信州も若葉が萌え少しずつ初夏の雰囲気を感じます。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログではドラッカーの『マネジメント』を読んでおります。前回は「目的とミッション」の章から体系的廃棄をご紹介しました。今回は「目標」についてです。
目標は次の八つの領域において必要とされる。
(1)マーケティング
(2)イノベーション
(3)人的資源
(4)資金
(5)物的資源
(6)生産性
(7)社会的責任
(8)必要条件としての利益
これらの領域についての目標が五つのことを可能にする。事業の全貌の把握、個々の活動のチェック、とるべき行動の明示、意思決定の評価、現場での活動の評価と成果の向上である。
目標は絶対のものではない。方向づけである。命令されるものでもない。自ら設定するものである。未来を定めるためのものでもない。未来をつくるために、資源とエネルギーを動員するためのものである。
『マネジメント(上)』第8章「目標」p130-133より抜粋して引用
ご覧のようにドラッカーは「社会的責任」を目標に掲げています。
「企業の目的は顧客の創造である」というのはドラッカーの有名な言葉ですが、顧客が喜ぶなら何をしてもいいのか?という疑問があるかと思います。
ベストセラー書『ホモデウス』には、次のような逸話が載っていました。
スウェーデンのウプサラ大学で遺伝子学を研究しているレイフ・アンダーソン教授は、乳房が重いためろくに歩くことのできない牛や、特別に肉付きが良いために立ち上がることさえできないニワトリを、遺伝子操作により開発したそうです。これらの遺伝子操作は動物たちに大きな苦しみを生むのではないか?との問いに対して、アンダーソン教授は次のように答えています。
「もとをたどれば、すべては個々の消費者にたどり着きます。消費者が肉にいくら払う気があるかという疑問に……現在の世界的な肉の消費レベルは、[能力を強化された]現代のニワトリ抜きではとうてい維持できないだろうことを、思い出さなければなりません……消費者が私たちにできるかぎり安い肉だけを求めていたら──消費者はそれを手にすることになるのです……消費者は自分にとって何がいちばん重要かを決める必要があります──価格か、何かそれ以外のものなのかを」
『ホモデウス(下)』より引用
消費者が望んでいるものを実現させるのが科学だと言わんばかりです。
私(昭和42年生まれ)は子供の頃、目的に向かって頑張ることは、ほめられこそすれ、非難されるものではありませんでした。
しかし、そのがんばる体質が、倫理観や哲学を後回しにしてしまいます。そして、数値目標を絶対に達成する、という個人や組織の達成欲を満たすためだけのものに歪曲されてしまうことがあります。
ドラッカーが目標に「社会的責任」を加えたのは、目的のためになんでもやってしまう恐れのある現代経営に警鐘を鳴らしていたものと言えましょう。
一刻も早く世界に平和が訪れますことを祈念しております。今月もよろしくお願いいたします。

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
Hitoshi Yonezu at 12:46
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