笹団子の想い出

2010年05月01日

 暑からず寒からずの良い季節でございます。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 新潟県に出張したときに、笹団子を見かけて、「笹団子といえば、祖母の想い出だなあ~」と懐かしくなりました。

 祖母は新潟県の旧新井市、いまの妙高市の生まれでした。

 小学生のころ、新井に帰省する祖母に何度かついて行ったことがありました。上田発新潟行きの国鉄の急行「とがくし」に乗っていきました。私は鉄道が好きな少年だったので、上田駅を始発する急行であるということが誇らしくて、この列車が好きでした。(ちなみに上田駅始発の特急としては、夏だけの臨時特急として「そよかぜ」がありました。)
 金沢行きの特急「白山」や、直江津行きの特急「あさま」もありましたので、もう少し早く新井に到着できたはずですが、祖母は「とがくし」以外は乗りませんでした。いま考えるに、明治生まれの祖母は質素だったので、倹約のために安い急行を選んでいたのではないかと思います。

 その頃、祖母の実家では、姉が鍼灸院を経営しており、よく効くとの評判で、予約がとれないほど繁盛していました。
 祖母の実家はもともと裕福な米問屋だったそうで、その名残なのか、太くて黒い柱がびゅんとそびえて、中二階のような場所もある、とても天井の高い建物だったことを記憶しております。

 当時、私は小児喘息と診断されていて、少々病弱だったので、小学生ながら、お灸をすえてもらったり、針を打ってもらったりしました。祖母も鍼灸の治療を受けていました。お待ちになっている患者さんに、「遠くから来ているので、ごめんなさいね」と言って、順番を先にしてもらっていました。
 そのに他は何もすることがなく、祖母たちの話が終わるのを待っていました。

 帰りがけにはいつも新井駅近くの本屋さんに寄りました。田舎の本屋さんですから種類が少なくて、欲しいと思えるようなものがありません。祖母も孫の趣味が分からないので、私にとってはかなりミスマッチな買い物になってしまいます。
 でも、子供ながらに、無理を言っておばあさんを悲しませるのはいけないだろうという意識があったので、祖母の薦める本をそのまま買ってもらって、うれしいような気持ちになっていました。

 その近くのお菓子屋さんだか、お土産物屋さんだかで、笹団子を買いました。祖母は、社員全員に渡せるように、そして近所の方や、親戚の皆さんに渡せるようにとたくさん買っていました。

 帰りの急行「とがくし」に乗ると、途中で外は真っ暗になってしまいます。祖母はいつも私をかわいがってくれていましたが、生真面目だったので、会話はあまり弾むことがなく、私は電車の中で寝てしまいました。ハッと目を覚ますと、祖母はぱっちりと目をひらいていて、何かを考えているようでした。
 
 家に帰って、祖父、父、母、弟たちが集まったところで、お土産の笹団子を開きます。笹の葉が粘り気のある団子にくっついて、さけてしまい、うまくむくことができません。子供にとってはとても食べずらいお菓子でした。味はあまり覚えていないのですが、笹の香りをかぐと、新井の想い出がふっとよみがえってきます。

 つまらない昔話をしてしまって恐縮ですが、私も若いころには、先輩の昔話をつまらないと思いながら聞いておりました。いまではその自分が昔話をするようになってしまいました。

 考えてみれば、人との触れ合いがあったからこそ、想い出になったわけです。
 もしも当時、手持ち用のゲーム機でもあって、「とがくし」の中でも、先方のお宅でも、ピコピコと画面にばかり向かっていたら、新井に行っても何の情緒も感じることはなく、いま、こんな文章を書くこともなかったでしょう。人との触れ合いがあったからこそ、昔の話ができるのです。
 
 実世界において手探りで感触を確かめていくことがすべての基礎であろうと思います。もし、機械やコンピューターだけの世界だったら、どんなにつまらないことでしょうか。文学や、音楽や、絵画のもととなるものが生まれてきません。実際に触れていくということは、人間として決して失いたくないことです。(すみません、私もiPhoneをもつようになってから、画面の世界に入っていることがありました!)

 末筆となりますが、新年度の皆さまがたの弥栄を、こちら信州上田のささや株式会社よりお祈り申し上げます。どうか今月もお元気でお過ごしくださいませ。
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