自己管理による目標管理

2021年01月04日

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年はコロナ禍のなか、格別のご厚情を賜りましたこと、心より御礼を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。「第11章 自己管理による目標管理」に入ります。

 「目標管理」という言葉は日本語に訳した際に「自己管理による」が抜け落ちた上で独り歩きしてしまいました。上司から示された目標を達成させるというイメージの言葉になってしまいましたが、もともとは「自己管理による目標管理」だったのです。原書ではManagement by objectives and self-controlと表現されています。この点については、この章の後半に述べられていますので、追い追いご紹介いたします。

 組織の目標と個人の目標について書かれている部分を引用いたします。

 組織はチームをつくりあげ、一人ひとりの人の働きを一つにまとめて共同の働きとする。組織に働く者は共通の目標のために貢献する。彼らの働きは同じ方向に向けられ、その貢献は隙間なく、摩擦なく、重複なく、一つの全体を生み出すよう統合される。 事業が成果をあげるには、一つひとつの仕事を事業全体の目標に向けなければならない。仕事は全体の成功に焦点を合わされなければならない。期待すべき成果は事業の目標に基づいて決められる。それは組織の成功に対する貢献によって評価される。

               『現代の経営(上)』 p166より引用

 
 この部分を原書で見てみましょう。

 ANY business enterprise must build a true team and weld individual efforts into a common effort. Each member of the enterprise contributes something different, but they must all contribute toward a common goal. Their efforts must all pull in the same direction, and their contributions must fit together to produce a whole—without gaps, without friction, without unnecessary duplication of effort. Business performance therefore requires that each job be directed toward the objectives of the whole business. And in particular each manager’s job must be focused on the success of the whole. The performance that is expected of the manager must be derived from the performance goals of the business, his results must be measured by the contribution they make to the success of the enterprise.
     
       "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 もしも個人の目標が組織の目標とかけ離れたものであったなら、その個人の仕事はいつまでたっても「部分」であり、組織全体への貢献する、という価値観を共有することはできないでしょう。
 以前、当社に、ある一つの仕事しかしないという従業員がいました。その人はその仕事については一番早くうまくこなすのですが、他の仕事を覚えることや他の仕事を手伝うことを拒否していました。飲食店はさまざまな仕事の組み合わせで成り立っており、周辺の仕事を覚えた方が、お客さまや他の従業員のためになり、全体最適は向上するのです。しばらくはその仕事だけやる、とがんばっていましたが、結局は、会社の方針に合わせられない、ということで自主的に辞めていってしまいました。

 小さな店舗の中でもこのようなことが起こるのです。誰もが自分の仕事をこなすのに精一杯だと思います。しかし、企業が成果を上げるためには、個人の目標は企業の目標から引き出されたものでなくてはなりませんし(must be derived from the performance goals of the business)、その評価も企業への貢献によって測られなくてはならない(his results must be measured by the contribution they make to the success of the enterprise)ということになります。
 自分のやりたいことや過去に起こったことばかりを主張する人には、企業の理念やビジョンをよく理解して頂かなくてはならないと思います。

 いつもご利用ありがとうございます。本年のみなさま方のますますのご繁栄を祈念いたします。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

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