金融不安・・・債券価格と利子率

2008年10月11日

 先日、ある勉強会で国際金融を学んでいたとき、債券価格と利子率はなぜトレードオフの関係にあるのかという話になった。利子率が上昇すれば債券価格は下落し、利子率が下落すれば債券価格は上昇するという一般的な命題がある。これはなぜか?という問いである。
 私はすぐに大学のマクロ経済学の教科書を思い浮かべた。貨幣需要の章にこれを証明する計算式が出てきたよな、さて~?と思ったのだ。
 教科書で勉強していた学生時代は、社会での体験がなく、実際の経済を知らなかった。計算式は覚えたが、現実の経済と結びつけることができなかった。今は感覚的に債券価格と利子率の関係を理解できるが、勉強したはずの計算式はすっかり忘れてしまった。
 この問題を提起してくださった友人の某君は工学部の出身だったので「それはマクロ経済学の教科書で、基本として出ているところなんだよ」と偉そうなことを言ってしまったが、その証明を説明しようとした次の言葉が出なかった。そのときは先生が説明してくださったので、それで済んだのだが、我ながら情けなくなった。家に帰ったら教科書をもう一度開いて、この命題の証明を確かめてみようと思った。
 感覚的に理解するには、満期に満額で戻ってくる割引債を考えると分かりやすい。1年後に100円で戻ってくる割引債があるとして、いま約5%の利子率ならば割引債の購入価格は95円である。満期までに5円の利子がついて100円で戻ってくるからである。同じ理屈で約20%の利子率ならば、83円の価格で購入することが出来る。1年後に17円の利子がついて100円で満期となるからである。5%のときには95円で、20%のとき83円であるという規則性を考えるだけでも、利子率と債券価格が逆に動くということが何となく理解できる。
 さて、教科書を開くと、やはり明快な計算式が出ていた。ここでその式を展開してみたいのだが、分母も分数となる分数や、べき指数をワープロでどうやって表現するのかが分からない。仕方ないので言葉で説明してみよう。
 現在から将来にわたって毎年1円の利子の支払いが約束されている満期のない債券があるとして、その現在の価格をPとする。いま利子率をiとするならば1年後に受け取る利子1円の現在価値は1/(1+i)となる。同様に2年後は(1+i)の2乗分の1となる。3年後、4年後も同様に計算できるから、この割引債の現在価値はこれらの無限に約束されている利子を合計したものである。つまり初項が1/(1+i)、項比が1/(1+i)の無限等比級数の和となる。途中を省くが、無限等比級数の和の公式により展開すると、最終的にP=1/iとなるのである。この関係式によりPとiは逆に動くことがわかる。って、この説明では分かりずらい・・・参考文献をご覧ください。
 実例を挙げてみよう。昨日、10月10日の報道によると、このところの金融不安が債券の売却につながり、債券価格は下落している。長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りは一時、前日終値比0.11%高い1.580%まで上昇した。債券価格が下落したので、利回りは上昇したのである。株から国債に向かっていた資金が、国債も売って、より安全な現金に向かっているらしい。
 実はこの論理は株価や地価にも当てはまるのである。金利が上がると株価が下がるとか、地価が下落するとかいう、そのことである。
 論理は論理だが・・・アメリカの金融不安を発端とした世界の株式市場の大暴落は、今後何が起こることを予言しているのだろうか。
参考文献:『マクロ経済学』吉川洋(岩波書店)

 米津仁志 at 22:31  | Comments(0) | 経済

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