暖かな日差しが春の訪れを感じさせる今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』の「第11章 自己管理による目標管理」を読んでおります。興味のある部分を取り上げて、飛ばしながらご紹介しております。
前回は、高度な専門性の追求が事業の全体観を失わせる恐れがある、という内容をご紹介いたしました。続きの部分を読んでみます。
マネジメントを的確に行うには、目標間のバランスが必要である。危機感をあおるマネジメントや、キャンペーンによるマネジメントを行ってはならない。
『現代の経営(上)』 p174より引用
この部分を原書で見てみましょう。
Proper management requires balanced stress on objectives, especially by top management. It rules out the common and pernicious business malpractice: management by “crisis” and “drives.”
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker
少しおおまかに訳されていますね。ところで、この章の題名にもなっている「キャンペーンによるマネジメント」とは何でしょうか?
「キャンペーンによるマネジメント」は、原書ではmanagement by drivesとなっています。driveという言葉の意味を辞書で調べてみると「(獲物の)駆り立て、(群れの)追い立て、(仕事を進めていく)迫力、精力、気力、(寄付募集などの)猛運動、大宣伝」という意味がありました。目標達成のために、後ろから激しく追い立てていくようなイメージでしょうか。
今週は〇〇商品を売れ、来週は経費削減だ、来月は代理店を回れ、というように、マネジャーの思い付きと気合でマネジメントを行うことを示しているのだと思います。いまでもこのようなマネジメントをしている会社はあると思います。キャンペーンという訳語は、さすが上田先生の翻訳ですね。
キャンペーンによるマネジメントは、当座しのぎのマネジメントと同じように、混乱の兆候である。無能の証拠である。いかに計画するかをトップマネジメントが知らないことを示す。何を期待すべきか、いかに方向づけすべきかを知らないことを示す。人を間違った方向に導いていることを示す。
『現代の経営(上)』 p176より引用
原書は次の文章です。
Management by drive, like management by “bellows and meat ax,” is a sure sign of confusion. It is an admission of incompetence. It is a sign that management does not know how to plan. But, above all, it is a sign that the company does not know what to expect of its managers—that, not knowing how to direct them, it misdirects them.
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker
経営者には、あれもやりたい、これもやりたい、という気持ちがあると思いますが、それは単なる気まぐれやブームに振り回されているだけかもしれません。わが社は何のために存在しているのか、わが社の顧客はどなたか、という基本的な問いを忘れてしまうと、その場しのぎの施策になってしまいます。やがては、社員たちはあきれてしまい、会社は迷ってしまうでしょう。浮利を追うような態度は戒めなくてはなりませんね。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。みなさまのご多幸、ご健勝を祈念しております。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
Hitoshi Yonezu at 10:00
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