福澤諭吉先生の『学問のすすめ』に、桶狭間の戦いで敗れた今川義元の今川軍と、普仏戦争で敗れたフランス皇帝ナポレオン三世のフランス軍の話が出てくる。
桶狭間の戦いでは、織田信長によって今川義元の首がとられると、今川軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまい、駿河の今川政府も一日にして亡びてしまった。
一方、ナポレオン三世は、プロシアの捕虜になったけれども、フランス人は望みを捨てることなく、ますます発憤して必死に防戦し、籠城し、和睦に持ち込んで、フランスは国を保った。
福澤先生はこの二つの違いは、人民の国を思う気持ちだという。
駿河の民は、義元ただ一人にすがって、人民はお客さまのような気持ちでいた。ところが、フランスでは自国を大切に思うものが多く、国難を自分の身に引き受けて、自ら自分の国のために戦ったのだ。
国を思う深く強い気持ち、独立の気概が国民にあれば、トップがいなくなったとしても国は保たれていくのだ。
この話は明治七年に書かれたものだが、改めてこの部分を読んで、福澤先生の炯眼に正直に感動した。
今の日本も全く同じ状況ではないか・・・
実際に戦争があったわけではないが、経済や国家財政はまるで戦後のように荒廃している・・・
風説ばかりに右往左往して、意思をもたぬ日本の国民・・・
いつまでも敗戦国という枠組みの中から抜け出せず、いつも損ばかりの国・・・
景気が悪いといっても、途上国に比べれば段違いに裕福なのに、時間を無駄にしている・・・
我々は明治時代の日本人のように、独立自尊の心、独立の気概をもっているのか・・・
福澤先生の『学問のすすめ』はいまこそ読むべき本だと思った。

参考文献:
『学問のすすめ』 福澤諭吉 (岩波文庫)
『現代語訳 学問のすすめ』 福澤諭吉 斉藤孝訳 (ちくま新書)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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