余寒なお厳しいこの頃、みなさまいかがお過ごしでございましょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、仕事においては「管理する」という言葉をよく聞きます。「管理」とはいったい何のことでしょうか。分かっているようで分からない言葉です。
ドラッカーの『マネジメント』を繙いてみます。
仕事とはプロセスである。プロセスはすべて管理しなければならない。したがって、仕事を生産的なものとするには、仕事のプロセスに管理手段を組み込まなければならない。
『マネジメント(上)』p266より引用
ここで、仕事とは人の活動(労働)のことを意味するのではなく、あくまでも客観的な仕事の論理を意味します。労働を管理するのではなく「仕事のプロセスを管理する」というところが重要ですね。
あらゆる仕事がそれぞれ管理を必要とする。標準などはない。しかし、管理には共通の条件がある。
『マネジメント(上)』p266より引用
ドラッカーは、仕事の管理について三つの条件を示しています。ご紹介します。(以下は『マネジメント(上)』p267~269より引用)
(1) 第一に、仕事のプロセスを管理することは、仕事を管理するということであって働く人を管理することではない。管理とは、人の道具(ツール)であって人の主人となるべきものではない。しかも、それは働くことの妨げとなってはならない。
「部下を管理する」としたら、働く人を管理することになります。それは間違いであって、正しくは「仕事を管理」しなくてはならないのです。また、「管理」は道具ですから、人が人間らしく働くことを妨げるものであってはなりません。
(2)第二に、管理手段は予め設定しておかなければならない。基準と基準からの乖離の許容範囲を決めておく。管理とは本質的に例外管理である。基準からの乖離が大きな場合に限り、管理が作動するのでなければならない。
仕事のどの部分をどのような方法でみていくのか、手段や基準を決めておかねばなりません。あるべき状態の基準を決めたならそこから乖離している例外が浮き上がってきます。そこで個別に対応します。
(3)第三に、管理は、仕事の成果からのフィードバックによって行わなければならない。仕事自身が管理のための情報を提供するようにしておく。仕事そのものを常時チェックしていかなければならないというのでは、管理はできない。
仕事を常にチェックするのは経済的ではありません。また「検査」は管理ではありません。仕事の成果について必要な情報が常に送られてくるような仕組みをつくっておくことです。
以上の部分を読んでみると、ドラッカーの「仕事の管理」とは、一般的に「管理」とされている概念とは全く別のものだということが分かります。たとえば「先輩の背中を見て仕事を覚えなさい」というのは全く客観的ではありません。客観的でないものを管理しても成果はぶれてしまいます。
管理とは、働くこと(労働)と仕事を分けて、仕事についてプロセスを明確にし、そのプロセスを客観的、定期的に注視していくことだっだわけです。
まだまだ寒さが続きます。どうぞお身体ご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
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参考文献:
『マネジメント 課題、責任、実践(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)

Hitoshi Yonezu at 10:00
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