秋来ぬと

2010年10月03日

 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる      

                 藤原敏行 <古今集・巻四・秋歌上・一六九>


 今年の夏は大変な猛暑で、9月になってもまだ暑かったので、いつになったら秋になるのだろう・・・と思っているうちに秋になっていました。
   
 この有名な和歌で藤原敏行が感じたような瞬間がないままに、ガラッと秋にかわってしまったような気がします。

 10月になったら、秋一色となり、落ち葉は舞っていますし、ブーツをはいている人、コートを着ている人は見かけますし、秋刀魚も、きのこも、梨もおいしいです。

 松尾芭蕉と同時期に活躍した俳諧師、上島鬼貫はこの和歌を口語化することで俳諧化しました。

 
そよりともせいで秋立つことかいの          鬼貫


 敏行の感じた情も、鬼貫の感じた情も、いま我々が感じている情と、全く変わりはありません。

 平安時代、江戸時代とは、全く違う世の中になりましたが、日本の秋は着々とめぐってきますし、日本人の感受性は脈々と受け継がれています。

 とてもありがたい気持ちになります。


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 参考文献:
 『和歌の解釈と鑑賞事典』 井上宗雄 武川忠一 (笠間書院)
 

 『百人一句 俳句とは何か』 高橋睦郎 (中公新書)
 

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