若葉青葉のみぎり、みなさまいかがお過ごしですか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このコラムでは何度もご紹介しているドラッカーの「真摯さ」について再考します。(しつこくてすみません。)
ドラッカーは組織のマネジメントを担うものに欠くべからざる資質として「真摯さ」を挙げました。
マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。
『マネジメント[エッセンシャル版]』 p130
真摯さだけは、身につけておかなければならないのです。子供のころから教育をしておかないと、あとから加えることはできないのです。(こう考えると帝王学の意味があるわけです。)
真摯さを絶対視して、初めてマネジメントの真剣さが示される。それは人事に表れる。リーダーシップが発揮されるのは、真摯さによってである。範となるのも、真摯さによってである。真摯さは、取って付けるわけにはいかない。
『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 上田惇生(訳) p109
少し分かりずらいので、同じ部分を別の翻訳者の訳文で見てみましょう。こちらでは「真摯さ」が「高潔さ」と訳されています。
マネジメント層が自分たちの誠実さや真剣さを証明するには、最終的には、人間としての高潔さをどこまでも訴えつづけるほかない。これは、「人材」をめぐる判断に何よりも強く表れるはずである。というのも、リーダーシップは人柄を通して発揮される。模範を示し、追随を招くのもまた、人柄なのである。人柄は後天的に変えられるものではない。
『マネジメント 務め、責任、実践 Ⅲ』有賀裕子(訳) p206
「真摯さ」とは、人間性が高いこと、信頼できる人間であること、を示しているようですね。いくら仕事ができる人でも、信頼できないならばやがて人はついてこなくなるでしょう。
『経営者の条件』には次のような文章があります。
人間性と真摯さは、それ自体では何事もなしえない。しかしそれらがなければ、ほかのあらゆるものを破壊する。したがって、人間性と真摯さに関わる欠陥は、単に仕事上の能力や強みに対する制約であるにとどまらず、それ自体が人を失格にするという唯一の弱みである。
『経営者の条件』 p120
ドラッカーは、人間性と真摯さに関わる欠陥は、人として失格になる、とまで強調しています。
かつて企業では数字をあげればすべてのマイナスがかすんでしまうような風潮がありました。私も若かりし頃そんな場面を見たことがあります。
経営者としては数字に目がくらんで、ぶれてしまってはいけないところです。長期的な人間関係においては、必ずどこかでその人物の人間性が顔を出すでしょう。仕事の成果をみるときには、そのプロセスや人間性の成長を見なくてはなりません。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
『マネジメント 務め、責任、実践 Ⅲ』 P.F.ドラッカー(著) 有賀裕子(訳) (日経BP社)
『マネジメント [エッセンシャル版]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)

Hitoshi Yonezu at 10:00
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