前回の続きです。『経営者の条件』の第6章に紹介されている成果をあげる意思決定の5つのステップをご紹介しています。
(1) 問題の多くは原則についての決定を通してのみ解決できることを認識していた。
(2) 問題への答えが満たすべき必要条件を明確にした。
(3) 決定を受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい答えすなわち必要条件を満足させる答えを検討した。
(4) 決定に基づく行動を決定そのものの中に組み込んだ。
(5) 決定の適切さを検証するためにフィードバックを行った。
これらが、成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つのステップである。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p165より引用
五つ目の「決定に基づく行動を決定そのものの中に組み込んだ。」についてです。
最後に、決定の基礎となった仮定を現実に照らして継続的に検証していくために、決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。
決定を行うのは人である。人は間違いを犯す。最善を尽くしたとしても必ずしも最高の決定を行えるわけではない、最善の決定といえども間違っている可能性はある。そのうえ大きな成果をあげた決定もやがては陳腐化する。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p185-186より引用
このあといくつかの事例が紹介されています。
アメリカの軍隊については次のような記述があります。
それは軍がはるか昔から、命令なるものはそのまま実行されないことを知っており、実行を確認するためのフィードバックを組織化してきているからである。軍では決定を行った者が自分で出かけて確かめることが唯一の信頼できるフィードバックであることを知っている。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p188
フィードバックを組み込むという話から少しずれますが、実際に出かけて自分の目で確かめることが大切なフィードバックだということです。
続いてコンピュータの到来とフィードバックの話につながります。
コンピュータの到来とともに、このことはますます重要になる。決定を行う者が行動の現場から遠く隔てられるからである。自ら出かけ、自ら現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から逃避する。コンピュータが扱うことのできるものは抽象である。抽象化されたものが信頼できるのは、それが具体的な事実によって確認されたときだけである。それがなければ抽象は人を間違った方向へ導く。
自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、唯一ではなくとも最善の方法である。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p188-189
『経営者の条件』は1966年の著作ですから、コンピュータのことなど一般の人の頭にはまったくなかった頃のことです。コンピュータをなんでもかなえてくれる夢の機械と考えていた人がいたかもしれません。
いまでは誰もがコンピュータを使うようになりました。
コンピュータは便利なもので、分野によってはコンピュータなしでは仕事はできません。このようにブログで情報発信ができるようになったのもコンピュータのおかげです。
しかし、コンピュータはあくまでも一つの道具にすぎません。
最終的なフィードバックは自分が出かけて行って確かめてくることです。
そのことは世の中がいくら進歩しても変わりませんでした。
ドラッカーが50年前に見抜いていたことです。

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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