書店の経済書コーナーに立ち寄ると、このご時世のこと、経済情勢について解説した書籍がずらずらと並んでいる。
私見だが、経済書を書くエコノミストには大きく分けて二系統ある。一方は一流大学を卒業し、国内もしくはアメリカの大学院で経済学の学位をとって、研究所の研究員や大学教授になっている正統派のエコノミスト、かたやアカデミックの世界ではなく、実業や金融機関などで活躍し、その実体験から独自の論理を展開し、やや秘密めいたことや預言的なことまで書いてしまう異端派のエコノミストである。
私が大学や大学院で学んでいたときには、当然のことながら前者の書籍しか読まなかった。正統派のエコノミストは、一次データからの根拠を示し、経済学の論理をもとに実証を組み立てて、科学の流儀を守っている。
後者の書籍は興味を引くストーリー性はあるものの、論理やデータなどについて、主観性が高いことがある。万が一、論文作成などで後者の書籍を参考にしたら、指導教授に怒られてしまったことだろう。
学生ではない今となっては、どんな本でも読める。正直に言ってしまうと、読む側としては後者の書籍のほうが面白い。正統派の書籍はやや難しく、経済学の知識がないと理解しずらい部分もある。
私は経済書を読むことで、ビジネスや生活の羅針盤にしたいのだから、将来の予想や予測が当たったり、考える道筋をつけてくれたりしないと、読む意味がない。その意味では、正統派エコノミストだから正しいとは一概に言えないのである。
とりわけここ1~2年の経済の動きを振り返ってみると、あり得ないようなことが起こっているからかもしれないが、正統派よりも異端派のエコノミストが主張してきたことのほうが当たっているのである。異端派が言い続けてきたことを、今になってようやく正統派が主張し始めているという部分もある。
さて、以下は、上記とは独立した話題である。
藤原直哉さんのご著書『アメリカ発2009年世界恐慌』を読んだ。この本は有名な経済アナリストである藤原さんが、金融危機から始まった今回の景気後退について解説し、今後向かうべき方向性について提案している書籍である。
この本では、興味深い箇所が3か所あった。
一つ目は、アメリカが金融危機の対処に行き詰まり、ドルの流通に関して大きなルール変更をせざるを得ないようになると予想していることである。この件については、やや飛躍している話かと思っていたが、最近はいろいろな方が同じようなことを言い始めている。
二つ目は、理屈や理念で集まった組織や集団は、エネルギーが抜けると崩壊は早いということ。金融市場は、儲かるか、損をするかという理屈だけで集まっているから、崩壊が早い。
理屈で集まっている国家も崩壊は早い。日本は地縁や血縁で構成されている国だから、失敗があっても軟着陸ができ、崩壊することはないという。
三つ目は、今後のビジネスでは個性が大切になるということ。ただものを売るのではなく、この人の問題解決のために何ができるのか、この人のために「誂える」という、御用達の発想が重要になるとのことである。
面白い書籍ですので、ご参考になさってください。
参考文献 『アメリカ発 2009年 世界大恐慌』藤原直哉著(あ・うん)
Hitoshi Yonezu at 20:10
| Comments(0) | 経済
この記事へのコメントはこちらから