前回まで二回に渡ってヴェイルとスローンの意思決定をご紹介しました。
ドラッカーは、二人の意思決定の特徴について、次の5つにまとめています。経営者の条件』第6章より引用します。
(1) 問題の多くは原則についての決定を通してのみ解決できることを認識していた。
(2) 問題への答えが満たすべき必要条件を明確にした。
(3) 決定を受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい答えすなわち必要条件を満足させる答えを検討した。
(4) 決定に基づく行動を決定そのものの中に組み込んだ。
(5) 決定の適切さを検証するためにフィードバックを行った。
これらが、成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つのステップである。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p165より引用
原文では次のように表現されています。
1.The clear realization that the problem was generic and could only be solved through a decision which established a rule,a principle;
2.The definition of the specifications which the answer to the problem had to satisfy,that is,of the "boundary conditions";
3.The thinking through what is "right," that is,the solution which will fully satisfy the specifications before attention is given to compromises,adaptations, and concessions needed to make the decision acceptable;
4.The building into the decision of the action to carry it out;
5.The "feedback" which tests the validity and effectiveness of the decision against the actual course of events.
These are the elements of the effective decision process.
”The Effective Executive” p122-123
(2)で「必要条件」と翻訳されている部分は、原文では"boundary conditions"ですね。
"boundary conditions"は普通に訳せば「境界条件」で、必要条件とは違うものです。数学や物理学でよく使われる言葉です。
境界条件は私の能力では分かりやすく説明することはできません。以前、物理に詳しい方にお聞きしたところ、その条件をみたせば、いっきに変わってしまうような条件・・・・・・というようなご説明を頂いたように思います。
また、最後の一文は、訳では「ステップ」となっていますが、原文は"elements"です。しかも斜体です。"elements"には、要素という意味の他に、(学問の)原理や、(知識、技芸の)初歩という意味もあります。
「成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つのステップ」には、「成果をあげるための初歩(いろは)である」という意味がこめられているように感じました。
今日はこのあたりで失礼します。

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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