捲土重来

2008年12月31日

 私がまだ学生だったころ、スポーツにしても、勉強にしても、うまくいかないことがあると、父がよく「捲土重来を期する」という話をして励ましてくれたのを思い出した。これは「けんどちょうらい」とも「けんどじゅうらい」とも読む。一度負けた者が勢いを盛り返して、再び猛烈に攻めていくことを意味する。
 
 学生の頃はそう言われても、あまり実感がわかなかった。あまりにも将来が長くて、先が遠くて見えなかったからだ。

 柔道の団体戦の試合で、ここ一番というとき、格下の相手に負けてしまったことがある。私よりも小さくて軽い相手に、思いもかけなかった巴投げをくらってしまった。大きな者は小兵の巴投げには常に気をつけていなければいけなかった。「柔よく剛を制す」を身をもって体験してしまったのである。私の体がきれいにふわっと浮いた。私が負けた結果、その大会での我がチームの敗退が決まったのである。

 ところが、皮肉なことには、同じ大会の個人戦では私は優勝して、上の大会に駒を進めたのである。個人戦は勝って、団体戦は負けたというこの結果が、チームメイトに対して申し訳なく、とても卑怯なことをしでかしてしまったような気がした。柔道とは、そういう「道」を大切にする日本の伝統的武道である。

 この失敗は私の心に響いた。私一人だけが勝ち上がっていくというような、サムライらしからぬ結果をどのようにとり返したらいいのか、わからなかった。チームメイトには謝ったが、気持ちが治まらない。何かひそひそ言われているような気がして悩んだ。父に相談したら、お詫びの気持ちを手紙にして監督の先生へ届けなさいと言われた。

 翌日、言われたとおりに、お詫びの手紙を書いて先生に渡した。先生は怒るわけでも、説教するでもなく、いつものように照れたような笑い顔をしていた。

 このあと、私はメキメキ強くなって、格上の相手を次々と破り、県大会で準優勝して北信越大会まで進んだのである。

 今となれば、柔道の試合で負けたこと以上の辛く厳しい敗北を、人生や恋愛や仕事で何度も経験して、捲土重来という言葉の意味はいやというほどわかる。
 わかる、というより、この言葉を信じている。見ていなさい、次は取り戻すぞ、という強い励みである。
 
 この言葉のように人生に役立つ四字熟語だけを厳選して解説した書籍が出た。私もセミナー等でいろいろ教えて頂いている武沢信行先生の『使える!社長の四字熟語100選 経営に効く本!』である。初めて聞く四字熟語もたくさんあり、日々の経営に役立つ。ぜひ参考になさってください。


 参考文献:『使える!社長の四字熟語100選 経営に効く本! 』武沢信行 (こう書房)


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