越後屋にきぬさく音や衣更 其角
大酒遊興して馴染みの遊女のもとに一泊した朝帰り、たまたま通りかかった駿河町の越後屋の前で「きぬさく音」を聞き、いささか重たくなった酒びたりの生活とも別れて、新しい生活に衣更えしたいものだ、と裏を読めば、一句の趣は格段に深くなる。(『百人一句』より引用)
久しぶりにに営業にこられた大手銀行の行員の方が、
「すみません、6月からクールビズなので、ネクタイなしで失礼いたします」
と言った。ジャケットに白いシャツを着て、襟元はすかすかとしている。
数年前にクールビズが盛り上がった時から、6月にクールビズの服装にできることを楽しみにしていた。
その後、どうもその普及が完全ではなかったので、いまではネクタイを外すことを何となく躊躇してしまっている。
お客さまがネクタイをしておられるのなら、私もしなくては、と思ってしまう。
ハワイのアロハシャツのように、正装として認められていれば、話は早いのに。
スーツからアロハに衣替えするのなら、私も其角の感じたように「生活を変えるぞ」と思えるかもしれない。
遊女のもとに一泊なんて、粋なことはしていませんがね・・・
参考文献:『百人一句』 高橋睦郎 (中公新書)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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