ドラッカーの『経営者の条件』第5章より引用します。
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい。
だがあらゆる計画や活動を定期的に審査し、有用性が証明されないものは廃棄するようにするならば、最も頑強な官僚組織においてさえ創造性は驚くほど刺激されていく。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p146より引用
原文では次のように表現されています。
Systematic sloughing off of the old is the one and only way to force the new.There is no lack of ideas in any organization I know."Creativity" is not our problem. But few organizations ever get going on their own good ideas. Everybody is much too busy on the tasks of yesterday.Putting all programs and activities regularly on trial for their lives and getting rid of those that cannot prove their productivity work wonders in stimulating creativity even in the most hidebound bureaucracy.
”The Effective Executive” p108
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である・・・・・・
”Systematic sloughing off of the old is the one and only way to force the new"
「計画的な廃棄」は"Systematic sloughing off"です。
systematicという言葉で思い出したのは、この本の第1章に出てくる「体系的な作業」という言葉です。
頭のよい者がしばしばあきれるほど成果をあげられない。彼らは頭のよさがそのまま成果に結びつくわけではないことを知らない。頭のよさが成果に結びつくのは体系的な作業を通じてのみであることを知らない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p18より引用
systematicは一般的には「体系的な」と訳されますが「計画的な」「組織的な」「規則正しい」「系統的な」などの意味もあります。
「体系的な」の部分は原文では次のように表現されています。
They never have learned that insights become effectiveness only through hard systematic work.
”The Effective Executive” p1
ここではhard systematic workが「体系的な作業」と訳されています。
同じsystematicが「計画的な廃棄」と「体系的な作業」と使い分けられています。
計画的と体系的の違いは何でしょうか?
廃棄については、昨日から今日、古いものから新しいもの、という時間軸が入ったために、計画的と訳されたのだと思います。
「体系的に廃棄する」といいますと、全体のバランスを取りながら廃棄する、というイメージで、時間の経過もありませんし、廃棄に対する曖昧さが残ります。
「計画的に廃棄する」といいますと、計画したことは何が何でも廃棄しなくてはならないという厳しさが出てきます。
計画的廃棄という訳はslough offという言葉とよく合っているように感じます。
これらはあくまでも私の感想です。
計画的に廃棄していく・・・・・・"Systematic sloughing off of the old"・・・・・・
アイデアも創造力もあるのです。ないのは廃棄することだけ・・・・・・
現実の世界において廃棄は自分との厳しい戦いです。やってみましょう!
bureaucracy 官僚政治

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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