『ハゲとビキニとサンバの国 ブラジル邪推紀行』は、国際日本文化研究センターの教授で建築学者の井上章一さんが、ブラジルの社会や風俗についてつづった文化論です。
井上さんは、リオデジャネイロ州立大学の日本語学科の招きにより、数か月をブラジルで過ごしました。
ブラジルの公用語であるポルトガル語では、ハゲのことをカレッカというのだそうですが、ブラジルにはハゲを歌った曲がたくさんあるのだそうです。
井上さんは招待されたイパネマの酒場で、ハゲの歌を歌いながら、ハゲ頭の観客にキスをするセクシーな女性歌手を見て、ブラジルでは「ハゲがもてるのだ」と思ってしまい、日本でもそのことを吹聴してしまったそうです。
しかし、後に曲の歌詞を調べてみると「女性が困ったときにはハゲに頼る」という内容だったそうで、ブラジルにおいても、ハゲは恥ずかしいという思いがある・・・ということが分かったといいます。
ハゲというだけで、もうダメ・・・という女性の方もいるそうですから、ハゲの男性は気の毒ですね。
私は、ハゲとからかわれることもありますが、自分の特徴の一つになってしまったので、もはや恥ずかしいとは思いません。
かの有名なルース・ベネディクトの日本論『菊と刀』には、日本の「恥の文化」とキリスト教を背景とした西洋の「罪の文化」を論じた部分がありますが、この本を読むと、キリスト教文化といっても、今では「罪の文化」と一概に論じることはできない、ということもよくわかります。
日本とブラジルの違いを比較しながら、日本のことがよく考察されていて興味深い本です。どうぞご参考になさってください。

参考文献:
『ハゲとビキニとサンバの国 ブラジル邪推紀行』 井上章一 (新潮新書)
『菊と刀』 ルース・ベネディクト (光文社古典新訳文庫)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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