『これだけで「組織」は強くなる』は、ワタミの渡邉美樹会長と、東北楽天イーグルス名誉監督の野村克也監督が、往復書簡のような形で、それぞれの組織のつくり方について語った本です。
野村監督と渡邉会長について、私は違うところにいる二人だというイメージをもっていましたので、二人が仲がよいというのは意外でした。
渡邉会長には、現在の規則では不可能なのですが、野村監督に御自身の経営する郁文館高校の野球部監督になってもらい、甲子園に出場させたい、という夢があるそうです。
野村監督は「鞍上、厠上、枕上」という言葉を紹介し、現役を引退してからヤクルトの監督になるまでの9年間、馬の鞍の上(乗り物の中)でも、トイレでも、寝室でも、本を読みふけったと語っています。この読書の蓄積が、毎日のようにテレビを沸かせた「野村語録」というコメントの土台になっているそうです。
渡邉会長は、本を読まない人は人生の半分を損しているといい、読書を通じて、心の勉強をするべきだといいます。『論語』や山岡宗八さんの『徳川家康』全26巻などを紹介されています。
ただ、あたかも答えがあるように書かれているビジネス書や、理論だけで答えがでるようなコンサルティング的な考え方の本については否定的で、中途半端に関わるべきではないと言っています。
渡邉会長はいままでの本でも貫いてきたことを、この本でもぶれることなく語っています。野村監督については、テレビを通じてしか知りませんでしたので、その考え方を文章として初めて読みました。
かみあっているところも、かみ合っていないところもあるように思いますが、この二人にどのような共通点があるのか、考えながら読んでいくと面白いです。

参考文献:『これだけで「組織」は強くなる』 渡邉美樹 野村克也 (角川書店)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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