一つのことに集中する

2014年05月23日

 『経営者の条件』の5章は「最も重要なことに集中せよ」と翻訳されていますが、原書では"First Things First "です。

 直訳すれば「最も重要なことから始めよ」ですね。

 第5章の冒頭より引用します。

 成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。
 集中が必要なのは仕事の本質と人の本質による。いくつかの理由はすでに明らかである。貢献を行うための時間よりも、行わなければならない貢献のほうが多いからである。

          『経営者の条件』 p138より引用


 原書では次のように表現されています。
 
If there is any one "secret" of effectiveness, it is concentration.Effective executives do first things first and they do one things at a time.
The need to concentrate is grounded both in the nature of the executive job and in the nature of man.Several reasons for this should already be apparent: There are always more important contributions to be made than there is time available to make them.

”The Effective Executive” p98


 「秘訣」と訳されている言葉は、原書は"secret"と表現されています。すごい秘密のように思えます。

 その秘密とは「集中」"it is concentration"です。

 成果をあげる人は最も重要なことから始め、一度に一つのことしかしかしません。

 集中とは、なにに集中してもいいわけではなくて、もっとも重要なことに集中することです。

 集中が必要な理由として「仕事の本質」と「人の本質」 ”the nature of the executive job and in the nature of man"の二つが挙げられています。

 その具体的な内容についていくつか述べられています。

 一つ目は引用した部分です。貢献を行う時間よりも行わなければならない貢献のほうが多いからです。常に時間が不足しているので、すべてはできません。

 二つ目は、上方への貢献に焦点を合わせるからです。そのためによりまとまった時間が必要になります。集中するためのまとまった時間を手に入れるために、厳しい自己管理と決断が必要です。

 三つ目に、自分の強みを生かそうとするならば、その強みを重要な機会に集中した方がいいからです。人間には多様な能力がありますが、それらを分散させたのでは成果が上がりません。

 四つ目に、われわれはあまりにも多くの仕事に囲まれているが故に集中が必要です。一度に一つのことを行うほうが早く仕事ができます。
 
 成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを一つのことに集中する。最も重要なことを最初に行うべく集中する。

             『経営者の条件』 p141より引用


 集中せよと言っても、当たり前のことですが、他のことを何もしなくていいわけではありません。あくまでも大きな仕事の単位です。

 140ページには、ある製薬会社のCEOの事例が紹介されています。彼は11年の就任期間中に、国内でしか事業を行っていなかった企業を世界のリーディングカンパニーにまで成長させました。彼は、大きな仕事を一つずつ集中して、順に三つだけ行いました。

 いまエグゼクティブとして自分は何に集中しているのか?明確に答えられるでしょうか。

  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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