ドラッカーの『経営者の条件』の第7章「成果をあげる意思決定とは」を読み進めています。
前回の部分まで意思決定の方法について細かく説明してきました。
ところが、ここまできて、そもそも意思決定は必要なのかどうか?という問いが飛び出してきます。
最後に、意思決定は本当に必要かを自問する必要がある。何も決定しないという代替案が常に存在する。意思決定は外科手術である。システムに対する干渉でありショックのリスクを伴う。よい外科医が不要な手術を行わないように、不要な決定を行ってはならない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p205より引用
意思決定は外科手術であるというところが印象的です。
外科手術であるということは、意思決定をすると、システムや組織に何らかにひずみやゆがみが生じるのです。
楽観的というわけではなく、何もしなくても問題は起こらないという状況がある。何もしないと何が起こるかという問いに対して、「何も起こらない」が答えであるならば、手をつけてはならない。状況は気になるが切実ではなく、放っておいてもさしたる問題も起こりそうにないときには手をつけてはならない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p206より引用
この部分を初めて読んだときには「いい加減なことを書いているな~」と思いました。
実際、私の『経営者の条件』の206ページの欄外には「これでいいのか?」とのメモ書きが残っています。
何度も読んで感じてきたことは、ここでの話はあくまでも意思決定をしないということであって、丸投げにして放っておくこととは意味が違う、ということです。
初めて読んだときには、自分は何もしないでまかせっきりにするような印象をもってしまっていました。
何も起こっていない状態において、行き過ぎた意思決定を行うことは禍根を生むだけです。
トラブルを生む意思決定は見送ったほうがいいでしょう。
ただし、意思決定を見送ったときには、その後に注意深く見てあげていたり、指示を出したりすることは必要だと考えます。
最近は経営の成功事例においても「丸投げ」というキーワードを聞くことがありますが、単なる「丸投げ」ではないでしょう。いくつものチェックポイントを設けていると思います。
そのうえで、意思決定をするのか?しないのか?判断が求められるのです。

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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