ドラッカーの『経営者の条件』第5章です。
前回は、劣後順位posteriorityの考え方についてご紹介いたしました。
劣後順位についてドラッカーの解説をみてみましょう。
劣後順位を決める際には、延期せねばならない仕事が出てきます。
延期とは断念を意味することを誰もが知っている。延期した計画を後日取り上げることほど好ましからざるものはない。後日取り上げてももはやタイミングは狂っている。タイミングはあらゆるものの成功にとって最も重要な要因である。五年前に懸命であったことを今日行っても不調と失敗を招くにすぎない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p149より引用
この文章の後にタイミングを外したせいで失敗したいくつかの事例が紹介されています。
延期は断念であるというこの事実が、何事であれ劣後順位を付けて延期することを尻込みさせる。最優先の仕事ではないことは知っていても、劣後順位を付けることはあまりに危険であると思ってしまう。捨てたものが競争相手に成功をもたらすかもしれない。政治家や官僚が重視しないことに決めた政策問題が、やがて最も激しく危険な政治問題に発展しないという保証はない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p150より引用
延期をしようとするものが「後で○○となるかもしれない」と考えだすと、想像がふくらんでしまって、決断ができなくなります。
それらはあくまでも妄想にすぎません。
劣後順位第一位を決定することは、楽しいことではない。誰かにとってはそれが優先順位第一位であるに違いないからである。優先事項を列挙し、そのすべてに少しずつ手をつけることによって弁解の余地をつくっておくほうがはるかに容易である。みなを満足させられる。もちろんこの方法の唯一の欠陥は、何事もされないという結果に終わることである。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p150より引用
原文では次のように表現されています。
Setting a posteriority is also unpleasant.Every posterioprity is somebody else's top priority.It is much easier to draw up a nice list of top priorities and then to hedge by trying to do "just a little bit" of everything else as well.This makes everybody happy.The only drawback is, of course, that nothing whatever gets done.
”The Effective Executive” p111
誰かにとっての劣後順位第一位は、誰かにとっての優先順位第一位かもしれません。
そうやって迷ってどれを後にするかを決められないでいると、すべてに少しずつ手をつけておく結果になります。
それこそが、とりあえず自分や周りをつくろっておくよい方法だからです。
しかし、それでは何事もなしえないことになります。
後に回すことには大きな決断が必要です。
ことをなすために、思い切って劣後順位を決めなくてはなりません。
drawback 欠点、不利益、障害 (リーダーズ英和辞典 第2版)

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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