうえに仕事を築き上げる。こうした人びとの設問は、”自分のできないことは何か”、または”彼のできないことはどんなことか”ということではなく、”自分にできることは何か、そして彼のできる仕事は何か”という問題である」 (『経営の適格者』)
この文章を読んで、できないことはできる人にやってもらえばいいんだ、自分にできることは何か、周りの人ができることはなにかについて目を向ければいいんだ!と気がついたそうです。
このことは、その後、東大卒の一流の技術者に伍して生き抜き、長くキャノンの研究開発部門の責任者を務める元になったそうで、このときのドラッカーとの出会いは僥倖であったと述べています。
『もしドラ』と同様に、ドラッカーの文章を随所に引用して、それに対する酒巻さんの考え方や実例が紹介されています。
ドラッカーをどう理解するか、成功した経営者の意見と比べながら読んでいくと大変勉強になると思います。
『もしドラ』を読んでドラッカーに興味をもった方は、ぜひこちらもご一読ください。

参考文献:
『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』 酒巻久 (朝日新聞出版)
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
岩崎夏海 (ダイヤモンド社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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