自己目標管理とは

2015年05月01日

 春の日差しが心地よくなってまいりました。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、みなさまは「目標管理」というとどのようなイメージをもっておられるでしょうか。

 日本では「目標管理」という言葉だけが独り歩きしてしまったように感じます。会社で決められた予算を上司が部下に配分し、それを命令によって各個人が効率的に達成していく、というようなイメージではないですか。ノルマ主義と混同されており、あまりいい意味では使われていないようです。

 目標管理という言葉をつくったのはドラッカーだといわれています。ドラッカーの目標管理とは、「自己目標管理」(MBO:Management by Objectives and Self-control)でした。

 自己目標管理(MBO:Management by Objectives and Self-control)の最大の利点は、自らの仕事を自らマネジメントできるようになることにある。自己管理が強い動機づけをもたらす。適当にこなすのではなく、最善を尽くす願望を起こさせる。目標を上げさせ、視野を広げさせる。

          『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 p83より引用 


 自己目標管理の「自己」がどういうわけか取り去られ、目標管理に変わってしまいました。自己目標管理とは、組織が定めた目標のなかで各人が自分の担当する仕事に自由に目標を定め自分自身の責任において達成させることです。そもそもMBOという言葉も独り歩きしていますが、Management by Objectivesまでだけが取り上げられ、and Self-controlの部分が抜け落ちています。

 目標管理が上からの管理に使われてしまう恐れがあることをドラッカーは分かっていました。

 ここまで本書において、私は管理という言葉はあまり使っていない。評価という言葉を使ってきた。これは意図してのことだった。管理という言葉は誤解を生みやすい。管理という言葉は、自らと自らの仕事を方向づける能力を意味する。しかし、人を支配する能力も意味する。目標は前者の意味での管理の手段でなければならない。後者の意味での管理のためのものであってはならない。それではすべてが台無しである。
                                      
          『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 p84より引用


 すべてが台無しである・・・とまで言ってまで注意を促していましたが、結局のところ目標管理は「人を支配する」という意味で広まってしまいました。恐れていたことが実際に起こってしまったのです。

 自己目標管理の値打ちは、支配によるマネジメントの代わりに、自己管理によるマネジメントを可能にするところにある。

         『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 p84より引用


 現代においては、命令と統制だけで組織を維持するのは難しくなりました。軍隊にみられるC&C型(Comand &Control:命令と統制 )型組織はビジネスにおいては昔の話です。

 もはや命令だけで人は動きません。いま望まれる組織の形は、E&E(Empower & Energize:権限移譲)型組織です。この組織は、よりフラットな階層になり、上の立場にいる者はコミュニケーションによって部下の力を引き出します。命令ではなく権限委譲です。このような組織に必要な方法が自己目標管理です。

 部下を支配するために会社が目標管理を利用しようとしたことが、大きな誤解の元となりました。それはドラッカーの考えていた自己目標管理とはかけ離れたものでした。
 
 末筆となりますが、みなさまのご繁栄を心よりお祈り申し上げます。今月もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 いつもご利用ありがとうございます。

  


 参考文献:
 『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ささやタイムズ記事

お知らせ
Hitoshi Yonezu
P.F.ドラッカーを読む読書ブログです。
 
ささや
< 2025年05月 >
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8