必要条件としての利益

2022年06月11日

 入梅とともにはっきりしない天気が続いております。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログではドラッカーの『マネジメント』を読んでおります。前回は「八つの目標」のうち「社会的責任」についてご紹介しました。。

 八つの目標
 (1)マーケティング
 (2)イノベーション
 (3)人的資源
 (4)資金
 (5)物的資源
 (6)生産性
 (7)社会的責任
 (8)必要条件としての利益

 今回は「必要条件としての利益」の部分を読んでみます。

 利益とは企業存続の条件である。利益とは、未来の費用、事業を続けるための費用である。 諸々の目標を実現するうえで必要な利益をあげている企業は、存続の手段をもっている企業である。諸々の目標を実現するうえで必要な利益に欠ける企業は、限界的な危うい企業である。

 それら七つの領域における目標達成に必要な利益とは、企業がその社会的かつ経済的機能を果たすうえで必要とする利益でもある。
 (1)事業の継続に伴うリスクをカバーする。
 (2)雇用を創出する。
 (3)イノベーションを行い経済発展の担い手となる。

 もちろん利益計画の作成は必要である。しかしそれは、無意味な常套語となっている利潤極大化についての計画ではなく、利益の必要額についての計画でなければならない。ただしその必要額は、多くの企業が実際にあげている利益はもちろん、その目標としている極大額をも大きく上回ることを知らなければならない。           
 
                    『マネジメント(上)』p148より引用

 
 当然のことですが、上場している企業は株主を見ていますから、利益額を経営の目標に組み込んでいます。このドラッカーの文章を読んで、企業が利益を目標にして何が悪い!と思われる方も多いでしょう。
 日本の中小企業のは株主と経営者が同じであることがほとんどで、その場合、経営者が株主の顔色を窺うということがありません。「顧客の創造」のために、経営者(=株主)は自由に経営ができます。日本の中小企業がドラッカーと親和性が高い所以です。

 ドラッカーは利益を否定しているわけではありません。利益の最大化を目標にしてはいけないのです。「利益は企業存続の条件である」ということになります。

 企業存続の条件とは八つの目標のうち「必要条件としての利益」を除く七つの目標を達成するために必要な経費を確保するための利益ということになります。利益は最大化することを目標にするのではなく、必要額を確保する目標を立てるということになります。

 それなら少しだけ利益があればいいのか?ということになりますが、引用しました文章にありますように、その金額は一般に考えられている金額よりもずっと大きなものであるということです。
 ドラッカーは、具体的な金額や売上高に対する比率は示していませんが、(1)~(7)を達成するために必要な金額と言えば、どの企業にとってもかなり大きな金額になることはご想像して頂けるかと思います。

 すべてのみなさまが日に日に少しずつ幸せになっていきますように。今月もよろしくお願いいたします。

 


 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

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