利益は目標になるか?

2020年04月01日

 春風が心地よい季節となりましたが、みなさまいかがお過ごしですか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、先月までドラッカーの『現代の経営(上)』の「第6章 われわれの事業は何か」を読んできました。次の章「第7章 事業の目標」に移ります。

 事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。売りやすい製品に力を入れ、明日のための製品をないがしろにする。研究開発、販売促進、設備投資を目まぐるしく変える。そして何よりも資本収益率の足を引っ張る投資を避ける。そのため、設備は危険なほどに老朽化する。言い換えるならば、最も稚拙なマネジメントを行うよう仕向けられる。

                  『現代の経営(上)』 p82より引用

 
 最近は、利益最大化を公言する企業は少なくなったように思います。しかし、株主資本主義で考えるならば、株主は利益を上げることを企業に求めるでしょう。「稚拙」とは「技術や作品が子供っぽくへたなこと」です。ここでいう稚拙なマネジメントとは、利益の最大化を求めて数字の制御だけをしようとする態度でありましょう。利益だけを目標にしてしまうと、短期的な結果ばかりを追うようになります。 

 事業の目標は、事業の存続と繁栄に直接かつ重大な影響を与えるすべての領域において必要である。すべての領域とは、マネジメントの意思決定の対象として考慮に入れるべきすべての領域である。
 実に、それらの領域における目標が、事業の内容を具体的に規定する。事業が目指すべき成果とその実現に必要な手段を教える。ここにいう目標とは、次の五つのことを可能とするものでなければならない。

 (1) なすべきことを明らかにする
 (2) なすべきことをなしたか否かを明らかにする
 (3) いかになすべきかを明らかにする
 (4) 諸々の意思決定の妥当性を明らかにする
 (5) 活動の改善の方法を明らかにする

 利益の最大化という昔ながらの目標は、これら五つのことのすべてはおろか、そのいずれも満たすことができない。故に目標として失格である。

                  『現代の経営(上)』 p83-84より引用

 
 利益というのはあくまでも事業の結果であります。ドラッカーは利益が不要だ、とは言っておりませんし、『マネジメント』では、利益は企業存続の条件である、と言っています。利益の重要性は十分に認識しています。ただし、始めから目標にすべき性質のものではないのです。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

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