そこに利潤動機はあるのか?

2019年03月01日

 桃の蕾がふくらみはじめました。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、三月は日本の多くの企業が期末を迎え、一年間の成果が数字になって表れる時期です。世の中に損益のことを考えていない社長などいないでしょう。一円でも多く利益があげたいと考えるのが社長の情です。

 ドラッカーは『現代の経営』(1954年)で次のように述べています。

 事業体とは何かを問われると、たいていの企業人は利益を得るための組織と答える。たいていの経済学者も同じように答える。この答えは間違いなだけではない。的外れである。
 同じように、企業とその行動に関する一般に流布されたある経済理論、すなわち利益最大化の理論も完全に破綻している。それは「安く買って高く売る」というセリフの言い換えにすぎない。

              P.F.ドラッカー 『現代の経営[上]』 p43


 では、利益とは何か?ドラッカーは次のように述べています。

 利益は、企業や事業の目的ではなく条件なのである。また利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度なのである。(中略)

 利益についてこのような混乱を招いた原因は、利潤動機という本能的な動機が企業人の行動の動機であり基準であるとする誤った考えにある。しかし、利潤動機なる本能的な動機の存在そのものさえ疑わしい。利潤動機とは、そもそも古典派経済学が経済行為を説明するために考え出したものである。

              P.F.ドラッカー 『現代の経営[上]』 p44


 利潤動機は経済学が考え出したものだと言いますが、昔も今も、利潤動機で仕事をする人などいるでしょうか?
 時代劇では、お客さまのために誠心誠意働いているお店の主人は善人で繁盛しています。一方、廻船問屋上総屋(時代劇の一例です)は、利益を得るためなら何でもしてしまう悪者と決まっておりました。
 当社のお取引先さまは、仕事で役に立ちたいと考えている企業ばかりです。もしも、営業担当者から「当社は利益最大化を目的にしています」と言われたら、取引を考えてしまいます。そのことを隠すような二面性があったとしても、やがては露わになり、信頼を失うことになるでしょう。
 利益は企業経営にとって欠くべからざるものですが、目的にすべきものではないのです。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ささやタイムズ記事

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