今後の世界経済

2009年02月08日

 水野和夫さんは三菱UFJ証券のチーフエコノミストです。そのご著書『金融大崩壊「アメリカ金融帝国」の終焉』を拝読いたしました。
 この書籍は新書でコンパクトながら、今回の金融危機の意味と背景が分かりやすく解説されています。思い切った仮説もたてられていて大変興味深い書籍です。ぜひ読んでみてください。

 以下の文章は、第5章『「アメリカ金融帝国」終焉後の世界』から、ドルの今後について書かれた部分を内容が変わらないように要約したものです。

 (以下要約引用)
 アメリカの国債の購入者は、新規国債発行額が年間平均4000億ドル以上になった04年以降、外国人の割合が94%に達しています。しかし、アメリカは財政赤字のため、国債償還のあてがありません。公的資金の注入はドル危機の危険をはらんでいます。
 アメリカは外国人が国債を購入しないと、景気対策も金融安定化策も事実上できなくなってしまいました。09年度に08年度に比べて国債が5500億ドル増発されるとすると、アメリカの金融機関が新たに購入できるのがせいぜい2000億ドルくらいです。差し引き3500億ドルが外国人の追加購入額となります。ヨーロッパや中国、日本も不況対策として財政出動をしますので、アメリカ国債を追加購入していく余裕はないはずです。国債発行のたびにドルが下落していく可能性が高いでしょう。
 各国政府はドル急落の事態を受けて、ドル防衛策の名目で国債を買うことになります。値下がりするのが分かっているドル建てのアメリカ国債の購入を、各国が応じるのかどうかです。アメリカは円建ての国債を発行せざるをえなくなるかもしれません。結局最も多くの出資に応じるのは、中国と中東と日本になるでしょう。
 仮にドルの買い支えに成功しても、次の5年が過ぎるころ、アメリカがこれまでと同じような世界の中心、あるいは世界の最後の買い手として世界経済を引っ張っていくことはおそらくできないでしょう。
 (以上)

 私が日頃ご指導頂いているN先生は、これとほぼ同じことを一昨年から指摘されておられました。この仮説が現実になるとしたら、世界経済の構図は大きく変わることになります。
 大東亜戦争以降、アメリカはずっと世界の中心でした。世界のどこへ行っても、ドルは最も信頼される通貨だったのです。しかし、振り返ってみれば、あれだけ隆盛を誇ったローマ帝国も、大英帝国も、終焉を迎えました。アメリカの覇権だけが永遠に続くのでしょうか。

 20年前のことです。大学の経済政策の講義で、有名な教授が、
 「パクス・ブリタニカのあと、アメリカが覇権をとった。しかし、そのパクス・アメリカーナも終わろうとしている。次の時代は経済力をもとにしたパクス・ジャポニカである。」
 というような話をされました。その話を聞いて、これから日本は経済の国としてどんどん良くなっていくのだな~と、将来に夢を描いたことを思い出しました。

 アメリカではIT革命の起ころうとしていた時期ですが、経済はガタガタで、旅行に行くにも危険な一面がありました。日本はバブル経済の末期で、経済の状況はまるでお祭り騒ぎでした。多くの人々が経済の繁栄が永久に続くものだと勘違いをしていたのです。

 件の教授の話は、好調な日本経済のもとで、思わず出てきてしまったものだと思います。その後、大方の予想は外れ、日本のバブルは崩壊してしまい、教授の唱えたパクス・ジャポニカも夢と化しました。

 いま日本は、アメリカに頼っている政治・経済体制を、真剣に見直さなくてはならない時期に来ているのではないでしょうか。
 我が国が、小さくとも、強く、意思のある、平和な国家であり続けたらうれしいです。国民一人一人が人間性を高め、独立自尊の精神をもって、誇りと自信に満ち満ちているような状態になったらいいな~と思います。

 参考文献 『金融大崩壊「アメリカ金融帝国」の終焉』水野和夫(生活人新書)

 米津仁志 at 22:00  | Comments(0) | 経済

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