通常とは昨日の現実に過ぎない

2022年10月03日

 信州では秋も深まり、日に日に肌寒くなってまいりました。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 コロナ禍の波は大変大きく、生活や経済を激変させました。当社のビジネスについては、いまだに先行きが見えません。

 冷たい秋の雨に打たれながら、この環境変化は何なのだろう・・・と考えます。

 消滅した商売や企業があるのですから、環境の激変は、われわれの身の回りで、過去、繰り返し発生してきました。

 元に戻るのだろうか・・・?
 
 ドラッカーの『創造する経営者』からご紹介します。

 あらゆる意思決定と行動がそれを行った瞬間から古くなり始める。したがって通常の状態に戻そうとすることは不毛である。通常とは昨日の現実に過ぎない。

              P.F.ドラッカー『創造する経営者』p10より引用


 以下は原文です。

 Any human decision or action starts to get old the moment it has been made.
 It is always futile to restore normality; ”normality” is only the reality of yesterday.

 
 翻訳で「通常」と訳されている言葉は、原書では”normality”となっています。

 ”normality”を英和辞典で調べますと「常態」「正常」「正常性」などと訳されておりますので「正常」と訳してもよいかと思います。(上田先生の翻訳は独特ですので、原書を突き合わせていく楽しみがあります。)

 「通常」と「正常」では少し印象が変わりますね。

 「正常」と訳せば、コロナ禍の今に合うような気がします。

 私が「正常」だと思っていたコロナ前の状態は、その瞬間から古くなっていました。「正常」とは戻るべき場所ではなくて、「過去の現実」に過ぎないわけです。

 みなさまが当社のことを心配をしてくださって「ご商売どうですか?」と聞いてくださるのですが、いまや「元には戻らないでしょうね」と答えるしかありません。

 これは、この3年間で、生活様式、行動様式が変わってしまい、「元」がなくなったからです。

 ドラッカーは「正常」とは絶対的な定位置ではなくて、相対的な概念であることを見抜いていました。

 私が「元」だと思っていたコロナ前の2019年の姿は「2019年の現実」であり、もはや過ぎ去ってしまったことです。コロナ禍がなかったとしても、「正常」はやがて確実に過去の出来事になってしまうのです。

 あれは夢だったのか・・・

 私の仕事もコロナ前とはだいぶ変わり、2019年の「正常」に対して、喪失感を覚えております。

 ただいま当社は事業の再構築を進めております。みなさまには大変ご迷惑をおかけいたしております。心よりお詫び申し上げます。

 一日一日、未来に向けて歩みを進めております。今月もよろしくお願いいたします。-


 参考文献:
 『創造する経営者』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

  

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